がんばった1日の終わりくらい、ダメになりたい
「夜遅くに食べると太る」なんて誰が決めたんだ。でも事実なんだよなあ……ということで夜はなるべくガマンしてます。でもガマンは続かない。ダイエット関連のビジネスが消えないわけですよ。
『月読くんの禁断お夜食』のヒロイン“御神そよぎ”は27歳。職業はパーソナルジムのトレーナー。
クライアントの食事記録もチェックして食生活と運動の両面からサポートするのがそよぎの役目。23時のカップラーメン、たしかにダメですね。でも、昼間こんなことを言ってるそよぎには禁断のお楽しみがあるんです。
夜、ふらりと現れる彼は“月読くん”。左手の手提げに注目。スーパーの買い物袋です。そして……、
指輪をゆっくり丁寧に外(はず)す仕草がきれい。準備が整ったら、
そよぎの部屋の台所に立ってお料理スタート。まるで自分の家のように振る舞ってます。手際よく「揚げない唐揚げ」を作り、お手製の「秋みょうがのピクルス」を添えて……
おいしそう!
肌寒くなってきた秋にぴったりな献立。指先までぽかぽか。
食べ終わったあともこのとおり。「ダメになってください」なんて言いながらそよぎをズブズブに甘やかす月読くん。最高の彼氏? いいえ。そよぎは月読くんと「恋愛禁止」の約束を交わしたうえで、お夜食を作ってもらっているのです。
きっと明日もがんばれる
人気パーソナルトレーナーのそよぎは、昼と夜の顔がまるで違います。昼は「美しい体は正しい夜から」なんて言ってニッコリ微笑んでいるけれど……、
夜はくよくよ反省してばかり。全然正しくない夜を過ごしてる。ちょっとした言動を思い出しては心配したり、クライアントへの接し方に悩んだり。実際にそよぎのようなお悩みを抱えるパーソナルトレーナーはいるようです。厳しすぎるとクライアントは挫折して離れてしまうし、かといって甘すぎると結果が出なくて人気が出ない。レベル調整が難しい。こうして書き記した「反省ノート」は108冊目。書きすぎ!
夜になると死んじゃいそうな顔になるそよぎは、ある夜に月読くんと出会います。
心身ともに疲れ切って、おなかがペコペコのそよぎのために「うまいもの」を作ってくれるというのです。
そよぎのキッチンでじゃがいも剥(む)いてます。初訪問からこの馴染(なじ)みよう。でも、ポトフの材料なのにじゃがいもを小さく切ってる?
小さく切ると火の通りが早い。お夜食ですもんね、調理時間の短さも大事。バターをフライパンで温めて、小さく切った野菜とお肉を炒めていい香り。こうして出来上がったのがこちら。
北欧の家庭料理「ピッティパンナ」。名前がかわいい。
本作に登場したお夜食のレシピが巻末についています。私も作ってみました。
月読くん曰く「じゃがいもと玉ねぎとお肉が基本。あとは家にある野菜で」とのことだったので、夏っぽくズッキーニを入れました。作品の中でそよぎが「優しい味…おかあさん…」と表現したとおりの味。ほくほくでおいしかった! あと、写真ではフォークを用意してしまいましたが、スプーンのほうが食べやすいです(そよぎもそうしてます)。
魔法のような夜のパンケーキ
心細い夜にお腹と心があたたかく満ち足りると、心の中のわだかまりも少しほぐれます。
そよぎは仕事の悩みを月読くんに打ち明けるように。やがて、月読くんからの申し出により、2人は「お夜食を作る人」と「食べて感想をいう人」の契約を結びます。恋愛は禁止。
ときめきそうになるけど、恋愛はダメ。それにしても自宅で小豆(あずき)を炊(た)いて持ってきてくれる月読くん、すばらしいな……。本当に何者なんでしょう。
彼の正体が気になりつつも、パンケーキのいい香りで頭がいっぱいに。月読くんが「夜の魔法」と言って取り出したラム酒は小豆に注(そそ)がれて……。夜のパンケーキ、お夜食にしてはあまりに禁断の存在です。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。