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ひとつ屋根の下。美少女5人が男1人に「恋愛フラグ」の副作用

2016.01.28
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「フラグ」という言葉をご存じだろうか。物語においてイベントが発生する要因を「フラグが立つ」と言い、その反対にイベントが発生しなくなる要因を「フラグが折れる」と言ったりする。

例えば、戦争映画で「俺、この戦争が終わったら結婚するんだ」と言い出す兵士は高確率で戦死する死亡フラグが立っているし、推理小説で最初に警察に疑いの目を向けられる容疑者は犯人ではない冤罪フラグが立っていると言える。

生存フラグ、死亡フラグ、恋愛フラグ、勝ちフラグ、負けフラグ……。人生もまた物語だとすると、その節目節目の岐路において、さまざまなフラグが立ったり折れたりしていると考えられる。もちろんフラグは目に見えないが、もしもフラグを見ることができたとしたら、どんな人生になるだろうか。

『彼女がフラグをおられたら』は、そんなフラグを見ることができる主人公とヒロインたちの学園ラブコメディ。それも他のハーレムラブコメとは一味違う、心に傷を負った少年を女の子たちがこれでもかとダダ甘やかす癒し系ハートフルストーリーだ。

私立・旗ヶ谷学園1年F組に転校してきた男子高校生・旗立颯太。颯太は過去に遭遇した豪華客船沈没事故に遭った後、「他人の頭上に立つフラグを見て操る能力」を獲得するが、家族や他の乗客を犠牲にただひとり生還した自責の念から、他人との関わりを避けるようになってしまった。しかし孤独でありたい颯太の望みとは裏腹に、ツンデレお姫様の菜波・K・ブレードフィールドや、天然お嬢様の魔法ヶ沢茜、世話好きお姉ちゃんの召喚寺菊乃など、彼の周囲には魅力的な美少女たちが次々に集まってくる。

フラグを見る能力があるだけでなく、他人のフラグを立てたり、あるいは折ったりも思いのまま。普通の男子であれば、これ幸いと意中のヒロインに恋愛フラグを立てて攻略しにいきそうなものだが、トラウマを背負うこの物語の主人公・颯太は、あの手この手でヒロインに立った恋愛フラグを折りにいく。一方で、対するヒロインたちも一筋縄ではいかない。なぜなら、ヒロインたちは皆、颯太が幾度となくフラグを折っても、すぐに新しい恋愛フラグが立ってしまうチョロイン(チョロいヒロイン)ばかり、いやもとい、可哀想な颯太を見捨てておけない、思いやりにあふれる心優しい女の子ばかりだったからだ!

よくあるラブコメなら、ヒロイン全員に主人公への恋愛フラグが立っている状況であれば、主人公を巡ってライバル同士で恋の駆け引きや競争が起きてギスギスした修羅場になるもの。だが、この物語のヒロインたちはライバルの恋路を応援して積極的に身を引こうとする、世にも奇妙な『譲り合い逆修羅場』を展開する。自分よりも他人の幸せを願う彼女たちの純真さは、聖人君子も眩しくて目をそむけるレベルだ!

ヒロイン同士が和気あいあいと良好な関係を築いている、これぞ理想のハーレムと言いたいところだが、頼んでもいないのに、勝手に気を回されてデートや恋愛イベントを押しつけられる颯太としては、たまったものではない。

そんなうらやましい状況を迷惑がっている罰当たりな颯太だが、ときに周囲の人々の友情に助けられたり、またフラグ可視操作能力を利用して事故や災難からヒロインたちを救ったりして、周囲との絆を深めていく。1巻では、いまにも崩壊しそうなオンボロ学生寮に住むことになった颯太のために、クラスメイトたちが一致団結して寮のリフォームを手助けする。また、その際にヒロインたちも一緒の寮に住むことになり、2巻では、寮での男女共同生活を認めさせるために、体育祭でのチーム勝利を目指して抜群のチームワークを見せる。

ヒロインたちのお節介なまでの優しさによって、過去のトラウマから自分の殻にこもってしまった颯太の心が癒されて、生きることへの希望を取り戻していく姿が、あたたかい気持ちにさせてくれる。学校や会社での人間関係にストレスを感じて疲れたときには、この作品で心の休憩をとってみてはいかがだろうか。

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レビュアー

愛咲優詩

ライトノベル感想サイト『ラノベ365日』の管理人。これまで約1000冊のライトノベルのレビューを掲載。主にラノベ・アニメ・ゲーム関連でのライターとして活動中。キュレーションサイト『ダ・ヴィンチニュース』でもブックレビューを連載中。宝島社『このライトノベルがすごい!』シリーズではweb情報発信者として参加。いつも若手・新人作家さんを応援しています。

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