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2023.10.28

レビュー

自由な狐男子×視える女子高生が挑む変幻自在のタッグバトルファンタジー!!

狐の昇格試験、開幕!

代々続く稲荷神社の娘、安倍葛葉。ある朝、彼女はおじいさんのような話し方をする奇妙な少年に声を掛けられる。信太と名乗る少年は、葛葉の兄・水雲に今すぐ会いたいというが、そこに現れたのは……











(朝だけど)百鬼夜行! からの、モフモフとした狐!
水木しげる漫画を好み、映画『平成狸合戦ぽんぽこ』の百鬼夜行シーンこそアニメの最高到達地点だと思っている私など、「キター!」って感じです。この素晴らしい導入から、一気呵成(いっきかせい)に本作の設定が明かされます。

信太の正体は狐。神通力を上げるために昇格試験を受け、四階級ある最下級の「地狐」からひとつ上の「気狐」への昇格を望んでいる。昇格試験を受けるには人間の依代(よりしろ)が必要で、信太は強い力を持つ水雲を依代にしようとしていたのだが、葛葉の秘めた力を気に入り契約を結ぶことにする、……が、その契約方法というのが





狐! というか信太! 強引王子系です。

この地に数十年も封印されていた怪異が解き放たれて、昇格試験は始まる。その試験とは怪異を封印し直すこと。封印された怪異の力は金平糖に姿を変え、それを食べると神通力が増すほか、バトルで傷ついた体を回復してくれる。解き放たれた怪異は九千九百九十九。昇級の最低ラインは金平糖千個!
そして大切なことがもうひとつ。狐が昇級すると、依代はどんな願いでもひとつ叶えてもらえるのだ。





葛葉の持つ力とはなんなのか? それはまだ明らかにされていないが、その力は葛葉にとって重荷のようだ。そして彼女は、昇級試験に参加することを決意する。

信太、彼が最初に依代にするつもりだった葛葉の兄・水雲、昇格試験の試験監督役である天津先輩など、ゆるふわっとしたイケメンたちも魅力的だが、この漫画をなにより魅力的にしているのが主人公の葛葉だ。自己肯定感の低そうな、クラスでも目立たないタイプの高校1年生。普段はその設定より幼く見えるけれど、なにかしら決意するときはグッと大人っぽくなる。そのキャラの揺れ具合に、彼女自身が背負っているのであろう、重く苦しいものが透けて見える。

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少女から大人へ揺らぐわずかな時間のなかで、葛葉が昇格試験を通してどう成長するのか楽しみ!

味方か、ライバルか、現れる受験生

昇格試験を受けるのは、信太と葛葉だけではない。人に取り憑くのが得意な管狐(管高尾)は葛葉の友だち望月柏と、名門の狐一族の次期頭目・千家義長は幼馴染の栗林蓮と組み、昇級試験に参戦。ちなみに伝承上では、管狐は呪術や占術を使えるとされ、千家義長は京都の相国寺に伝わる宗旦狐がモデルかと思われる。宗旦狐は千家茶道の茶人・千宗旦に化けて茶を点てたという愛嬌のある狐だが、こちらの千家義長さんは掴みどころのない超クール系です!

--p95

それぞれがどうやって組むに至ったかは、これからのお楽しみだけど、信太と葛葉の男女ペアに、高尾と柏の女女、義長と蓮の男男と、全方位に隙のない設定になっています。なかでも高尾と柏の女性タッグは、艶やかでクールなバトルスタイルがカッコいい。伝奇物語と巫女風に変身するヒロインアクションの組み合わせの良さもあって、これは間違いなく人気が出そう! ダメ押しとばかり、高尾はライフルや二丁拳銃を使いこなしちゃうしね。



さらに信太、高尾、義長は葛葉と同じクラスに転入し、学園モノ要素をプラスオン(よくばり設定です!)。昼は高校生、怪異が現れる日暮れから夜明けまでは怪異とのバトル生活へ。
しかし彼らは、金平糖の数を競い合うライバル。さまざまな思惑が渦巻いている。


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狐の思惑と依代の事情。それらがバランスをとりながら、3組の受験者は結びついていくのか、それとも反目していくのか? 正直、どっちに転んでも面白いと思います!!!

そして今後の展開に、大きく関わってきそうなポイントが2つ。
信太は人と狐の間に生まれた半狐で神通力が弱く、高尾や義長に力で劣り、見下されがちであること。第1話の冒頭で、母親が信太に呪いをかけるシーンも描かれており、信太の本来の力がどれほどなのかは未知数。
もうひとつは、葛葉の一族に関わる「木の星」と、それを守り続けてきた「木龍」の存在。



受験生に配られる羅針鏡が導く先に木の星はあり、木龍を解放すれば大きな力を得られるという。すでにそのことを知り、葛葉たちの動きを妨害しようとする受験者もいて……と、このあたりの駆け引きは見逃せないです。
さらに怪異たちも、強さのレベルを上げてくるはず。そのなかで葛葉と信太のタッグがどんなバトルを見せるのか、期待度の高い一作です!

レビュアー

嶋津善之 イメージ
嶋津善之

関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。

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