「なかよし」からの挑戦
「なかよし」で連載されている作品を、すっかり大人になっちゃった私が手に取るときは、必ず頭の中に「架空の妹」を作ってから、ゆっくり時間をかけて読む。令和の今を生きる私の小さな妹がこのまんがを読んだら、どんなことを思って、どんな気分で次号を待つんだろう。いや、こんな妹フィルターなんて余計なお世話な気がするのだけど、「なかよし」で育った自分を忘れることができなくて、どうしてもやってしまう(そして楽しい)。
で、そんな期待を込めて読んだ『ギフテッド』は、「ああ、なかよしは今日も攻めてるわ! 最高だよ!」とうれしくなるような作品だった。とても野心的なエンターテインメント。なぜなら、取り扱うテーマがこれだからだ。
『ギフテッド』では殺人事件がたくさん起こる。しかも、どんな年齢のどんな人が読んでも「これはミステリー作品」と疑いなく言えるような本気のミステリー。
それもそのはず、原作は『金田一少年の事件簿』の天樹征丸。そして漫画は100名以上の応募者の中からオーディションを経て最終的に選ばれた雨宮理真。手加減なしに大胆で(これは、今も昔も、なかよしの美点のひとつだと私は思います)、きちんと少女まんがらしいフレーバーも漂うミステリーだ。
きれいだなあ。ミステリーの謎とキリっと美しい絵の組み合わせって相性がいい。
少年が受け継いでしまった忌まわしい「宿命」って何? あー、気になる!
ギフテッド=特別な才能
ある女性の転落死から『ギフテッド』は始まる。現場に颯爽とかけつけた刑事は……、
背景でキラッとお星様が飛んでるような美少年。彼は“天草那月(あまくさなつき)”。20歳にして警視庁の星と呼ばれる天草は、17歳でマサチューセッツ工科大学の大学院を首席で終了した超天才で、ついでに在学中に起業してバイアウトしたから金融資産が30億円ある。そしてそんな自分が大好き! 膨らみに膨らんだ設定が愛しい。
で、天草が目撃者から聞き込み捜査を行っているところに現れたのが、
高校生の“四鬼夕也(しきゆうや)”。四鬼は「これは殺人だ」「殺したのはこの男だ」と言い、現場にいる目撃者を指さす。
え! 展開はや! なんだキミは。たしかにこの男はめちゃくちゃ犯人っぽいし、真犯人に違いないと私も思うよ、でも、さあここからどう話を進めるの?
天草は天才的な頭脳を駆使して理詰めで犯人を追い詰めていく。そう、『ギフテッド』は、天草の推理力と、四鬼がすごい勢いで繰り出す「犯人はお前だ!」が合体したバディ系ミステリー。
でもどうして夕也は犯人がわかるのか。
これが四鬼に与えられたギフト(才能)だ。夕也はこの綺麗な目で今まで何を視てきたんだろう。
完璧なアリバイを崩してよ
四鬼がその目で視れば犯人は一発でわかるけれど、それだけじゃ事件は解決しない。だから、すべてのエピソードで天草の捜査と推理が必要になる。
ターゲットを見つけるのは四鬼の役目で、そのアリバイを崩すのは刑事である天草の仕事。
天草の真剣なまなざしも、天草の少し困った表情もとてもいい。はたして2人はいいコンビになるの……?
前途多難そうだ。それにしても、このページにいる主人公たちも、犯人候補も、みんな麗しく怪しい。さあ人殺しは誰なのか。天草が挑むトリックを、私も架空の妹と一緒になって解こうとしたけれど、ギリギリのところでわかりそうでわからなくて、半分正解で半分外れだった。犯人のワケあり感といい、トリックの難易度といい、絶妙だ。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。