羊肉料理を家庭で作りたい機運
友人や知人を、私は2つに分けることができる。羊好きか、そうでないか、だ。羊好きだとわかると、心の中で相手のおでこに羊マークのシールをそっと貼るのだ。いつか彼らと羊料理を食べに行くために。
そのくらい羊肉に執着しているのに、今まで自分で羊肉を料理したことが一度もなかった。「牛肉・豚肉・鶏肉」のビッグ3が輝くスーパーのお肉売り場で、ちょこんと並ぶ羊肉たちを何度も見ていたのに。なんで?
ひとえに、おいしく料理できる自信がなかったからだ。「羊肉を料理する」文化がない家で育った私にとって、羊肉は東京(と北海道)の食べ物、外食のお肉だった。
そうは言っても、やっぱり目に入るんですよ、羊肉。あと、すぐ棚が空になる。どうやら羊好きが即買っているようだ。つまり「自分ちでも美味しく作れる」んじゃない? この街のどこかに、L-カルニチンたっぷりで、トレーニング後の食事にもぴったりで、おいしい羊肉を、自宅で楽しんでいる人がいる……!
そんな羊肉料理の機運が高まったところに現れたのが『家庭で作るおいしい羊肉料理』です。しかもサブタイトルが『星付き&予約が取れない店の人気シェフが教える』! こういうの待ってたー!
リアル「羊(肉)をめぐる冒険」
本書で紹介されている羊料理は大きく分けて4つのジャンルがある。
・フレンチ 家庭羊料理
・中華 家庭羊料理
・エスニック 家庭羊料理
・和風 家庭羊料理
今回はこの中で2品、「羊と赤玉ねぎのビネガーマリネ」「ラムチョップのソテーアンチョビソース」を作ってみた。どちらも「フレンチ」の羊だ。
マリネ液がしみ込んだ柔らかい羊肉が玉ねぎとマッチ! 羊初心者にもオススメ。
家族と食べることを想定すると「羊初心者さんにもオススメ」という言葉から漂う安心感は見逃せない。
実は、この2品に決める前に、もうひとつ目をつけていたレシピがある。「羊のポトフ」だ。
キャベツも玉ねぎも美味しい時期だし。が、こちらに必要なお肉「ラム肩ロース(ステーキ用)」が我が家の近所では見つけられず……。「オイオイオイ! 肉、どこ」という気持ちでパンパンになりながら数店舗ハシゴした。通販や、食肉をふんだんに取り扱うスーパーに行けば見つかりそうだ。(東京だと麻布の日進ワールドデリカテッセンにありそうな気がする。本書オススメの店舗やネットショップも巻末についているので、そこを頼りに買い求めるのも楽しいはずだ)
対する「羊と赤玉ねぎのビネガーマリネ」「ラムチョップのソテー アンチョビソース」は、「肩ロース薄切り」「ラムチョップ」という巷での遭遇率が高い羊肉を採用している。なので、レギュラー入りを踏んで挑戦することに。
知らないことばかり!
まずは「羊と赤玉ねぎのビネガーマリネ」。ここで「鶏節のブイヨン」なるものに出会った。「鶏節」って何者かわからないが絶対おいしいだろうなと思い、amazonで注文した。鶏胸肉をかつお節のようにヒラヒラさせた食べ物で、これでブイヨンを作るとしみじみ美味しい。そうこうして出来上がったのがこちら。
実際に作った「羊と赤玉ねぎのビネガーマリネ」
ワインビネガーなので酸味も強すぎず、油でじゅっと揚げ焼きした羊肉はふんわり美味しいし、臭みがない。そして他のお肉とは違うムチムチとした食感が楽しい。これは、羊初心者にもぴったりだ。
次は「ラムチョップのソテーアンチョビソース」。
かんたん&おいしい! アンチョビの絶妙な塩加減がたまらない!
美しいですね。付け合わせは「季節の緑野菜ならなんでも可」ということで、グリーンピースと春キャベツにした。
実際に作った「ラムチョップのソテーアンチョビソース」
骨つき肉って見た目からして完璧だな。なんておいしいんだろう。アンチョビの塩気とローズマリーとラムの油で春野菜がすすむ! 焼き方についてはこちらのページも参考にした。
プロが教える! 羊肉の扱い方(おいしい焼き方、選び方、保存方法)
保存方法も知らないことばかり。光、ダメなんだ。
ということで、「そうだったのー?」「こんな食材あるんだ?」という発見が多いお料理本だ。とくにレシピを一通り読むとスパイスや香草の多様さがわかって面白い。「コリアンダーの粒」なんて見かけたことはあったけど買ったことはなかったし。スパイスやハーブが大暴れしそうでも、羊肉は負けずに輝くし、むしろ味方につけるのがめっちゃ上手いお肉なんだなと思った。
お肉とスパイスをスーパーで探す段階でかなり楽しいので、連休中にぜひ作ってみてほしい。あたらしい料理に挑戦したい人にもオススメします。お肉の選択肢も、味付けの選択肢も、グッと広がります。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。