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企画書は“ラブレター”である

2015.01.20
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テレビ東京が好調と聞きます。蛭子能収さんと太川陽介さんの『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』の視聴率が上々であったり、ドラマ『三匹のおっさん』の視聴率が10%を超えたり、企業利益も2014年度3月期のグループの決算が過去最高益だったとか。

個人的にテレビ東京の番組を見ていても、深夜枠のドラマやバラエティで他局にはない企画が目白押しで、特に金曜深夜のドラマや土曜のバラエティは欠かさず見てしまいます。

また、2014年末にNHKで放送された『新春テレビ放談2015』でも、お笑い芸人の土田晃之さんが「テレビ局のタレントクロークの雰囲気でこの局キテるなというのが分かる」「今はテレ東のクセに……、テレ東の雰囲気が凄い良い」と語っていました。

こういう空気ができたのは、面白いことが「わかっている」プロデューサーが何人かいて、その人たちの企画を「やらせてみよう」と進める上層部の存在があるのではないかと思っていました。ところがこの本を読んだら、それは半分は正解で半分はちょっと違うことがわかりました。

まず、面白さを「わかっている」プロデューサーがいることは、間違いありません。この本の著者であり、『ゴッドタン』や『キス我慢選手権』(個人的に去年公開の中で一番好きな邦画は『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE2 サイキック・ラブ』でした)という企画を成功させた佐久間宣行さんに、佐久間さんの先輩で、『モヤモヤさまぁ~ず2』や『ざっくりハイタッチ』を手掛ける伊藤隆行さんなどが存在します。伊藤さんは、『伊藤Pのモヤモヤ仕事術』という本も出されています。

ただ、「やらせてみよう」と進める上層部に関しては、結果的にはあっているのですが、そこには、単に何でもやらせようということではなく、プロデューサー側の努力の結果、「やらせてみよう」となっていることが分かりました。

佐久間さんによると、「企画書は“ラブレター”」であるとのこと。「この企画書は誰が読むのか」ということに気付くまでは、自分が面白いと思った企画が通らないことも多く、その理由を「上のアイツらはこの企画の面白さが理解できないんだ。センスが合わないんだ」と決めつけ、そうすることで小さな自尊心を守ろうとしていたとのこと。

ところが、「この企画書は誰が読むのか」と気づいてからは、「自分の思っていることが、受け取る人にちゃんと伝わるような、“ラブレター”を書かなければ」と考え、バカバカしくくだらなくて笑える企画だからこそ、企画書を受け取る相手に対して、真面目に面白さを伝えないといけないということなのだそうです。我々が『ゴッドタン』や『キス我慢』で笑える背後には、こんな見えない努力があったんですね。

そしてこの考え方は、何もテレビの企画を通すときだけでなく、いろんな場面でも参考にできるのではないかと思ったのでした。

レビュアー

西森路代

1972年生まれ。フリーライター。愛媛と東京でのOL生活を経て、アジア系のムックの編集やラジオ「アジアン!プラス」(文化放送)のデイレクター業などに携わる。現在は、日本をはじめ香港、台湾、韓国のエンターテイメント全般や、女性について執筆中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に「女子会2.0」(NHK出版)がある。

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