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欧米研究データの妄信は危険! 日本人に合わない健康法まとめ
極めていい加減で信憑性のない記事を大量に公開し、その妥当性について批判されて炎上、結果として記事削除やサイト閉鎖を行った医療系ネットメディアのニュースは、記憶に新しいところでしょう。その媒体の情報は根本的に間違っているものばかりでしたが、私たちの周りにはさまざまな健康情報が溢れています。そして、それが科学的根拠にもとづく健康法であっても、日本人に効果があるとは限らないのです。
同じ人間であっても外見や言語が異なるように、人種によって「体質」は異なります。その体質を知り、それに合わせた健康法を知る必要があるのです。
今回は私たちが「常識」と思って心がけていることを覆す、正しい「新常識」をいくつかご紹介しましょう。
新常識1:オリーブオイルの使いすぎは生活習慣病に!? 油の摂り過ぎはやっぱりダメ!
7ヵ国が参加した大規模なコホート研究から、地中海沿岸地域は心臓病による死亡率が低いことが明らかになりました。この研究をきっかけに、この地域で暮らす人びとが伝統的に摂取してきたオリーブオイルの健康効果に注目が集まっています。
オリーブオイルには、動脈硬化を促すリノール酸がごく少量しか入っておらず、代わりにオレイン酸が豊富です。その後おこなわれた研究で、このオレイン酸が心臓病の発生をおさえるらしいとわかり、この説を裏付けるデータが次々に発表されました。
また、オリーブオイルには、コレステロールの合成を高めない不飽和脂肪酸が多く含まれています。脂肪には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がさまざまな割合で入っており、オリーブオイルやサフラワー(紅花)油などの植物性油は、不飽和脂肪酸が90%近くを占めます。マーガリンは77%、バターは逆にコレステロールの合成を高める飽和脂肪酸が70%です。
こうしてオリーブオイルはヘルシーというイメージが生まれ、いまやダイエットや便秘解消に効くとしてオリーブオイルを飲むようすすめる人がいるほどです。
しかしながら、これらの成分も、すでに体内にある悪玉コレステロール(LDL)や中性脂肪を減らすほどの効果はありません。また、いくらオリーブオイルでも大量に使えば、かえって心臓病の発生率が上がります。油が脂肪そのものだからです。
オリーブオイルであろうがごま油であろうが、油はすべて大さじ一杯で約110kcalあります。日本人は欧米人と比べて内臓脂肪がつきやすいので、脂肪を摂取すれば、すぐ体について、血糖値が上がり、血圧が上がり、動脈硬化が進みます。心臓病も増えるでしょう。
動脈硬化を防ぎたいなら、悪玉LDLを上げにくいというわずかな効果に目をうばわれるより、油そのものの使用をひかえるべきなのです。
さらに言うと、オレイン酸は肝臓で合成できるので、意識して摂取しなくても健康がそこなわれることはありません。
新常識2:カルシウムと骨折しやすさは関係ない!? 骨粗鬆症発症率は米国白人の半分
日本人のカルシウム摂取量は米国人の約半分ですが、骨粗鬆症の発症率は米国白人のほうが2倍高いのです。
また、寝たきりの原因となる大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)骨折の発生率と、カルシウムの摂取量を国・地域ごとに比較したところ、米国、ニュージーランド、スウェーデンなど、1日あたりのカルシウム摂取量が多い国ほど、大腿骨頸部骨折を起こす人の割合が高いという、驚くべき結果が得られました。
さらに2015年には、カルシウム摂取と骨折しやすさの関連について調べた46件の研究を総合的に分析した論文が公表され、食事からのカルシウムの摂取量と骨折の発生率には関連がないと結論づけています。
日本人は欧米人と違って、海藻と緑黄色野菜、大豆や小魚などからカルシウムを取ってきました。また、日本で実施された大規模なコホート研究からは、大豆と大豆製品に含まれるイソフラボンという成分が、骨からのカルシウムの流出をおさえることが示されています。
牛乳に関しては、牛乳を飲むとおなかがごろごろする、乳糖不耐症の問題もあります。日本人を含む大部分の黄色人種とアフリカ系、そして白人でも地中海沿岸地域の人々は、7~9割が乳糖不耐症とされているのに対し、北欧や西欧出身の白人には、乳糖不耐症は1割ちょっとしかいません。
牛乳を飲む習慣は欧米から日本に伝わりましたが、日本人の体質に牛乳が合っているかは疑問です。
さらに、日本人男性4万3000人を対象に実施された調査からは、乳製品の摂取量が増えるほど前立腺がんの発症率が上がるという結果が得られました。
カルシウム源として牛乳にこだわる必要はなさそうです。
新常識3:夏バテだからと食べ過ぎは太るもと!? 日本人の基礎代謝は夏がもっとも低い
日本人の基礎代謝には大きな特徴があります。春から夏にかけて基礎代謝量は下がり、秋から冬に向けて上がるのです。「天高く馬肥ゆる秋」の言葉どおり、冬になると日本人の基礎代謝量は夏より8%ほど上がり、食欲も高まります。寒い中で体温を維持するには、体内でエネルギーを大量に燃やす必要があるからです。
逆に、夏は暑いのでエネルギーを燃やす必要がありません。そのため、基礎代謝が1年で最も低くなり、これにともなって食欲が減って、活動量も自然に下がります。
夏になると「夏バテを防ぐために、しっかり栄養を取りましょう」とよく耳にしますが、基礎代謝が下がっているのにカロリーの高いものを食べたら太るだけです。
それに夏バテになるのは、暑さで食が進まず、体力が落ちるからではありません。暑い屋外と冷房が効いた屋内の温度差による自律神経の乱れや、寝苦しさによる睡眠不足、高温多湿による発汗の異常などが重なって起きてくるので、食べて防げるものではないのです。
夏は食が細くなるのが自然です。体にたくわえられないビタミンやミネラルの摂取にさえ気をつけていれば、神経質になって無理に食べる必要はないでしょう。
まだまだある最新の研究結果から分かった新常識! 正しい知識で健康を維持しよう
最新の研究結果から分かった新常識は、まだまだあります。
たとえば大腸がん。日本では1950年から2000年までの50年間に、男性の死亡率は10.9倍、女性も8.4倍上がりました。よく「便秘がちだと大腸がんになるのではないか」と心配する人がおり、大腸がんが増えていると聞くと、腸がだいぶ汚れているんじゃないかと不安に思う人も多いことでしょう。
しかし、最近おこなわれた研究では、日本人の腸内細菌は外国人とくらべて、ビフィズス菌をはじめとする善玉菌が多く、悪玉菌が少ないことがわかったのです。つまり、日本人の腸内環境は良好であるというわけです。日本人に大腸がんが増えているのには、別の理由があると考えられています。
日本人の「体質」は遺伝子によって決まり、基本的に一生変わらない部分と、生活習慣やストレス、食生活や運動などの環境要因によって変わる部分がからみあってできています。日本人と欧米人は異なる遺伝子を受け継ぎ、異なる環境要因のもとで生きてきました。
こうして作られた日本人の体質は、当然ながら欧米人の体質とは違います。体質が違えば、病気のなりやすさや発症のしかたが変わり、そうなると日頃の健康法や病気の予防法、そして治療法も同じというわけにはいきません。
本書『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防』は、ゲノム解析技術の急速な進歩により明らかになってきた日本人固有の体質や、その体質を背景に発生する病気の研究結果をもとに、日本で暮らす日本人にとって本当に有効な健康法と病気の予防法について、わかりやすく丁寧に解説しています。
健康に不安がある方はもちろん、まだまだお若い年代の方でも、本書を参考に、自分に合った健康維持を目指していきましょう。
- 電子あり
日本人と欧米人は生まれながらに遺伝的な体質が異なります。また、体質のなかには長年にわたる生活習慣によって作られるものもあります。これらの先天的、後天的な体の違いによって、海外では当たり前の健康法が日本人には効果がなかったり、逆効果になったりすることがあるのです。
本書では、そうした体質の違いを踏まえて、日本人がなりやすい糖尿病、高血圧、脂質異常症、がんの病気別に予防法を紹介します。
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