猫は働く、大好きな人間のかわりに
吉沢がある日ふらりと姿を消した。なので吉沢にお世話されていた猫が失踪した彼に代わって働いている。吉沢の代わりの猫だから、会社での呼び名はそのまま「吉沢猫」だ。
そんなのやっぱりかわいそう? いやいや、案外なんとかなっている様子。堂々たるその働きぶりは、例えるならまるで中堅社員。
猫が働く理由は、大好きな吉沢にお願いされたから。
細身で「ニャンコ」と呼ばれ愛でられていた猫は、いまやふくよかボディの立派な勤労猫に。二足歩行で闊歩(かっぽ)し、無茶振りしてくるクライアントやネコハラ上司に負けず、今日も働く。
待ち焦(こ)がれた給料日のマストタスクは残高照会だ。
引き出されているのは10万円だけで、家賃や生活費は残されているあたり、お金をおろしているのはやっぱり吉沢に違いない。連絡がなくても、吉沢がどこかで元気にやっているとわかる給料日は、猫にとっても特別な日だ。
しっかりしている吉沢猫の、こういう面を見るとやっぱり胸がいじらしさにギュッとなる。ああ吉沢、早く帰ってきてあげて!
どう見ても猫だけど
吉沢の会社の人々はもちろん、読者も疑問に思うに違いない。しかし、
どう見ても猫だけど、どういうわけか仕事はちゃんとできている。
そんな吉沢猫を優しく見守るのが“課長”をはじめとする会社の人たち。
こうしてワクチンの時期を気にかけてくれたり、
マタタビ(持ち込みだけど、お店も許可してくれている)で酔いつぶれた吉沢猫をおぶって送ってくれる課長のやさしさもいい。
謎は深まるばかり
いつ吉沢が帰ってきてもいいように、家をキレイに保つ吉沢猫。本当にけなげだ。
吉沢の残した「ニャンコと俺の約束」、こうしてみると猫にはかなりハードルが高いというのに……。
まだまだ吉沢猫の日々を見たいから、吉沢の帰りはすぐじゃなくてもいい。でもやっぱり、いつかは帰ってきてあげてほしい。







