主人公の名前をみて「あー読んでよかった!」と思う
『調理刑事の捜索ごはん』という題名と、その中身になんのズレもブレもないマンガだ。お料理上手な刑事さんのマンガかなーって手に取って、読み始めて10ページしないうちに「想像よりうんとそのまま!」とわかるのだ。こんなに貫き通せるんだ!? と驚いた。
まず主人公の氏名から紹介したい。
“調理(しらべおさむ)”さん。こんな名前に生まれてお料理しないでなにをする? しかも彼の勤め先は「大盛警察署」だし、彼の上司だって“大根源助(おおねげんすけ)”という。本作の警察組織に属する人々と事件関係者の氏名を確かめるだけで笑う。腹ペコ感でいっぱいだ。
調は、ところ構わず調理しまくる。
“みそな銀行”に押し入った銀行強盗とやりとりをしているときも、調は一品仕上げた。心の余裕がものすごい。
あ、でも、ちゃんと刑事としての仕事もしてるんです! というかコレが彼の捜索スタイル。
今にもお料理を始めそうな雰囲気ですけども、まさに事件解決にあたっているところ。ということで、毎話読み終わるたびにテレビの2時間サスペンスのスッキリ感と、お料理番組のほっこり感の両方が味わえる。おなかいっぱいだ。
しかも調が作る捜索ごはんはすべて創作(捜索)料理。「あ、食べてみたい」と思うシズル感に溢れている。彼のお料理風景とともに事件を紹介したい。
「事件を解決したきゃ調に飯を作らせろ」
ある日、事故を装った殺人事件が起こる。
この事件の犯人はホステスの“座行皮子(ざぎょうかわこ)”。「刑事コロンボ」のスタイルだ。
しらを切り続ける彼女を、調はどう追い詰めるか?
新米刑事“新舞ひかり(しんまいひかり)”による取り調べをのらりくらりとかわす皮子と、何かを考え中の調。事件の推理じゃなくて「献立なににしようかな?」って感じだけど……?
餃子の皮を使った捜索ごはんを思いついた模様。と同時に皮子の事件を捜索開始!
ちゃちゃっと手際良くひき肉を炒め、味付けしたあとバジルを散らし、同時に餃子の皮をパリッとオーブントースターで焼き……あ、巻末にちゃんとレシピがついているので安心してください。
「タイ風オープン餃子」のできあがり。おいしそう。皮子に「さあ君も召し上がれ」と差し出し、皮子は「ふん!」みたいな感じだけど、言われるがままひと口食べる。皮子素直。おいしそうだもんね。
すると、さっきまで秘密を隠し通していた皮子に変化が!
調の捜索ごはんを食べた皮子は「ある事実」を調たちに打ち明け、己の罪を認めてしまうのだ。こんなふうに捜索ごはんが犯人の心をめちゃくちゃ動かす。
調が料理をすると、事件が不思議と解決してしまうのだ。ミラクル!
私も本作の捜索ごはんを一品作ってみた。凶器がどうしても見つからない謎の撲殺事件を捜索する「File 3 あっさりと消えた凶器」で調が作った「あさりと茗荷の混ぜごはん」だ。
この食レポがものすごくおいしそうだったんですよね。完成したのがこちら。
ジューシーなあさりと、茗荷のシャキシャキ感と、プチプチしたトビッコに揚げ玉のサクサク感。食感が楽しい!
楽しいだけじゃない。おいしい。「あさりと茗荷の混ぜごはん」をひと口食べたあとのみんなのファンタジックな反応を読めばわかる。
すさまじい衝撃だ。納得のおいしさだった。
あと、本当にちゃちゃっと簡単にできた! これなら事件現場でも作れそうだ。実際にやってみると、ちゃんと設計されて「おいしい」とわかったうえでマンガに登場している創作レシピだなあと思う。
ということで、調の作る捜索ごはん、創作料理としてもめちゃ楽しくておいしいです。ごちそうさまでした。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。