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2025.09.11

レビュー

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7億円あったら何する? 宝くじ1等当選から始まるガールズコメディ!!『ドリーム☆ジャンボ☆ガール』

宝くじ1等7億円で東大受験が吹っ飛ぶ(わかる)

聞いたことないタイプの轟音がするようなガールズコメディだ。『ドリーム☆ジャンボ☆ガール』と、題名に「☆」が2つもついているので、きっとアホとカワイイがスパークしているのだろうなあと覚悟して読んでみたらすごかった! アホの隕石が定期的に降ってきて目がチカチカして底抜けにハッピーな気分になる。

東大受験を控える親友“千恵”のために、ちょっとおバカな“叶”が有り金はたいて買った宝くじ100枚が全ての始まりだった。
将来が不安で鬼のように勉強する千恵をハッピーにする方法は「お金」! というわけだ。叶も受験生のハズなのだが勉強そっちのけでバイトをして買ってくれたらしい。アホだが愛を感じる。本作は叶のだいたいの言動に「☆」をつけるとしっくりくる。

で、1等が当たってしまうのだ。しかも前後賞もゲットして総額7億円。「7億円は千恵ちゃんのものだよ! やったね」と全額あげる気まんまんの叶と、そんなの受け取れない千恵。どうにか2人で仲良く半分こすることで決着がついたものの、半分になっても3億5000万円。すさまじいあぶく銭である。人生が煮崩れるのに十分な金額といえる。
受験勉強の追い込みなんてできるわけもなく、千恵の頭に浮かぶのは「受験がダメでも3億5000万円は入ってくる」「(賞金の)振込はまだか」なんてことばかり。

そして振り込まれたら振り込まれたで、今度はこの資産をどう守るかで胸の鼓動が高まりまくる。
千恵は受験勉強そっちのけでマネー知識を叩き込み、手元の資金を現金・株式・債券・金などに分散させる。これで安心……と思いきや今度は株価の値動きが気になって生きた心地がしない! 本作はマネーコメディとしても楽しめる。

ということで、宝くじの神は千恵に微笑んだが受験の神は失笑すらしてくれず、彼女の東大受験は派手に爆散する。腰が抜けるような散りっぷりだった。

そして叶の受験はもっとひどい。
10日で1億円以上使っちゃったら共通テストなんて受け忘れるかもね。

世の中には高額なものが驚くほど沢山あるんだよね

叶は1億円を10日間でどうやって使ったのか。
伊勢丹新宿店の4階や5階で売っていそうなジュエリー&高級腕時計。なお、ヒロユキ先生のファンならばおそらくご存じのはずだが、ヒロユキ先生は高級腕時計に造詣の深いお方だ(時計への愛あるコメントを読むと私も伊勢丹に行きたくなる)。叶の豪快なお買い物に謎の覇気とリアリティがあるのは、ヒロユキ先生が描くマンガだからこそ、というような気もする。そして当然だが叶のギラギラショッピングは2話以降も続く。

そんな叶を見た千恵は……?
なんとなく受験の失敗から立ち直ってしまう。ちなみに叶が1億5000万円使っている間に、千恵は株の短期取引で5000万円もうけている。強い! だから2人で6億円ある!
ヤケクソと札束が合体したポジティブ&ジャンボな18歳コンビがこうして誕生。6億円で人生を煮崩してたまるかという気概も感じられてすがすがしい。
「あの子、受験に失敗したんだってね~」なんてクスクス笑う同級生をスポーツカーのエンジン音でぶっ飛ばす千恵と、制服なんて着てられっかよと言わんばかりに制服を脱ぎ捨て助手席に飛び乗る叶。ハッピーだ。

ということで、お金が一気に増えたり一気に減ったりで大変忙しいが、どこまでいっても幸福なコメディだ。
いいコンビなんだよなあ……。千恵の思いやりと努力、そして叶のアホさと圧倒的強運が効いている。たぶん2人でいたらずっと楽しいはず。

やがて2人はタワマンに引っ越し(叶が即決で買った)、こんな強烈な「お買い物」もする。
“宮守芽依”は、とある事情により千恵と叶のタワマンに住み込むメイドさんになる。そのお値段1億円! おそらくこれは正しいお買い物なんじゃないかなあと思う。だってかわいいし!

巻末に「1巻における主な入出金結果」がある。ぜひ読んでほしい。まず叶の腕時計の金額にクスッとなり、千恵の収支にもなんだか胸が熱くなる。

レビュアー

花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。

X(旧twitter):@LidoHanamori

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