もし今、愛おしさを欲していたら、ぜひこちらの漫画を。
全ページ、全部、ペンギンがかわいい。ひたすらかわいい。
読み終わるころには「なぜウチにはペンギンがいないのだろう?」と悲しくなります。家の中でペンギンを探したくなります。それくらいかわいいペンギンと、ちょっと天然な飼い主のゆるやかな日々の物語です。
主人公・早川くんは天然KY系な大学生男子。アパートでペンギンと一緒に住んでいます。ペンギン。小さくまるっこいフォルムの詳細不明のペンギンです。家事が得意で、料理上手で、無口で優しいペンギン。
ペンギンは早川くんが学校へ行っている間に、家のことをします。掃除・洗濯・布団干しと家をピカピカにするのが得意です。家が綺麗になると幸せになるようです。
ペンギンは言葉を発さないので、コマだけで見せるその姿がとにかくかわいい。洗濯機に乗って脱水中のブルブルを楽しむなど、好奇心やお茶目さもあります。ペンギンが家の中でひとりで過ごす描写は短編映画を観ているかのようです。読者は透明人間になってペンギンの様子をこっそり覗いているような面白さ。
家にもペンギンがいたらいいのにとか、一緒に家事がしたいとか思えてきます。健気なかわいらしさ溢れるペンギンに読者はメロメロになるはず。
■いつも「ニコッ」をくれる、心をほぐす作品
本編ではペンギンの飼い主・早川くん以外にも、ちょっとヤンチャで元気な太田くんと優しくて気が利く瀬戸くん。2人の友人も登場します。
太田くんも瀬戸くんもペンギンが大好き。
ペンギンは料理上手なので、漫画の中でご飯の作り方を紹介しています。太田くんとお好み焼きを作る回で、ペンギンはお好み焼きアレンジとして「クリームチーズ」と「ペパロニ」を足します。これがすごく美味しそうで、自分でも作りたくなりました。焼いたらカリッとクリーミーになるのではと思います。
他にもたくさん料理が紹介されています。中でももうひとつのお気に入りは鶏の丸焼きです。クリスマスのお話で、ペンギンは3人のためにご飯を作ろうと奮闘します。生の鶏肉を買ってきて調理しようとするんですが、ペンギンって鳥だよなぁという目で見ると最高にシュールな絵。
鶏のお腹にチャーハンを詰めて焼くなど小技も。ペンギンはやっぱり料理上手です。
全編を通じて、特別なことやドラマチックなことはほとんど起きません。ちょっと面白い日常の延長線にある面白い日々が続きます。喋らないのに、言葉以上に伝わってくるペンギンの優しさや愛情。ペンギンの眼差しにくすっと笑顔になります。主人公・早川くんが少々天然でKYですが、そのうち彼も成長していくのかなぁと、1巻を読みながら未来を思いました。
ペンギンがゆっくり成長したり、早川くんの関係が少しずつ変化したり。でも、そのすべての変化も日常が流れていくように、ゆるくふんわり進んでいくといいなと思いました。ほっこりのんびり健気なペンギンのかわいさを覗いてほしい素敵な漫画です。ちょっと疲れているときに、優しい時間を。
レビュアー
AYANO USAMURA
Illustrator / Art Director
1980年東京生まれ、北海道育ち。
日常を描くイラストが得意。好きな画材は万年筆。ドイツの筆記具メーカー LAMY の公認イラストレーター。
著書『万年筆ですぐ描ける!シンプルスケッチ』は英語翻訳されアメリカでも販売中。
趣味は文具作りとゲームと読書。
https://twitter.com/ayanousamura