何ができるのー!?
手に入れようと思ったら、おいしい食べ物だって綺麗なインテリアだって、お店に行けばなんでも揃っているし、自宅から一歩も出ずに届けてもらうことだってできる。
でも、インスタグラムでDIYの動画を見始めると「いい……」と止まらなくなる。むくむくと楽しい気持ちになるのだ。最初は何が出来上がるのかさっぱりわからないところも楽しい。動画の終盤でやっと完成形が見えてきたときのあの感動。達成感がある。そして「これを自分で作る人いるんだ!?」とすら思う。立派でおしゃれな間仕切りの壁とか。
『てづくりの魔法』のDIYも同じだ。何ができあがるのか最初はさっぱりわからない。ずーっとワクワクしながら読んだ。
電球の黒い部分なんて気にしたことなかったし、外そうと思ったこともないよ……。ゴーグルとペンチを使うと外せるのか。で、どうなるかというと!
いろいろ詰めてますね! ちょっと見えてきた。
テラリウムの完成。かわいい! テラリウムって自分で作れるんだ! しかもこの電球は当初捨てるつもりのガラクタだったのに。
こんなふうに最初から最後までめいっぱいDIYを楽しめるマンガだ。
DIYって道具を揃えるのも楽しいんですよね。山盛り出てきます。
張りのない生活に彩りを
主人公の“海くん”は会社員。先日、同棲していた彼女が出て行きました。
テレビまで根こそぎ持っていった彼女、容赦ないなあ。そして根こそぎ持っていかれた割には、部屋がぐちゃぐちゃ……そう、海くんは片付けも家事もやる気が起きないし、そんなだから何かを楽しむ気持ちも消えかけています。
そんなある日、不思議な女性“よしのさん”と出会います。
ミニマリストの真逆を行くような、物でいっぱいの住環境。でも不思議と居心地良さそう。こちらはよしのさんの自宅兼店舗です。
よしのさんのお店は“なんでも作ってみる屋さん”。DIYショップ、というわけです。壁に並んだ道具もいいなあ。雑然としているようでちゃんと大切に扱われている感じが伝わってくる。
海くんはよしのさんのお店でいろんなDIYを教わります。部屋で「退屈だ……」ってボーッとしていたのに、少しずつ「何ができるの?」「こんなものも自分で作れるの?」と好奇心が湧いてくるんです。
こういうランプシェード、お店で探すといいお値段するんだよなあ……いや、そういう問題じゃなく、身近にあるものを使って自分の手で作れちゃうんですね。小さな子どもでも作れそう。
よしのさんのお店に通ってDIYを手伝ううちに、海くんは次第に元気を取り戻します。
ああ、生活が動き始めてる。部屋の照明を取り替えて、自分で作ったテラリウムを飾って、せっかくだから部屋も片付けます。(ちなみに、このオシャレな電球はよしのさんのお店で見つけたもの。見た目だけじゃなく使い勝手のよさも踏まえた助言をくれるんです)
ものづくりは多岐にわたる!
よしのさんはいつも楽しそうに自分の手で何かを作りまくってます。何がすごいって、このマンガはおまけページまでびっしりDIYなんです。ず───っと作ってる! テラリウムだって作れちゃうし、普通ならレストランで食べるようなジビエ料理だってこの通り自作します。
猪肉ってこうやって下ごしらえするんだ……。で、ごはんのシーンを読んでいくと、よしのさんの好奇心の強さがよくわかるんですよ。めずらしい食材も、ちょっと変わった組み合わせも、どんどん試して口に運んで美味しさを見つける名手。
アサリのデザートって何! 私も海くんと同じ顔になるな。
よしのさんのDIYパワーはどんどん膨らみ、ついにDIYショップまで自分たちの手でDIYし始めます。
プリミティブで力強い集客方法だ。「石窯で焼いたピザ」をものすごい初期段階(ピザの窯)から自作してます。できるんだ!? 完成をお楽しみに。
そして、読んでいくうちに海くんのもともとの性格も少しずつわかってくるんですよね。博学で、おっちょこちょいだけどひたむきで、好奇心旺盛。最初の頃とは別人。それってDIYで少しずつステキなものが出来上がっていく過程と似ているなと思います。過程から完成までじわじわと楽しめるマンガです。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。