こんなキラッキラの目で甲子園の夢を語られたら、なにがなんでも応援しちゃうよなあ。
「100年に1人の天才」なんて噂されるくらいの圧倒的野球センスの持ち主“狸田先輩”と、彼を応援する野球部マネージャーの“菜花(なのか)”。2人が協力しあって甲子園を目指す話なのだけど、こえなきゃいけない壁がたくさんある!
『狸田先輩の青春になりたい』は少女マンガですが、ジャンルを飛び越えていろんな人に好かれそう。特に狸好きにはぜひ読んでいただきたい。野球好きにもね。
菜花は、高校野球のテレビ中継で狸田先輩に心を射貫かれた女の子。
ピッチャーとして試合を制した狸田先輩の雄姿に涙を流し、「好き……」となり、そのまま狸田先輩と同じ高校に進学。もちろん野球部のマネージャーになりました。
狸田先輩は野球の天才にして端正なルックスの持ち主。おまけにめちゃくちゃストイックで、可愛い女の子から好き好きと言われても一切なびかない硬派な高校球児。菜花はマネージャーとして必死に頑張っていますが、あわよくば付き合いたい! だって「好き……」ですもん。まあ、そんなチャンスはなさそう……。でも菜花は狸田先輩の「絶対に見てはいけない秘密」を知ってしまいます。
実は狸田先輩は人間に化けた「たぬき」だったのです。たぬきが狸田って名乗ってたのか……バレないものなんですね。
野球が大好きすぎて人間に化けて野球部員になった狸田先輩は、菜花に「せめて今年の夏が終わるまでは、このことを黙っていて」と懇願します。今年の夏、つまり甲子園ですね。
恋心も抱きつつ必死に半年間応援してきた相手が実はたぬきだったと知った菜花は大ショック! 野球部どころか球界がたぬきに化かされようとしている! そして人間はたぬきに恋なんてできない……ってことで、予想もしない形で失恋も経験します。昨今よくいわれる「カエル化現象」の一種でしょうか。カエルよりもだいぶフカフカですが。
でもこのたぬき、すんごく真剣なんです。
むかしから野球が大好きだったけど、バッターやキャッチャーをやってくれるたぬきなんていないし、子どもの頃は変化も上手にできなくて一人ぼっちで野球を練習。
横顔は高校球児そのまま。クールでなんでもできちゃいそうな天才肌の狸田先輩は、実はピュアで情熱的な野球バカでした。「たぬきである」という超特大の新事実以外にも、菜花が今まで知らなかった顔がたくさん。
しかも狸田先輩は意外と失敗することがわかってきます。しかも割と大きめの失敗。
人間に変化するために必要なネックレスを電車の中で落としちゃったり。試合出場は絶望的?
菜花は野球部のマネージャーですし、弱気な狸田先輩を見過ごせません。で、たぬき(狸田先輩)を小脇に抱えて駅までダッシュ! 奇跡を信じて最後まであきらない菜花と、そんな菜花に抱っこされた狸田先輩は無事ネックレスを見つけて……、
試合に間に合いました。めちゃくちゃ青春。やっぱり狸田先輩かっこいいよなあ……。
狸田先輩のかっこよさについては実際に手に取ってたっぷり読んでいただくとして、たぬきと菜花の様子をもうちょっと紹介します。
最初は「何もしなくていい」なんて硬派にキメていた狸田先輩ですが、少しずつ菜花のお世話を受け入れるように。たぬきをお風呂で洗っているだけなのに、菜花の頭にはどうしても変化した姿が浮かんでしまう。
たぬき1匹と女子高生なら、シングルベッドも余裕。やーかわいい。たぬきの先輩も人間の狸田先輩もどっちもキュートなマンガです。甲子園球場のマウンドに立つ狸田先輩が目に浮かぶし、どろんこになったたぬきも想像してしまう。いずれにせよ応援してます!
レビュアー
花森リド
ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。
X(旧twitter):@LidoHanamori