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はじめての東京、はじめての同棲。徳島から上京してきたカップルの癒し系コミック

東京ふたり暮らし(1)
(著:井上 まち)
2022.09.04
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『東京ふたり暮らし』というタイトルから、同棲カップルの“いちゃこら”話だったらどうしようと思ったのですが、その心配は無用でした。
このお話は上京したての、のんびりほのぼのカップルの日常を描いた東京あるある物語です。

東京の会社で働くため、徳島から上京してきた小糸(こいと)ユウと日浦(ひうら)サチ、そしてイモリのトトさん。
彼らに限らず、東京駅に到着した人が真っ先にぶち当たるのは、JR、地下鉄、私鉄が細かく入り組んだ交通網の複雑さではないでしょうか。

新宿駅まで、到着が早い中央線を使わずに、乗り間違えても確実に辿り着ける山手線を選んだあたり、サチはなかなかのしっかり者。
エスカレーターでも、右側に立つユウくんにさりげなく注意します。

なるほど! 徳島は大阪や京都と同じ右側通行なのですね。
東京は、どこでも左側通行が当たり前。今さら気にとめることもなかったので、なんだか新鮮!!

新宿へは難なくたどり着いたふたりですが、問題は私鉄。
ふたりが乗ろうとしているのは、東京在住30年の私でも、いまだによく間違える小田急線。



「急行ゆうたら、きっと追加でお金がかかるやつやわ」
わかる!! JRの「急行」は料金が必要なので、そう思うのもうなずけます。

しかも、小田急線は「急行」のほかに、「快速急行」「準急」「通勤急行」「通勤準急」もあり、小田原線、江ノ島線、多摩線と枝分かれしているので、うっかり乗り換え損ねると、遠い駅まで連れて行かれます(笑)。かと言って「各駅停車」は「急行待ち」が何度もあるので、とんでもなく時間がかかる……。
そしてふたりが暮らすのは、「各駅停車」しか停まらない「喜多見駅」。

こうした設定が妙にリアルで、自分自身の東京生活を思い浮かべては笑ってしまいました。
「車内の広告 タワマンと脱毛ばかりだなぁ」というセリフも、わざわざ人に言うことでもないから言わなかったけれど、私もずっとそう思ってた!!という感じです。

こうして2DK、8万円弱の部屋で暮らし始めたユウくんとサチ。
ご近所さんへの引っ越し挨拶、初めての給料、初めての喧嘩など、初めてづくしのふたりも可愛いのですが、私が1番共感したのは、初めての渋谷。

今まで団地周辺しか出かけていなかったふたりは、インスタで話題になっているパフェを食べるため、渋谷へ行くことに。ところが……、



ダサい服を着ていたら、一発で田舎者だとバレるんじゃないか!? と若いころの私も、何を着て行ったらいいんだろう?と悩みました(笑)。

三軒茶屋で途中下車したものの、なんとか渋谷にたどり着き、お目当てのカフェに行くのですが……、





これは、いまだによく思います。なぜ、こんなに高いんだ!!と。原価率で考えたらあり得ないと思いつつ、土地代が含まれているから仕方ないかと、東京価格を受け入れていました。
しかし、堅実なふたりはこのカフェではなく、身の丈に合ったパフェを食べに行きます。そんなところも、好感度高し!!

サチの徳島ことばも可愛くて、徳島でのお話も知りたいなぁと思ったら、ありました。「番外編・徳島むかし話」として、大学生のころのサチとユウくんのエピソード漫画が載っているのです。
さらに表紙を外すと、4コマ漫画も載っていて、これが面白い!!
初々しくて、仲良しで、ほのぼのとした可愛らしいふたりの東京新生活をぜひ覗いてみてください。

  • 電子あり
『東京ふたり暮らし(1)』書影
著:井上 まち

ユウとサチは就職のため徳島から上京したばかりのカップル。初めての東京、初めての同棲。ふたりで暮らしたら毎日はこんなに楽しい! モーニングショート漫画大賞で夫婦漫才のような軽妙なやり取りが評価され、大賞&あらゐけいいち賞をW受賞! 満を持して連載化です!!

レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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