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2022.03.21

レビュー

0~4歳児の“あるある”が愛しくて笑える。子育てもオシャレもとことん楽しむ!

愛しいあるあるたち

誰が見ても「ああ、かわいい」って思うはず。

さらにイラストに添えられたキャプションがたまらない。「鼻より高いほっぺ」「何ともいえない いいにおいの頭」「歩く気なんてさらさらない、ぽちゃぽちゃの足」……。ママもパパもそれ以外の人も「わかる!!!」って頷(うなず)いてしまいそう。

『きくちあつこ レモネードな子育てあるある日記 ~甘味と酸味が交差する0-4歳育児~』は、インスタグラムのフォロワー約28万人越えの大人気ファッションイラストレーター、きくちあつこさんの「育児あるある」本。
きくちさんのファッションイラストは、そのコーディネートを選んだ女性の好きなものやライフスタイル、見ている世界が感じられるようなリアリティがあって、何よりおしゃれ。イラストの中に小さく登場する子育てエピソードも心を和(なご)ませてくれます。

例えばこれは「子育て中でもファッションを楽しみたいママのため」のワンカット。一見「ママコーデ」と思えないおしゃれさに目を奪われた後に、予測不能な小さな子どもの動きに翻弄される“あるある”にクスッとなる。

本書は、そんな愛しい「子育てあるある」にフォーカスし、0~4歳児の“あるある”な行動を集めた描きおろしの1冊です。

世のお母さんたちからよく聞く悩みといえば、「寝てほしいタイミングでは、赤ちゃんは寝てくれない」こと。

少しのことで起きてしまうのに、しっかり食べてほしい食事中にスン……と寝落ちしてしまう。「ほんとこれ!」というお母さんたちの声が聞こえてきそう!



「いつも細切れの睡眠で、まとめて寝た記憶がない」「湯船につかるなんて贅沢、いつぶり?」「赤ちゃんが泣いてる!と思うと、落ち着いてドライヤーもかけられない」。これもよく聞きます。生活が全て赤ちゃん中心になり、自分のことが手薄になってしまうお母さんたち。……いつもお疲れ様です!


“あるある”は大変なこととは限りません。胸がギュッとなるような「かわいい……!」あるあるも。たとえばこんな自撮りたち。どんなにカメラロールが同じような写真で埋め尽くされても、これは消せない!


ハードな乳児期をすぎて、少し話せるようになってきたり、着られる服が増えてくると、子どもの可愛さは大爆発。「成長するのは嬉しいし、安心もするんだけど、とにかくこの時期の子どもが何をやっても可愛すぎて、大きくなるのが寂しくなっちゃった。『そんな早く大きくならないで』って泣いてた」「新生児の時は心配なことが多すぎてかわいいと思う余裕もなかったけど、意思疎通できるようになったら急に『最高かわいい!! 天使!!』と思えるようになった」。そんなことを言っていた友人たちの顔が浮かびます。


そして3~4歳にもなると、見た目はもう一端(いっぱし)の人間。
子供らしい可愛さの中に、親父くささが滲んできたり……。可愛さにもバリエーションが出てきますね。0歳、1~2歳、3~4歳……。その時々で子育ての悩みもあるけれど、可愛さのステージもまた進化していくんだなと感心します。
大変だなあ……と感じるエピソードも、可愛いイラストのおかげで「これあるある!」と共感できる癒しになりそう。

ママもおしゃれに

そして本書のもう1つの魅力、ファッションイラスト。ママが、子育て中でもオシャレを楽しむヒントがイラストになっています。

いい意味で「ママ」感がないため「0歳児のママがこれを?」と思うけれど、よく見ると「ワンピに見えてツーピース(授乳しやすい!)」「汚れの目立ちにくい総柄」など、ツボを押さえたコーディネート。

「LONG羽織は七難隠す!」……確かに! そして、このコーデのママの羽織に隠れる子どもたち、よく見かけます。体型カバーもできて、しかもかわいい(いろんな意味で)優秀コーデ!
シンプルかつ体型カバーしやすいアイテムに、靴や髪型、ネイルでエッジをきかせて、ほっこりしすぎずオシャレにみせるのがきくちさん流のコーデ術。手持ちのアイテムをおしゃれに着こなすヒントが見つかりそうです。

「レモネードな子育て」とは

本書には、出産、育児にまつわるきくち家のエピソードや、離乳食や卒乳に関するコラムも収録されています。

抱っこやトイレトレーニングなど、子育ての悩みは尽きないと聞くけれど。中でも特にママたちを悩ませているらしい、離乳食。「離乳食」を検索窓に入力すると「食べない」「進まない」とサジェストされる。みんな悩んでるんだなあ……。

きくち家も例外ではなかったようで、あまりにも離乳食を食べてくれないお子さんに頭を悩ませたきくちさんが、保健師さんや先生に相談しようかと思い詰めていたある日のこと。「赤ちゃんかわいいわねえ」と声をかけてくれたおばさまがいました。

なんとも言えない優しさについ、私は弱音が出てしまいました。
「でも離乳食、何も食べなくて、ほんと心配なんです」
優しく諭してほしくて、今にも泣きそうな声で言ったと思うけど、おばさまから出た言葉に拍子抜けしました。
「え、ラッキーじゃん!」
ギャル語?  

おばさまはこのあと、実に理に適(かな)ったトークで、きくちさんの離乳食に関する悩みを取り除いてくれました。

そして今、長男は小学5年生で私の身長も体重も大きく超えていき、好き嫌いもなく給食をおかわりする毎日。
離乳食を食べなくて悩んでいた日々を返せ。

タイトルにある「レモネードな子育て」とは、そんな子育てに悩む日々にまつわる言葉です。

When life gives you lemons, make lemonade.
人生が、あなたにレモンを与えるなら、それでレモネードを作れ。
タイトルの基となったレモネードに関することわざです。

子育ては、大変なことも多いのですが、新しい自分を得ることができました。
新しい自分への変化は、酸っぱいレモンがあんなに美味しいレモネードに変わる
不思議さと面白さに似ているなぁとタイトルに選びました。

この本が、子育ての不思議さと面白さを、共に笑えるような一冊になれたら嬉しいです。


笑えるけど「頑張ろね……」と言ってくれているようなイラストにただただ笑顔になるもよし、子育てファッションの参考にするもよし。笑いと、思わず胸が熱くなる愛しさ、きくちさんの子育てママへの優しい目線が同居する1冊です。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019

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