今日のおすすめ

ざっくりわかる!! 授業では覚えきれなかった日本史の大事なことだけを漫画で!

東大教授が教える 日本史の大事なことだけ36の漫画でわかる本
(監修:本郷 和人 漫画原作:堀田 純司  漫画:瀬川 サユリ)
2021.06.03
  • facebook
  • X(旧Twitter)
  • 自分メモ
自分メモ
気になった本やコミックの情報を自分に送れます

学生時代勉強したのに、すっかり忘れている日本史を漫画で復習できるなら……と読み始めたのですが、よくある学習漫画本とは大きく違っていました !!
教科書には載っていない、人間くさい裏話が多く、「リアルな歴史」がいっぱいだったからです。
今まで勉強してきたものが、いかに試験用に覚えたぶつ切りの歴史だったかを思い知らされました。

【不屈の帝王 後醍醐天皇物語】

私の認識が大きく覆(くつがえ)されたのは、南北朝時代の後醍醐天皇。
鎌倉時代と室町時代の間に57年間続いた南北朝時代は、今ひとつパッとしない時代だなぁと、ずっと思っていました。

知っている事といえば、南朝は奈良・吉野の後醍醐天皇、北朝は京都の足利尊氏。あとは何をした人なのか、どういう制度なのかもよくわからないまま、楠木正成(まさしげ)、新田義貞、「建武の新政」を必死に覚えたぐらいです。

実は昔、後醍醐天皇が南朝と定めた吉水(よしみず)神社を訪れた事があるのですが、皇居と呼ぶにはあまりにも狭く質素で驚きました。
今でこそ、世界最古の書院建築で有名な世界遺産ですが、京都御所と比べると民家に毛が生えた程度にしか見えず、吉野駅から40分ほど歩く山奥なので周りには山しかありません。
「ここが南朝です」と言われた後醍醐天皇は、王政復古が現実となる日が来ることを本当に信じていたのだろうかと哀れみすら感じました。

ところが、これは私の勝手な思い違いだったのです。
後醍醐天皇は担ぎ上げられた天皇ではなく、2度も鎌倉幕府倒幕に失敗した、やる気満々の人だったのです。



「リーダーに求められる『人望』がまるきりなかった」という後醍醐天皇。

しかし、「この南朝こそ正統とする思想が江戸時代に台頭 倒幕運動の原動力」となったわけですから、歴史においては非常に重要な出来事だったということも、今回初めて知りました。
この本は、こうした大局で物事を見る重要性を教えてくれます。


【貴公子inヒャッハージャングル源頼朝】

もう一つ、そういう事だったのかぁと新たな発見があったのは、鎌倉幕府を開いた源頼朝。
この本の案内役であるホンゴウ先生が、頼朝が置かれていた立場と、鎌倉幕府第3代将軍・源実朝が殺された理由をわかりやすく教えてくれます。



鶴岡八幡宮の階段で実朝が殺された話は有名すぎて、よくある政権争いぐらいにしか思っていませんでした。
また、頼朝が義経を殺した理由も、人気者の弟に嫉妬したからという世間に浸透している話を鵜呑みにしていたのですが、朝廷や東国武士という背景を考えると、なるほどなぁと思いました。

この話を裏付ける根拠として、頼朝は「京都とは距離を置き、2度しか行っていない」という話が、「解説」に書いてあります。

この本は漫画だけでなく、「解説」や「日本史こぼれ話」など読むページもあるので、より深く考えるきっかけを与えてくれます。       

【本物のうつけもの? 織田信長】

何度もドラマで取り上げられている戦国大名の話も、たくさん出てきます。
酒癖が悪く切腹を命じたことを忘れていた大名、死期が近づき一緒に死んでくれる家来を募ったら誰も応じなかった大名など、笑える話も一杯です。

その中でも、最も意外で面白かったのは織田信長です。
信長は残虐な人物として知られていますが、実はとんでもないユーモアの持ち主だったというのです。

誰かちゃんとツッ込んでくれる人はいたのかなぁ、でも下手にツッ込んだら殺されるかもしれないからツッ込めないなぁ。だからこそ信長は、そういう度胸のある人物を待っていたのかもしれない、など想像するだけでも楽しいです。
史実として残っているものをどう解釈するのか、日本史の本当の楽しみ方を教えてくれるのが、この本だと思いました。

  • 電子あり
『東大教授が教える 日本史の大事なことだけ36の漫画でわかる本』書影
監修:本郷 和人 漫画原作:堀田 純司  漫画:瀬川 サユリ

劇画ありギャグありBLあり実録モノありの漫画で、笑いながら一気読み!
授業ではとても覚えきれなかった「日本史」。
本書にある大事なことだけつかめば簡単に理解できて、こんなにも面白い!
日本史に燦然と輝く英傑や将軍たち、お姫様たちの実像から、権門体制論や東国国家論などの歴史学論争まで、これさえ押さえておけば古代~幕末の日本史重要事項がざっくり頭の中に入ります。

◆第1章 英雄の真実
織田信長・豊臣秀吉・徳川家康・源頼朝
◆第2章 毒武将列伝
北条義時・足利尊氏・毛利元就・斎藤道三・松永久秀・宇喜多直家
◆第3章 貴族と武将の恋愛劇。そして愚かなる殿さま
細川忠興・北条政子・藤原頼長・奥平昌能・吉良上野介・徳川家斉・足利義政
◆第4章 正直、過大評価されているかもしれない人々
伊達政宗・足利義昭・上杉謙信・真田幸村・後醍醐天皇・福島正則・平将門・崇徳天皇・菅原道真・鍋島勝茂
◆第5章 歴史に残るやらかし
平清盛・直江兼続・鳥居元忠・井伊直弼
◆第6章 踏み込むのが恐ろしい日本史、闇の禁忌
持統天皇・孝謙天皇・光厳天皇・淀殿・孝明天皇
◆まんがでわかる歴史学
古代律令国家・権門体制論・東国国家論と2つの王権論・幕藩体制と大政委任論

レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

  • facebook
  • X(旧Twitter)
  • 自分メモ
自分メモ
気になった本やコミックの情報を自分に送れます