に、2巻をはやく……!
まず題名がめちゃくちゃいいですよね、『新婚だけど片想い』。すでに「新婚」という型は決まっているのに「片想い」も味わえる。片想いでドキドキしたり、落ち込んだり、想いを悟られそうになって焦るのと同時に、その片想いの相手にオムライスを作っちゃったりできるわけです。そういう魔法のようなシチュエーションをかわいく明るく描いてくれるから、少女まんがって大好き。
ここ! 何度読み返してもニヤニヤしてしまう! このページがとびきり甘く感じるのにはちゃんと理由があるんです。
まあ結構な塩対応。後ろから抱きしめていた彼と同一人物か? 同一人物です。でも、この塩に次ぐ塩対応があるからラブラブなシーンにクラッとくるんだよな……。
しかも塩と甘さの配分がよくできているので病みつきになります。最初は「塩塩塩!」だったのに、だんだん「甘々だ……」なビッグウエーブが襲ってきて、最終的に1巻がとんでもないシーンで終わるため、はやく2巻が読みたい。やめられないお菓子のような少女まんがです。
「そんな自分が大好き」
皐月は16歳。美人で誰に対しても優しくて勉強も頑張る努力家。そして、親がセッティングしたお見合いで出会った相手と婚約したばかり。
よくある「家同士の思惑が一致した結婚」なのですが、この選択に対する皐月の反応がものすごく面白いんです。
見よ、この「そんな自分が大好き」と言い切る清々しさを。客観性を取り入れまくった自意識の高さが美しい。
しかも「性格がいいとはいえないけど」とまで自分で言い添えてしまう。この分析力、すごいなあと思いませんか。親の不甲斐なさも、そんな親を助けて政略結婚に応じる自分の健気さも、クラスの羨望も、婚約者のステータスも、全部わかってる。
しかも努力家。見た目に気を使ってお風呂で小顔ローラーを使ったり、レシピサイトで調べて美味しいご飯を作ったり、勉強も手抜きなし。バイトだってやってます。スーパー女子高生。
じゃあ、婚約者はどんな人?
囲碁界のプリンスで、若き天才棋士の“有栖川久遠”。久遠が連発する塩対応の理由は、とにかく囲碁に集中したいから。婚約して同棲も始めたのに終始部屋に閉じこもって囲碁の練習を続けて、なんなら部屋のドアには「立入禁止」の札まで下げてます。
毎日めっちゃくちゃ冷たくされるし、指一本触れようとしない婚約者の久遠に対して、賢くて努力家で自分の評判をわかってる皐月はどう思うか?
やっぱり「自分でいうけど」と前置きをキチンとつけつつ、「ありえない!」とプリプリ怒るんですね。かわいい。私は皐月のキャラクターがとても好きです。
「まっすぐ見つめるものが自分じゃない」
で、皐月は自分に見向きもしない久遠をその気にさせてやる……と燃えつつも、久遠が何を一番大切にして、その一番大切なものの前でどんな顔を見せる人物なのかをちゃんと知っています。
囲碁の碁盤に向かっているときの久遠のまっすぐな表情は、自分に向けるつめたーい顔とは全く違う。だから余計くやしくなるわけです。
久遠に対する努力はちっとも実らないし、ますますムキになる皐月。で、「この囲碁にしか興味のない男と絶対両想いになってやる」と知恵を絞って作戦を練った結果がこちら。
賢いなあ……。同じ高校に通うことになっちゃったし、学校でラブラブ夫婦を演じたら意識してくれるかなーって作戦なんですが、むしろ皐月がドキドキします。かわいい。
皐月はいろんなことに手を抜かない女の子なんですよね。久遠の囲碁を応援してサポートしたいし、自分のことも見てほしい。だから勉強をおろそかにしがちな久遠の試験勉強を手伝ったり、久遠のちょっとした言動に赤面したり。つまりめちゃ忙しい。(そして読んでる側はとてもおいしい)
久遠も皐月の頑張りっぷりはちゃんと知っています。
同棲中の婚約者だからこんな場面もちょいちょいあります。良い。根性ありまくりのヒロインと、塩対応の棋士の新婚生活。皐月に勝算はあるのか? あると思うんですよ! 2巻はやく出てください!
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。