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2024.10.03

レビュー

ポジティブむきむきトレーナー×自意識過剰イケメンモデルの筋肉ラブコメ!!

自分のことが好きです

描かれる人みんなを「なんだかいいなあ」と思わせる作品だけがもつ、特別な魅力があると思う。ピカピカな主人公だけじゃなくて、ちょっとイヤな人も、なんだか底が知れない人も、切り捨てて遠くへ押し流してしまわないで、いつかどこかで必ず見つけ出して、ちゃんとすくい上げるんじゃないかという気がする。『たくましさんは毎日最強』からはそんな予感がする。



1巻を最後まで読んだあとでこの場面を読み返すと「すごいなあ」と改めて思うのだ。

主人公の“逞増さん(たくましさん)”は筋骨隆々な女性。



抜きん出てたくましい。持って生まれた体格の良さを、筋力トレーニングによってさらに強化している。そしてお勤め先はトレーニングジム。



人気のトレーナーだ。体に恵まれ、人柄もよく、ジムでも大人気。そんなたくましさんにも弱点がある。



男性が極度に苦手なのだ。だから恋愛は未経験。とはいえ男性がきらいなわけじゃないし、恋に憧れたりもする。そしてごくわずかだけど、言葉を交わせる男性もいる。

例えばジムの社長(筋トレが好きすぎるバツイチ)。


うん、エレガントだ。つまり、よく見かけるメジャーなタイプの男性が苦手なよう。そしてもう1人、たくましさんが平気な男性がこちら。



モデルの“永原仁”。永原さんは、たくましさんに担当トレーナーになってもらいたいらしい。セレブって個室の超高級ジムに行くものだと思ってたよ! まあ、これにはいろいろあるんです。そして最初はたくましさんも「男はちょっと……」と戸惑っていたけれど?



トレーナー魂に火がついて永原さんを受け持つことに。なんだか普通に男性とやりとりできてない!? マンツーマンの指導を続けるうちに、たくましさんと永原さんはいろんな話をするように(これはパーソナルトレーニングあるあるです。ある程度の信頼関係がないと1対1のトレーニングは、まずうまくいきません)。

たくましさんが「子供の頃から女性にはモテるが、男性からは全く」であったり「恋愛に憧れはあるが、男性を前にすると緊張すること」などを話すと……?


なぜかデートをすることに。永原さんには何か裏がありそう。

そしてデート当日。

ヘアバンドがかわいい。緊張して眠れなかったたくましさん。そして永原さんも、実は眠れないまま朝を迎えていた。



一晩中、ひたすら自分の名前をSNSで検索しては心ないコメントを目で追っていたのだ。いかにもモデルらしい華やかな姿は、必死にメイクでカバーして作り上げたもの。



マネージャーから止められてもエゴサーチがやめられない。だから、たくましさんのこんな昔話は、永原さんの何かを激しく刺す。



中学時代の失恋話。幼稚な男の子のバカで無礼な言葉は、たくましさんの男性恐怖症の引き金をひいていた。



恋愛経験豊富で、容姿端麗なモデルで、自分の人気がいつまで続くかずっと怖くて、エゴサーチがやめられない永原さんは、たくましさんの「痛み」に反応してしまう。

そしてたくましさんの朗らかな笑顔だとか、昔話としてその痛みを自分に話してしまうところが永原さんには不思議でたまらない。自分は夜も眠れないくらいカリカリ悩んでいるのに、たくましさんはなぜ大丈夫なの?



たくましさんは体格に恵まれているけれど、人にも恵まれて続けている最強の人なのだろう。お日様のようだ。



これは永原さんが今一番自分に言いたい言葉なのかも。

「おしゃれ」は残酷

最初は「とある理由」でたくましさんのジムに入会していた永原さんだが、そんな理由はどこかへ吹っ飛んでしまい、ジムに相変わらず通い続けている。

そしてもはやネタバレでもなんでもないと思うので書いてしまうが、永原さんはたくましさんに恋をする。そりゃ好きになるよ。

永原さんは、たくましさんのいろんな姿を知りながら、自分のことも知っていく。知ることこそが恋の醍醐味だと思う(実るかどうかはさておき)。

例えばこのファッションの話もとてもよかった。



たくましさんは少女の頃からずっとガーリーな装いが大好き。ガーリー以外の「おしゃれ」も試してみない? 実はこのとき永原さんはファッションについて悩んでいたのだ。

こうして2人はショッピングに出かけるが……?



この日もたくましさんはガーリー全開。でも店員さんは、たくましさんが選んだことのない服を強くおすすめする。それは昨今いわれている「骨格診断」に基づいたものだった。



私も筋トレが大好きかつ砂時計型なので、自分でいうのもなんだがこういうワンピースがめちゃくちゃ似合う。そう、「似合うもの」と「好きなもの」って違うんだよ……。SNSでさんざん言われている骨格診断の功罪は大きいと思う。そしてファッションにまつわる仕事をしている永原さんの感想が刺さる。

ところが、だ。


やっぱりたくましさんは最強。この言葉はその場にいるみんなの心を大きく動かしていく。そして永原さんもSNSのことなんて気にせずに「好きなもの」を選ぶ……? このあとの展開、どうぞお楽しみに。私は元気が出ました。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。
X(旧twitter):@LidoHanamori 

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