Twitterで7万7000人を超えるフォロワーを集める人気アカウント、上馬キリスト教会。初の著者『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』では、そのゆるい世界観で、聖書の面白エピソードをたくさん紹介しています。執筆を担当した「中の人」のまじめ担当、横坂剛比古さんがなかでも「力を入れて書いた」というのが、イエス=キリストの直弟子にあたる「使徒」を紹介した「使徒列伝」です。そこにこめた思いとは――?
揃いも揃ってみんなダメ。でもそれがいい!
━━━『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』では、イエス様の弟子、使徒について1章を割いて紹介しています。どれも、つっこみどころ満載のキャラクターですね。
使徒って、あくまでも人間なので、仏教における仏様の十大弟子みたいに立派じゃないんですよ。揃いも揃ってダメというか。ダメな順から選んでいったんじゃないかって思うぐらいで(笑)。
一番弟子、ペテロからして、ドジでおっちょこちょいの典型ですからね。イエス様が水の上を歩いたのをマネしようとして溺れたり、イエス様が「君の足を洗ってあげるよ!」と言ったら「どうせなら手と頭もお願いします!」と要求したり。「私はイエス様のことを『知らない』なんて絶対に言いませんからね!」と約束したその日の夜に3回も「イエスさんなんて人知りませんっ!」と断言したり……とにかくおっちょこちょい。かっこいいエピソードなんてひとつも出てこないんです。
聖書って立派な人の偉大な活躍が書かれてると思っているかもしれませんけど、そんなことはなくて、使徒それぞれが、みなさんの回りの誰かに似ていると思うんです。
━━━確かに、それぞれどこか親近感のわくキャラクターです。横坂さんが好きなキャラクターは?
いちばん好きなのはバルトロマイですかね。聖書の中にはそれほど登場しなくて、「存在感のない使徒選手権」があったら優勝候補(笑)。ただ、イエス様に「君こそ真のイスラエル人だ!」ってほめられて、そのまま弟子になった人で、それって相当なほめ言葉なんです。生きたまま皮を剥がされるという恐ろしい処刑をされてしまって、絵画などでは剥がされた自分の皮を手に持つというグロテスクな描かれ方をされるんですけど。
━━━絵画に描かれるといえば、ヨハネはイケメンとして描かれることが多いとか。
聖書には彼の容姿についての記述はないんですけど、なぜか女性のような美しい姿で描かれるのが慣例になっています。彼は、誰も手がつけられないほどの、ものすごいナルシストで、自分で書いた「ヨハネの福音書」に「主に愛された弟子」という人物がよく登場するのですが、これ、よく読むと彼自身のことなんです(笑)。後世の巨匠たちもそのナルシストぶりを忖度せざるを得なかったのかもしれません。
クリスチャンは普通の人。教会に来れば、いいこともあります
━━━他にもキリストの傷口に指を突っ込もうとしたり、本当に人間味あふれるというか、ある意味普通の人というか。
イエス様の直弟子たちがそうなのですから、僕たちふつうのクリスチャンなんて推して知るべしです(笑)。清廉潔白じゃないとクリスチャンなれないと思っている人も多くて。逆にクリスチャンになったら清廉潔白になれると思っている人もいるんですけど、違うんです。
皆さんと同じようにアホなことやるし、悪いこともする。使徒のことを書こうと思ったのは、そういうことが言いたかったんです。イエス様の弟子のなかでもエリート中のエリートたちがこんなで、それに続くクリスチャンが、まともなわけないでしょ!? っていう(笑)。
でも、牧師の校閲が厳しかった。「ゆるすぎる」って言われましたけど、「そういう本なんだから仕方がないでしょ」って(笑)。まじめな本は先生が書いてよって。
東京都世田谷区駒沢にあるメソジスト系単立教会。2015年2月にスタートしたTwitterでの伝道活動が人気を呼び、一般アカウントにもかかわらずフォロワー7万人を超える人気アカウントに。キリスト教や聖書の世界をおもしろおかしく切り取ったつぶやきが話題を呼び、2017年のクリスマスには150人を超える「初めて教会に来る人」が押し寄せるなど、大人気に。「中の人」は、一般の信徒で、「まじめ担当」「ふざけ担当」の2人。
• Twitterアカウント(@kamiuma)
通称マロ、あるいはマロさん。上馬キリスト教会の一般教会員。上馬キリスト教会Twitterアカウントの「まじめ担当」。1979年、東京都生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科倫理学専攻卒。専門は宗教倫理学。バークリー音楽大学CWP卒(Professional Diploma)。現在は宗教法人専門の行政書士としてキリスト教会をはじめ、お寺や神社の法務サポートを行いつつ、異宗教間コミュニケーションについての研究や実践も行っている。
『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』のほか、料理、美容・健康、ファッション情報など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。