我が子が愛犬とおしゃべりできると言ったら、信じますか?
我が子が「愛犬と身体が入れ替わった」と言い出したら、あなたは信じるでしょうか?
『エメとヒメ』は、陽芽(ヒメ)と愛犬エメが身体を入れ替えて生活する不思議な13日間を描いた物語です。著者は『きみはペット』『銀盤騎士』で知られる小川彌生先生。2024年12月13日に発売された本作は、全ての犬好きに捧ぐ、感涙必至の温かく愛おしい1巻完結の短編コミックです。
主人公の陽芽と愛犬エメは、生まれたときからずっと一緒に過ごしてきた「姉妹」のような存在です。彼女たちには他人には言えない秘密があります。それは、エメと陽芽が「お喋り」できること。両親は信じていませんが、「二人」にとってはごく自然な日常でした。
そんなある日、散歩中の陽芽とエメは交通事故に巻き込まれます。意識を失った陽芽が目を覚ますと、目の前には自分の身体をしたエメが立っていて──!?
お互いの身体が入れ替わったことに気づいた二人は、元に戻る方法を探しながら、周囲にバレないよう取り繕いながらの日々を送ることになります。
犬の身体になり戸惑う陽芽と、人間の身体を満喫するエメの対比が見どころです。
陽芽は、両親からの強い干渉に少しうんざりしながらもエメに愚痴をこぼします。
するとエメは、「ヒトを癒やすのもイヌの大事な仕事だからね!」と軽やかに返答。この一言は、愛犬家にとって思わずドキッとする場面です。愛犬が日々自分にどれほど寄り添ってくれているかを感じ、顔を覗き込んで感謝したくなるでしょう。
一方で、人間の身体を得たエメは「これずっと食べたかった!」と誕生日ケーキを嬉しそうに頬張る姿が印象的です。
しかし、相手のお尻の匂いを嗅いでしまうなど犬らしさが抜けない行動には、思わず微笑んでしまう場面もあります。
また、14歳のエメにとって、14歳のヒトの身体は軽やかで快適そのもの。元に戻る方法を模索しているものの、エメが本当に元に戻りたいと思っているのか――陽芽は次第に不安を感じます。そんな彼女の葛藤を通じて、私たちもまた人間の身勝手さに気づかされ、愛犬との日々を見直すきっかけを得るでしょう。
物語は、いとこのダイ兄ちゃん、陽芽の同級生であるミツコちゃんを交えて進んでいきます。一体なぜ「二人」は入れ替わってしまったのか。その理由が明らかになった時、涙を拭わずにはいられませんでした。
どんなに長く一緒にいたいと願っても、犬の寿命は人間よりも短い。けれど、その限られた時間の中でどれほどの幸せを共有できるか――この物語はその大切さを教えてくれます。エメと陽芽の13日間の冒険は、全ての読者に「悔いのない毎日を愛犬と過ごしたい」と心に刻ませる、感動的な作品です。
レビュアー
Micha
ライター。フリーランスで働く一児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!
X(旧Twitter):@Micha_manga
Instagram:@manga_sommelier