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険持ちよ先生と流石景先生は同じ戦場で戦ってきた仲間!? 後半は、お二人の作品へのこだわりを語っていただきました。なかなか見られないプロの現場を公開しちゃいます!
![険持ちよ(けんもち・ちよ) イメージ](content/images/201608/2883/kenmochi.png)
2004年週刊少年サンデーマンガカレッジ7月期佳作を『風のカラム』で受賞
2010年より週刊少年サンデーにて『解体新書0』を連載
現在は少年マガジンエッジにて『空のカイン』を、月刊まんがライフMOMOにて『海咲ライラック』を掲載中
![流石景(さすが・けい) イメージ](content/images/201608/2883/sasuga_profile.jpg)
週刊少年マガジン第79回新人漫画賞にて『FIND NEW WAY!』で入選を受賞
2009年から週刊少年マガジンで「GE~グッドエンディング~」を連載
現在は週刊少年マガジンにて『ドメスティックな彼女』を連載中
──普段のストーリーマンガを描かれる上では、どのようなところに気をつけていますか?
流石:私はセリフですね。『ドメスティックな彼女』は現代が舞台なのでなるべくキャラのセリフが自然になるように気をつけています。普通にセリフを考えると文語調になってしまうので、一度自分の口で喋ってみて自然になるよう直しています。
![](content/images/201608/2883/201624_edge01.jpg)
キャラクターの自然な会話につながる
険持:私は、女の子の顔を特に気をつけています。とにかく女の子の可愛さってその時代時代で移り変わっていくので、そこから外れてしまわないように定期的に可愛い女の子の絵を見るようにして研究しています。なので、私の女の子の描き方はちょくちょく変わっていっています。
流石:可愛い女の子のフィギュアとかも持っていましたよね。
険持:はい。旦那が「俺の趣味だと思われるからやめて!」って言ってるんですけど、やめません(笑)。
──ネームはどのような順番で描かれているんですか?
流石:まず、話をネームの中に収めるためコマ割りをして、吹き出しの位置とセリフを入れていきます。それが終わったところで最後に絵を入れます。
険持:私も順番は同じですね。最初にコマ割りとセリフ、最後に絵を入れます。
──絵からでなく、コマ割りとセリフから描かれるんですね! 意外です……。
流石:もちろん、頭の中には絵が浮かんでいるのですが、やっぱりセリフを入れる場所を決めていかないといけないので。また、最初から絵を入れてしまうと後で直すときに大変なので、最後に全体や見開き単位でのバランスを見ながら絵を入れていく形をとっています。
険持:そうですね、一旦全部に絵を入れてみたけど、「このコマ大きくしたほうが良いな」とか「アップが続いてしまってうるさい感じがする。どちらかのバランスを変えなきゃ」などの状況が起きた時、このやり方だと修正しやすいんです。
流石:全体のバランスは大事ですね。とにかく読みやすい形になることを第一にネームを作っていきます。
![](content/images/201608/2883/201624_edge02.jpg)
マガジンエッジ9月号『空のカイン』第9節のネーム
![](content/images/201608/2883/sasuga_name.jpg)
週刊少年マガジン37・38合併号『ドメスティックな彼女』第106話のネーム
──読みやすいネームを作る上で大切なこととはなんでしょうか?
険持:ひとつはキャラのアップと引きのロングの絵のバランスだと思います。新人の頃はとにかくキャラのアップを沢山いれてしまい、顔マンガになってしまいがちですが、アップばかりだと状況がわかりづらくなってしまいます。適度にロングの絵を入れるようにしないといけません。
流石:キャラのアップを使うのは、キャラクターの表情を見せないと行けないとき。逆にキャラの表情を見せなくて良いときは、ロングの絵を入れた方が状況はわかりやすくなります。あと、複数のキャラが同時に喋っている時なんかもロングを使うとわかりやすい絵になります。
![](content/images/201608/2883/0824_domekano.jpg)
ロングは複数人での会話をわかりやすくする
険持:あとは、場面転換したらキャラクターがどこにいるのかを表すロングの絵を必ずいれる。最初に顔のアップから始まってもいいけど、その後にロングの絵を入れて読者に対してちゃんと説明してあげる必要があります。そうしないと読者がついてこれなくなっちゃう。『空のカイン』はファンタジーマンガなので、読者の方にとって知らない舞台が沢山出てきます。なので、場所が変わったときはまず“新しい街に来た!”と、ロングで大きく街を見せて、その後に主人公へカメラを当てます。基本はこの繰り返しです。
![](content/images/201608/2883/201624_edge04.jpg)
ロングで街全体が一望できる演出
流石:とにかく、パッと見てわかるように作らないといけません。マンガはとにかく読みやすさが大事なので、“考えないとわからない”絵というのはダメなんです。
険持:そうですね。なるべくコマ割りで複雑なことをしないようにしています。ファンタジーって特別にカッコいいことをしたくなるんですが、やり過ぎると何をやっているのかわからなくなってしまいますからね。
──『空のカイン』『ドメスティックな彼女』はどちらも表紙のカラーがとてもステキですが、カラーはどのような手順で描かれているんですか?
険持:色で描いています。
流石:色で描くっていうのは?
険持:一旦下書きの上に全部色を置いてみるんです。薄紫だったら、全体に薄紫を置いて、その上に次の色を乗せて行く。そうして全体的に同系色になるようにコントロールしてきます。ラフからだんだんと描き込んでいって仕上げていきます。
![](content/images/201608/2883/201624_edge06.jpg)
『空のカイン』1巻カバーイラスト
流石:私はキャラの線画から描いていきますね。その後に全体の色を入れていきます。色のバランスはメインカラー、サブカラー、ポイントカラーの3つくらいで整えるとかっこよくなります。例えば海を描くなら、まずメインカラーは一番面積の多い海の青になります。サブカラーはあまりメインカラーと対照的にならない色を選びます。ここでは緑とかでしょうか? 最後にポイントカラーとして赤など対照的なものを少し入れると全体的に整った統一感のある絵になりますね。
![](content/images/201608/2883/201624_edge05.jpg)
『ドメスティックな彼女』カラーイラスト
──なるほど、描いていく手順は違いますがお二人とも色の統一感を大切にされているんですね。最後にお互いに何か一言をお願いできますか?
流石:いや~険持さんは、戦友ですね。
険持:そうですね、私も流石さんは戦友だと思ってます。
流石:この世界でずっと戦ってきているので。
険持:自分が本当に辛いとき、流石さんもすごい頑張ってるんだ!と思うと踏ん張る元気と勇気が湧いてきます。
流石:わかります! 私も同じです。険持さんがいくつも連載を掛け持ちでやっているのを見ると「すごいなあ、私も頑張らなきゃいけない!」と思います。お互いに大変だけどこれからも頑張っていきましょうね。
険持:そうですね。頑張っている人がいるっていうのが自分の支えになっています。
- 電子あり
高まる瑠衣への想いから、ついにキスを受け入れてしまった夏生。一方、新天地の生活に励む陽菜は、夏生への愛情を捨てきれずにいた。すれ違い、絡まり合う3人の恋模様は、偶然の出会いから再び動き出す──!
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