中世ヨーロッパを舞台にしたファンタジー作品は色々とありますが、ここまでリアルな中世を再現してくれるマンガはなかなかありません!!
孤児のレノは、紅花(カルタモ)修道院で穏やかな毎日を送りながらも、いつかは騎士になりたいと夢見ている男の子。
ところが野盗の襲撃に遭い、修道院は壊滅。ひとりになってしまったレノは、助けてくれた騎士エクウスの「従者」になりたいと訴えます。
騎士は、志願すれば誰でもなれるのだと思っていましたが、違うのですね。
一般的には貴族の子弟がなるもので、ほかの貴族の城で下働きをしながら、教養や礼儀作法まで学ばなければいけないというのです。
つまり孤児であるレノは、従者になる資格がないということなのですが、心優しいエクウスと共に、樫の城(クエルクス城)へ。
ここは、レノが思い描いていた石造りの堅牢な城と違い、柵は木を組んだ簡素なもので、造成中の城に出入りしているのも人夫(にんぷ)ばかり。
というのも主君はよその城に居て、ここは領境に造られた出城(でじろ)の役割があるからです。
このクエルクス城を守っているのが、エクウスを含めた3人の騎士。
中でもリーダー格のファルクスは、ここは事故や危険も多く物資も潤沢ではないから、レノを置くことはできないと言います。
そんなとき、昔からイザコザが多い隣領カテドラの使者が、「食事に招待して欲しい」と獲物のうさぎをたずさえてやって来ます。
領境にはいつでも攻め入ることができるカテドラの宿営があり、親睦を深めようと言いつつ、本当の目的は領内の偵察だろうと察するファルクス。
しかも、うさぎを調理できる人間などおらず……ということで、レノがエクウスに訴えます。
「ぼくに命じてください。『このうさぎでとびきりのご馳走を作れ!!』って」。
いよいよ、修道院で食事を作るお務めしてきたレノが、実力を発揮するときがやってきました!!
料理のレシピが載っているマンガはほかにもありますが、このレシピはかなり本格的。うさぎのさばき方まで載っているのですから。
そしてなんと、実際に「うさぎのパイ」を調理した編集部制作の動画まで見つけてしまいました!!
https://www.youtube.com/watch?v=KHgUQpbkpqA
この徹底ぶりが、『騎士王の食卓』を現実味のある世界にしているのだと思います。
ちなみに私は、うさぎ料理を食べたことがあり、あまりの美味しさに2日連続でお店に通ったほどです。
きっとレノが作った「うさぎのパイ」も、美味しかったに違いありません。
下手をしたら、戦が始まっていたかもしれない状況をレノの料理が救ったのですから。
こうしてクエルクス城への入城が認められ、騎士たちの料理番となったレノ。
『騎士王の食卓』は、こうしたメインストーリーだけでなく、この時代の色々なことが細かく描かれていて、それがメチャクチャ楽しい!!
例えば、朝食にビールやワインを飲んでいたとか、城がどうやって造られるのかとか、そこで働く人々や道具とか、筆記用具まで、とにかく知らないことだらけ。
絵もびっくりするぐらい細かく丁寧に描かれているので、美しい中世に浸ることができます。
そしてこの先のお話は、レノの料理で人々が癒されるだけでなく、レノが騎士見習いとなり自分の親を探すことになりそうです。
とにかく色々な要素がてんこ盛りの『騎士王の食卓』、これならきっと満腹になること間違いなしです!!
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp