金メダル候補JKが求めるごはん
トップアスリートを支える食って気になりませんか。激しい運動量とその競技に求められる体型を作るためのごはんは、きっと質も量も桁違い。
たとえば水泳選手ならば毎日3000キロカロリー必要。そして栄養バランスも考慮しないといけません。
つまり、ただのダイエットとは違うでしょうし、なにより目標は「数年後に控えた次のオリンピック」だったりするわけです。長期戦。1ヵ月だけ無理すればいいってもんじゃない。
そんなアスリートたちのためのごはんを『五輪の女神さま ~なでしこ寮のメダルごはん~』の主人公・小湊料(こみなとりょう)は毎日毎日作ることに。小湊は料理上手な少年で、姉や妹のために毎日すばらしいごはんを振る舞ってきました。
料理だけが取り柄の小湊は、スポーツ特待生が暮らす学生寮で炊事担当として働くなら、文武両道の名門校へ特別入学できるのだそう。単に料理を作るのではなくて「料理を学ぶ」なのがポイント。
でもその学生寮は……、
女子寮! 金メダル候補生JKたちが満足するごはんって何? というか、小湊が全然歓迎されてない。
アンタなんて認めない!
まあ、困惑すると思います。よくわかんない男の子が急に「炊事担当です」って登場して同じ寮で暮らし始めるのなんてハプニングの予感しかない(実際いろんなハプニングが起こります)。
小湊が一つ屋根の下で暮らす未来の金メダル候補生たちはこんな感じ。
女子テニスの“夏木日鞠”。幼い頃からメディアに取り上げられてきたテニス界の国民的アイドル。小湊と同じく高校1年生。
女子体操の“諸刃かおる”。こちらも高校1年生。小湊の顔がお尻に埋もれても顔色ひとつ変えない豪快さがかわいい。
年上もいますよ!
女子柔道の“神崎京子”。彼女は高校2年生で、小湊にきわどくちょっかいを出します。
そして女子飛び込みの“一瀬結月”。高校1年生。涼しい顔して1人でなんでもできちゃいそうな天才少女です。
みんなかわいい。こんな子たちに囲まれてよかったね、小湊! ……とはならないんですよ。炊事担当として最初に小湊が作ったのは、大きな大きなケーキ。自分の料理の腕を見せつけるために作りました。
それなのに、自信満々の小湊をよそに彼女たちは一口も食べてくれないのです。小湊のプライドはズタズタ。でもここで諦めたら特別入学だって取りやめに……。そもそも食べてもらえなかったことがとても悔しい。
金メダル候補生の女の子は、どんな料理なら食べてくれる? 小湊は彼女たちがどんな生活を送っているかをリサーチします。
やがて小湊は自分の失敗に気がつきます。小湊をこの学校に送り込んだ父親は「料理を作るべし」じゃなくて「料理を学ぶべし」と手紙に書いていましたよね。ただおいしいものを作るのではなく、相手が本当に必要とするごはんを作ることを小湊は学んでいくんです。
勝つために食事制限をしている日鞠たちは、糖質と脂質に偏ったケーキは食べられません。料理の腕を見せつけるために作ったケーキは、彼女たちのためのケーキではありませんでした。
ところが、小湊は再び大きなケーキを作っちゃうんです。あんなに反省していたのに! もちろん日鞠だって激怒。懲(こ)りないやつだなと怒りにまかせてケーキを一口食べた日鞠は……!
ものすごい反応。全身で味わってる。
ずっと我慢していたケーキですもんね、膝がガクガクするくらいおいしい。でも普通のケーキとは何かが違う。どこが?
小湊はいろんな工夫を重ねてカロリーオーバーにならない「太らないケーキ」を作ったのです。カロリーコントロール中でも気兼ねなく食べられる、彼女たちのためのケーキ。魔法だ!
この太らないケーキの快挙で女子寮から追い出される危機を脱した小湊。
ケーキであんなに全身で喜びを表現していたのに日鞠はやっぱり手厳しい! でもトップアスリートですもんね、食にこだわるのは当然か。
4人の金メダル候補生は競技も個性もばらばら。きっと食の好みも、胸に秘める思いも、それぞれ違うはず。さあ、小湊はみんなをどうやって満足させる?
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。