転生先は、生前やりこんだゲームの悪役貴族!!　外れスキルを駆使して最強を目指す！

ゲームの中で、忘れられない散り方をする悪役に出会うと「グッバイ……」と見送りつつ、ちょっとだけ「コイツがしぶとく生き残るルートって、あるのかな」と思ったりする。

ちなみに味方のキャラクターが死んでしまうと「悲しい！」と「アナタが装備していたアイテム、全部返してね……」の両方でグチャグチャになり、とても心が忙しい。

『ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた』は題名がそのままストーリーが約束されているのだが、「ゲーム中盤で必ず死ぬ」ことを主人公が知っているのはなぜか。

主人公は、前世でこのゲームをやりこんでいたのだ。

ゲーム『剣と魔法のシンフォニア』は名作恋愛アクションRPGとのことで、つまり主人公は色んなキャラクターとの恋愛を攻略しまくったのだろう。で、この悪役貴族“レスト・アルビオン”がどのルートでも必ず死んでしまい、ゲームのエンディングに出してもらえないことを知っている。彼は「どうせ転生するならゲームの主人公にしてくれよ」と思っただろうか。

最初はショックだったかもしれない。でもここは勝手知ったるゲームの世界。

ニヤっと笑う顔が既に悪役っぽいが、考えていることは非常に建設的でまっとう。死亡フラグを回避するルートはない。ならばフラグを折ればいいだけなのだ。

悪役貴族・レストは、このゲームの世界の習わしである「神託の儀」で、あるスキルを授かった。14歳になると女神がスキルをひとつ与えてくれるらしく、その後の人生（ゲーム進行）に大きく関わる。

レストが授けられたスキルは……？

父親はショックで青ざめ、腹違いの兄からもバカにされるクソスキル「テイム」だった。テイムは、家畜や小動物を操れる牧歌的なスキルのようで、確かに悪役貴族の稼業には似合わなさそう。で、この日からお父様はレストを排除するように。ちょっとは慰めてやればいいのに容赦なし。さすが悪役貴族の家だ。

でもレストのテイムは普通のスキルではなかった。

鳩ぽっぽどころか魔物まで操れるのだという。なんだ大当たりスキルじゃん！　……と思うかもしれないが、その強さが原因でレストは魔王軍に殺されることに。

だったら魔王軍にも倒されないくらい最強になってしまえば、死なずに済むのでは？というわけだ。ではどうやって最強になるかというと、泥臭い努力のみ。

ゲームの仕組みを把握して、さらに画面越しに見てきたゲームと今の世界との違いもうまく使って、レストはめちゃくちゃ頑張る。

本作は、外れスキルを抱えるレストの努力がちゃんと報われる物語だ。そこがゲーム的ともいえるし、ゲームの世界を超えていくともいえる。

剣術指導の“エルナさん”に特別に稽古をつけてもらえるようになったのも、レストの努力のおかげ。

というのも、いくら魔物も操れるといったって、テイムは非戦闘スキルであり、戦うことを想定していないから、エルナさんも最初はレストを相手にしてくれない。同じ土俵にすら立たせてもらえない。でもレストは強くならないといけない。

運命と世界そのものを相手に戦っているのだから、最強になるしかない。やがて、剣のスキルを持っているのにたいして努力もしないアホの兄貴たちに、外れスキルだけどめちゃくちゃ努力するレストは追いついていく。

順調に成長するレスト。ゲームの「物語」が始まるまでまだ時間がある……ハズだったのに、シナリオはヘビーユーザーの彼すら知らない方向に急展開。

メインヒロインのシャルロット姫なんてまだ登場するハズじゃないのに!?　しかも悪役貴族に立ちはだかる強～い姫で、レストから見れば彼女は恋のターゲットではなく因縁の相手。

そして「テイム」の能力もそのうち発揮させたいなあなんて思っていたら、初陣はまさかの魔物で……？

勝率は心もとないがヘビーユーザーの意地を見せてほしい。ところで、なぜレストのスキルだけ特別なのだろう。作中に登場するレストの家系図にも気になるところがいっぱい。おそらくプレイヤーに開示されていない「設定」がたくさん待っているはず。深掘りしがいのある異世界転生ものだ。