高偏差値3人組がダンスに目覚める?
「自分には合わない」は、人生の敵。
さっさとなんでもやりゃいいんだよ。
『かいせいとポップコーン』の主人公・野村海成は、「塾は面白い問題が解けて楽しい」という勉強好き。全国模試1位で、超難関中学の首席。でも人づきあいが下手。人づきあいが嫌いなわけじゃないから、友だちはほしい!



ビルの鏡面ガラスを前に踊るダンサー。
その躍動に見惚れる海成。
それまでの4コママンガ展開から一転、肉体が縦横無尽にページ上で弾ける。
「きみもダンスしに来たんでしょ?」
「僕、学校の体育でも一番下手です。センスないです」
「センスがあるかとかは、ある程度やった奴の話じゃない?」

「ダンス、好きそうな顔してたじゃん。自分がやりたいようにやんな」
Don't think, feel!
しかし、海成は「考える」こと一本槍で生きてきたのだ。手を振り回すことと、ダンスの境界線が分からない。「もっと根本的に全部が足りない」と思った彼は、ストリートダンスの種類を検索する。ブレイキン、ロッキン、ポッピン、ニュージャックスウィング、ソウル、ハウス、ビバップ、ワッキング、ヴォーグ……、そしてヒップホップ。何が何やら理解できない。もし海成の隣にいたら「これ読め!」って、『ワンダンス』のコミックを貸してやるのに!
ここから海成は本を読み漁り、ヒップホップ文化を体系的に理解しようとする。それこその始祖クール・ハークから!



こうやって3人は、ヒップホップについて理解を深めていくのだが、一向に踊り始めない。コミックの帯にあるとおり「踊る前にまず議論」なのだ。ダンスの初歩の初歩「ボックスステップ」にちょこーっとだけ挑戦するのだが、そのステップさえ踏めない。にもかかわらず3人はアウェイの極北、プロダンスリーグ“Dリーグ”を観戦しに行き、そこで彼らは吹き飛ばされる。


海成の頭に、そう刻まれたに違いない。ダンスに覚醒?
いや、まだダンスを始めない(←しつこい)。まずは「人がいなくて」「鏡面があって」「踊れる」練習場所となるビルを探し始めるのだ。ちょうどいい感じの場所を見つけたところ、アディダスの3本線ジャージを着た怪しげなおじさんが登場。あざぶがローファーを履いているの見て「MJ*リスペクトのポッパーか?」(*MJ=マイケル・ジャクソン)というハイブロウな質問をする。3人はポカーン。おじさんから日本のダンス史をいろいろ聞きながら、いつものように3人が議論ムーブをしようとしたところ……、おじさんが
御託(ごたく)は いんだよ
さっさと踊れ!
「自分には似合わない」なんて思わずに、「自分がやりたいようにやんな」と言われて、すっごく遠回りをしながら、ちょこっとずつダンスに近づいていく3人が、とにかく愛おしい。すぐに「考え」てしまう彼らが、音楽のグルーヴやオーディエンスの熱を「感じ」て踊る日はくるのか? そんな日が来てほしいような、来てほしくないような……。でも、パリ五輪のブレイキンでAyumiが「雑巾」ムーブで喝采を浴びたように、3人が「べんきょう」ムーブで喝采を浴びるところを見てみたいなぁ。