夏に向けて、たるんだお腹を引っ込めたい…そんな思いからいろいろなダイエット本をチェックするなかで、ふと目に留まったのが“ちょっとHで、タメになる筋トレコメディ!”という、本作の紹介文。
最近の漫画は「ちょっとH」がちょっとどころじゃなくエグいケースもあるので油断(?)できませんが、「タメになる筋トレコメディ」ということで、何か得られるものがあるかも、期待しつつページをめくってみました。
本作の主人公は、体も気も小さく、まわりからいじめられがちな細々木(ささき)。周囲を見返そうと初めてジムを訪れてみたものの、さっそくジム常連の標的にされてしまいます。
そこに颯爽と現れたのが、この後細々木のトレーナーとなる五郎丸宇宙(ごろうまるそら)。
さっそく「ちょっとH」な描写も登場しますが、本作では、この五郎丸指導のもとで細々木が様々なトレーニングを学び、体を鍛えていく様子が描かれていきます。
まったく腹筋ができない細々木をなんとか鍛えようと、試行錯誤する五郎丸。たとえばこんなご褒美作戦も。
いやどんなサービスですか、これ。夜のお店かと勘違いしてしまいそうですが、ここはトレーニングジムです。いきすぎホスピタリティ……!
五郎丸がこんな工夫をしないと腹筋もできない細々木ですが、どうやらトレーニング中に頑張りすぎて意識が飛ぶクセがある模様。意識が飛ぶと、うっすら頭に残っている目標(ここでは「腹筋をする」)に向かってがむしゃらになる細々木の暴走がこちら。
筋トレしていたはずが、一体このふたりは何を始めたんだ!?と一瞬ドキドキしてしまいます。このように「ちょっとH」な要素もありますが、本作はあくまでタメになる筋トレコメディです。
たとえば懸垂を指導する場面。
悪い見本として細々木の姿勢を描きながら、五郎丸による「正しい懸垂のやり方」をコンパクトにまとめて紹介しています。よかった、本作はちゃんと筋トレの学びが得られるハウツー本としての役割を果たしてくれそうです。何が悪くて何が良いのかを、実例と併せて解説してくれると理解が深まります。
肌の露出が多く描写としては多少強烈ながらも、そこに必然性を持たせている場面もあります。次に紹介するのは、五郎丸が筋トレの出張指導で細々木の自宅を訪問した際のエピソード。
おしりフィーチャーの構図がインパクト大です。突然の雨に濡れてしまったので、風邪をひかないようにと細々木に促されてお風呂を使わせてもらう五郎丸、というところから話が転がってのこの展開。
股関節、肩関節、内転筋のストレッチを五郎丸自らお手本となって解説しているのですが
お風呂場でできるストレッチを紹介
↓
水着で手本を披露することで、体の使い方やその効果をわかりやすく伝える
↓
結果、めちゃくちゃセクシーなストレッチが完成
という構成になっているのです。
堂々とHなシーンを入れ込みながらも、しっかりタメになるレクチャーが展開されるという巧みなコラボレーションに、まんまと作者の術中にハマってしまいました。水着姿でのストレッチ、不自然なようで、実は説得力があります。「肩甲骨を浮き上がらせるのがポイント」というセリフと、背中にくっきりと描かれた肩甲骨のライン。これは素肌が出ていないと伝わりづらい部分です。
また、五郎丸は細々木に対して、筋トレ指導だけでなく食事についてのアドバイスもしてくれます。
鍛えるだけが筋トレじゃない、ということですね。食事も筋肉を作るうえで大事な要素。基本的なことですが、意外と疎かになりがちなので注意したいポイントです。
本作にはセクシーな描写も多数出てきますが、ちゃんと体を鍛えることを中心に据えた筋トレガイダンスコミックとして、楽しむことができます。もし本作を読んでいることが家族やパートナーに知られても、うしろめたさを感じる必要はありません。これは、「ちょっとH」かもしれませんが、ちゃんとタメになる筋トレコメディですから。
ページを彩るHなシーンも、ほどよいレベルで抑えてくれているので、私のように刺激強めな描写が苦手な人でも大丈夫。
さあ、本作とともに、本格的な夏に向けたトレーニング、スタートです!
レビュアー
中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。
X(旧twitter):@hoshino2009