「命は助けなきゃ」
この4人の大人たちから目が離せないのだ。彼らは隙があって隙がない。
『バッドベイビーは泣かない』は、いろんな命が寄せては引いてを繰り返し、次第に人間の感情のやわらかくてみっともない部分を少しずつ洗っていくサスペンスラブコメディだ。そう、サスペンスもラブもコメディも等しく渦巻いている。
「やっぱり神聖なものじゃないですか母子って」
ところでかすみは軽率で愚かなのか。かすみがカフェのトイレで尿のしみた妊娠検査薬をゴミ箱に捨てながら神に感謝したのはなぜ?
いくつかひもといてみよう。まず、望まない妊娠はかすみの価値観に合わなかった。かすみは、“最後まで正しい男”と間違いのない関係を築き、最後まで突き進みたい。ある意味、世界を疑わない子犬のような人だ。
そして「やっぱり神聖なものじゃないですか母子って」と言われたってなあ……と遠い目をする“佐津川和歌”も見逃せない。かすみが言葉を投げた先が、もしもSNSだったら大騒ぎになっただろうが、2人は生身の人間同士、あけすけなバトルなど始まらない。和歌は、自分の心のザワつきや、ポロッと言ってしまいそうなことを飲み込んで、かすみのグダグダに付き合う。
地味なアベンジャーズの一員である和歌は、今は新宿のこぎれいなマンションで小型犬と暮らしている。新宿のあんまり汚くなさそうなエリアという立地も、テレビから流れる連続不審火のニュースも、全部あとになって意味を持ちそう。
小さな疑いと、言わずにしまっておく感情と、話す義理もない秘密が、全部かすかなサインとなって『バッドベイビーは泣かない』は想像もしない方向へ転がっていく。
7年前10歳だったあの子
ところで大人同士の再会は「背が伸びたなあ」だとか「進学先はどこ?」のような、目に見えてわかる特徴がとても薄い。そして前途洋々さがどんどん減っていく。でも、いろいろあるのだ。
たとえば地味なアベンジャーズの1人“木目田天(天と書いてタカシと読む)”は7年の間に結婚と離婚を経験した。離婚の原因は不妊だという。ここでも命が出てくる。
木目田は7年前の出来事にとてもこだわっている。彼もまた、かすみとは別の意味で偏執的な男だ。
もしかして、とっさに手を伸ばして自分を危険にさらしてでも助けたい人がいることは、実は助ける側の命をこそ、守っているのでは。そんなことを考えながら知りたがりの私は2巻を待っている。








