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2023.03.26

レビュー

まだ見ぬお隣さんとベランダの壁1枚を挟んで楽しむガーデニングライフ!!

隣が空き家になるたびに、どんな人が越して来るんだろう? 独身の素敵な人が越して来て、運命の出会いがあったりして……と期待を膨(ふく)らませては、そんなことは起こらないという現実を思い知らされてきた私。
だからこそ、こんなことがあったらいいのになぁ、という夢がいっぱい詰まった『今日もベランダで』を夢中になって読んでしまいました!!

誌面のレイアウトなどを手掛けるエディトリアルデザイナーの土岐田旬(ときたしゅん)は、どんな仕事も手を抜くことが出来ない凝(こ)り性のため、徹夜も多く部屋に籠もりっぱなし。
引きこもり仕事の気分転換として始めたのが、ベランダでのガーデニングでした。

そのお隣に引っ越して来たのが、新進女優の成海游(なるみゆう)。
二人三脚でやってきたマネージャーの「不用意に部屋から出ないこと」という言いつけをしっかりと守り、顔を合わせないままベランダ越しの交流が始まります。





この土岐田が、世話好きで心優しくて紳士的で、適度な距離感を保ってくれる理想的な隣人!?なのです。

例えば、ベランダで採れたゴーヤでゴーヤチップスを作ってくれたり、エアコンのリモコンが見つからず困っている游に、ベランダの隔壁越しにリモンを吊るして貸してくれたり、採れたてミントでカクテルのモヒートを作ってくれたり。



なんていいヤツなんだ!! 私もこんな隣人が欲しい!!
だけど、こうなると読者として気になのは、一体いつどんなタイミングでふたりが顔を合わせることになるのか?

もしかしてこの人かな? という勘違いやニアミスはあるものの、次から次へとベランダでのエピソードが出てきて、なかなか顔を合わせない!! 完全にジラされてます(笑)。
それでも読んでいて全然飽きないのは、土岐田と游のやり取りが穏やかでおっとりとしていて、すごく心地いいから。

土岐田に感化され、「私もガーデニングをやってみたいな」と游が言い出した
ときも、こんな感じ。





私だったら絶対に妄想が止まらなくなり、顔が見たくなります。
そう思うのと同時に、待てよ、ひとり暮らしだったとしても、お隣さんには恋人がいるかもしれないと考えてしまうでしょう。
特に、こんなふうにおしゃべりしている声が聞こえてきたとしたら。



これ、わかるなぁ。毎日仕事ばかりで遊びにも行かず、家にいるのは自分だけかもしれないと我に返る感じ。

このお話は、都会のマンションひとり暮らしならではの、干渉されたくはないけれど、ちょっと誰かと話したい。寂しくはないけれど、誰かがいてくれたらなおいい、みたいな微妙なニュアンスがよく表れていて、そこが魅力でもあります。

そしてやっぱり、こんなベランダライフを送りたいという憧れも!!
実は私も、狭いベランダに大きなココスヤシの鉢を並べ、手すりには鉢植えの花、プランターではバジルにルッコラと頑張ってガーデニングをやっていたクチなので(笑)。

だから、ときどき出てくる植物やガーデニングの豆知識に、そうだったのか!!と感心しっぱなしです。

こうして、少しずつ距離を縮めていく土岐田と游。
なんたって相手は、土岐田もよく見ている可愛い女優さんですからね。
芸能人相手にどんなお隣同士のお付き合いが始まるのか、夢と妄想はこの先も止まりそうにありません!!

レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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