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2016.01.19

インタビュー

【頭文字D映画公開記念】しげの秀一×多田哲哉「86とハチロク」SP対談

『バリバリ伝説』、『頭文字D』モータースポーツ漫画の金字塔を打ち立てた伝説の漫画家・しげの秀一氏。ライトウェイトスポーツの復権を高らかに宣言した名車・86(注1)を手がけたTOYOTAの伝説のエンジニア・多田哲哉氏。

86というクルマと『頭文字D』の不思議なつながり、さらに、若者とクルマについて語る「伝説」の二人の対話は、ときに笑いがあふれ、ときに白熱しながら繰り広げられていった。

 

写真 花房徹治

しげの秀一
しげの秀一

漫画家。1981年、漫画家デビュー。1983年、『バリバリ伝説』(週刊少年マガジン)を連載。1995年から2013年にかけて『頭文字D』、2014年に『高嶺の花』(ともに週刊ヤングマガジン)を連載。現在週刊ヤングマガジンにて『セーラーエース』を連載中。

多田哲哉
多田哲哉

トヨタ自動車モータースポーツ本部スポーツ車両統括部ZR、ZIチーフエンジニア。学生時代よりモータースポーツに熱中し、ジムカーナー、ダートラ等へも参加。98年よりbBなどの企画業務に従事、その後トヨタ86のチーフエンジニアとなる。

オレンジ色の新86
劇中に目を奪われるようなオレンジ色の新86が登場し、鮮烈な印象を与える

――しげのさんと多田さんは旧知と伺いました。

多田 今日はしげのさんにお会いするのが本当に楽しみで。

しげの 僕もです。多田さんは映画(『「頭文字D」Legend3-無限-』)をごらんになったんですか。

多田  はい。先ほど。あのシーンはよかったですね。

しげの 新旧の86が出会うシーンですか。僕はまだ観られてないんですが。ちなみに、新86のクルマの色は?

多田 はい。テーマカラーのオレンジでした。色もキレイに出ていましたよ。

しげの それはよかった。

語り合う両氏
作品と新旧86を肴に、話はどんどん盛り上がり、とどまるところを知らない

多田 あのシーンはいろいろな想像がふくらむいいシーンでしたね(笑)。しげのさんとはこれまでに何度か話をしましたね。

しげの いろんな話をしましたね。多田さんの話はとっても面白かった。エンジニアとしての開発ストーリーももちろん、車が走るということについての知識がすごくて、夢中になって話を聞いてしまいました。刺激になったし勉強になりました。

多田 そんな。それにしても今回は、本当にいいタイミングで映画を観ることができ、しげのさんに会えたなと思っています。新しい86を作って3年。これから中古車も出てきてファン層も広がり、自分仕様にカスタマイズしていく人も増えていくだろうな、と考えていたんです。

しげの ええ。たしかに、中古車はユーザーがいじるにはちょうどいいですよね。

多田 まさに、AE86(以降ハチロク)のような伝説がこれから始まるといいな、と考えていたタイミングだったんですよ。

『頭文字D』コミックで描かれるハチロク
もはや伝説となった「AE86(ハチロク)」。『頭文字D』がそれに大いに貢献したのは言うまでもない

――多田さんもハチロクに乗られていたことがあるとか。

多田 はい。あの頃の走り屋は、みんな一度は乗っていたような気がします。楽しかったですよ。

しげの 多田さんは、以前から、若者が手に入りやすいように86が中古車の市場に出回ってくれるといいとおっしゃってましたよね。

多田 ええ。ただ、残念ながらというか、ありがたいというか、86は中古車の値段もまだ高値なんですけどね。

しげの そうなんですか(笑)。

多田 もうちょっと値段が下がってくるといいんですけど(笑)。

しげの しばらくは難しいかもしれませんね(笑)。

多田 ハチロクも中古車が人気でしたね。元のクルマが普通のクルマでしたから、いじりがいもありました。それが逆に良かったのかもしれない。

しげの 新しい86は普通の状態でもスペックがすごいですよね。

多田 それでもユーザーの中には、驚くようなカスタマイズする人もいるんですよ。

しげの へえ。それはどんな?

多田 実は今、新型の86の開発を進めているんですけど、「あれ? このパーツ、ユーザーのカスタムに負けてるぞ」っていうくらい。みなさん、あのクルマを研究してくれて、エンジンから内装まで、ありとあらゆるところをいじっているんです。

しげの すごいですね。でも、それはある程度予想していたそうですね。

多田 ただ、そのカスタムの広がり方には驚きました。ものすごいスピードでさまざまなクルマが出てきて、クオリティも上がっていきました。完全に僕らの予想を超えていました。

――86のホームページには「86ソサエティ」(注2)というユーザーのためのコミュニティのページもありますね。ユーザーとの距離の近さを感じました。

多田 ユーザーのコミュニティは自然にできていきましたね。86を発表してから、最初にいくつかTOYOTAがイベントを開催したんですけど、それがユーザーの間で日本中に広がっていって、今では毎週末どこかでイベントがあるようです。

しげの それは熱いですよね(笑)。そういえば「86」って名前もいいですよね。数字二つで、なんだか愛嬌もある。

多田 我ながら、よくつけたなあと思います(笑)。ファンも「8」と「6」にちなんだイベントをよくやってるみたいです。8月6日に富士スピードウェイに集まったり。

しげの そうなんですか!

多田 今年は新旧の86が3~4000台くらい集まったんです。

しげの さすがにあの大きなコースも渋滞したでしょう。

多田 ええ。パレードランができなくて。

しげの すごいですね。

多田 海外にも新旧86や『頭文字D』のファンがいるんですよ。日本の86イベントにわざわざ参加した人もいるそうです。

しげの 熱心ですね。

多田 そういえばオーストラリアでハチロクのファンミーティングに参加したとき、みんなカタカナで「コウキ」って書かれたTシャツを着ているですよ。そのファンクラブの名前らしいんですけど、なんて意味だろうと思って聞いてみたら「後期」型のことだって。なんで分からないんだって怒られちゃいました(笑)。

しげの スゴイ、マニアックだなあ。

多田 この作品も、海外版を作ってみたらどうですか。受けるとおもうなあ。

しげの それは観てもらいたですね。

多田 でもファンだけじゃないんです。86を開発するにあたって、『頭文字D』の影響というのは本当に大きいんですよ。愛知から86を共同開発した富士重工のある群馬へ向かうために、ほぼ毎週(作品の舞台となった)榛名峠を走りましたし。拓海の父・文太が乗る車もスバル(インプレッサ)ですしね。

しげの ああ、そうだ。

多田 そうなんです。文太は実は昔はスバルで働いていたんじゃないか、なんて勝手に想像したり(笑)。

しげの(笑)

多田 それに『頭文字D』が好きな開発スタッフもたくさんいたんですよ。なんだか偶然とは思えないような「縁」を感じました。

しげの秀一先生・多田哲哉氏の熱い対談の続きは、2月6日公開の「新劇場版『頭文字D』Legeng3-夢現―」の劇場パンフレットに掲載してあります。映画鑑賞と合わせてお楽しみください。


握手する両氏
対談の全文は劇場パンフレットに掲載される。乞うご期待

『新劇場版「頭文字D」Legend3-夢現-』

2月6日 ROADSHOW

http://initiald-movie.com/movie.html


注1)TOYOTA86はトヨタ自動車が富士重工と共同開発したライトウェイトスポーツカー。2012年の発表以来、新時代のFRスポーツカーとして幅広いユーザー層に愛され続けている。

注2)86の公式サイト内に設置された「86SOCIETY」。掲示板や毎週のように開催されるオフ会情報、愛車の写真投稿ページなど、86ファンたちが活発に交流を続けている。 http://toyota-86.jp/86society/index.html

© しげの秀一/講談社・2016新劇場版「頭文字D」L3製作委員会

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