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インタビュアーという仕事は数年後にも残っているか?
この本が出版された2002年は、ICレコーダーも一般的でなければ、ネットのインタビューのことも積極的に語られない時代だったようです。でも、インタビューそのものに関しては、今も2002年も変わらないと思えました。
最近、今から何年後にはなくなる仕事についての話題がたまに見かけられます。でも、この本を読む限り、インタビューは、インタビュイーの言葉をそのまま起こせばできるものではないということがわかるので、人々が誰かの話に興味を持っている限りはなくなる仕事ではないのではないかと思いました。
では、インタビューは映像で十分ではないか、文字によるインタビューの需要はなくなるのではないかというと、やっぱりそれもないと思います。私自身は、インタビューにしても、ライブやイベントレポにしても、生で見ることにはかなわないし、映像に収録したもの以上のものがあるだろうかと考えたこともありました。でも、今はそうは思いません。映像を見るにしても、編集がかかって短くなることもあるし、そのままのものを見るには時間を短縮できないから、熱心なファン以外にはハードルも高くなります。
また、人の解釈というものが入ったインタビューやレポというものは、プラスアルファの魅力があると最近になって思えるようになりました。陳腐な言い方ですが、インタビュアーやライターの視点が入ることで、読む人により共感してもらうこともできると思います。
この仕事を始めたころ、インタビュアーは黒子に徹するほうがいいと考えていました。今もその気持ちはさほど変わりません。私の質問は、線が二本の「──」で始まってかまわないし、私の意見は必要性のない限り入れなくてもかまわない。でもそれは、完全に存在を無にするというわけではありません。さきほど、解釈が加わればプラスアルファになると書きましたが、その解釈は何も自分の考えを質問文に入れ込むことだけではありません。質問の内容のひとつひとつや流れであったり、全体に流れるテーマを見れば、そこにプラスアルファがあると気づいてもらえるような、いやもっと言えば気づかないけれど面白いと感じてもらえるような仕事をしたいと現時点では思います。
この本の最後には、吉行淳之介さんの対談を例にとり、その仕事を「よくできたインタビューは、インタビュアーとインタビュイーの双方の生きている瞬間をリアルに再現させる。そこには、話し手の人柄や思考だけでなく、他者との関係性、社会との関係性、世界との関係性もあらわれる。大げさにいえば、インタビュアーとインタビュイーが生きる時代や世界が見えてくる」とあります。プラスアルファの部分なんてまだまだ微々たるものですが、できればそんなインタビューがしたいなと思うのでした。
レビュアー
1972年生まれ。フリーライター。愛媛と東京でのOL生活を経て、アジア系のムックの編集やラジオ「アジアン!プラス」(文化放送)のディレクター業などに携わる。現在は、日本をはじめ香港、台湾、韓国のエンターテインメント全般や、女性について執筆中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に「女子会2.0」(NHK出版)がある。
近況:マイナビニュースで、『起終点駅 ターミナル』の監督、篠原哲雄さんにインタビューしました。
「31歳が分岐点」─法学部から映画の道へ進んだ監督・篠原哲雄さんの働き方
http://news.mynavi.jp/articles/2015/11/09/careerperson/
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