スーパーマンのグルメ漫画なんて一体、誰が思い描いたでしょうか。それも日本の一般的なチェーン店をモチーフにした組み合わせなんて。
雑誌イブニングで連載中の『SUPERMAN vs飯 スーパーマンのひとり飯』は、雑誌掲載時に見かけるたびに「関わる全ての関係者は正気なのかしら!?」と思っていたタイトルでしたが、こうしてCOMICSの形になり、しっかりクレジットに「監修:DC COMICS」と刻まれているのを見ると、私の幻覚ではなかったんだなと安心しました。
さてそんな本作は、SUPERMAN vs飯とある通り、“基本的には”スーパーマンの視点から我ら日本人にはお馴染みの外食チェーン店(をモチーフにしたお店)を愉しむお話なのですが、贅沢なことにスーパーマンだけではなく、DC COMICSが誇るジャスティスリーグの面々が普通に登場します。 なのでスーパーマンのネタだけでなく、バットマンやワンダーウーマンも含めたジャスティスリーグのキャラクターたちのネタも登場するのでトクした気分になるでしょう。
では、スーパーマンがどのように日本のチェーン店でのよもやま話を繰り広げるのか。だって彼はアメリカのヒーローじゃないか。って思うところですが、答えは簡単。
「アメリカ(メトロポリス)から日本へ飛んでいく」
で解決しています。なるほど?
スーパーマンの最高時速は800万km/hの飛行速度なので、アメリカから日本まではおよそ3秒で往復できちゃうわけです。さすがスーパーヒーロー。
本邦の「サラリーマン」たちがランチに繰り出すよりも、オフィスビルからエレベーターを使って街に出るよりも容易に海を越えることができるので、日本なんかすぐそこ。太平洋まわりでも大西洋まわりでもあっという間。これは羨ましい限りです。
ゴッサムシティでジャスティスリーグの会議をしていても、サクッと日本に飛び、あの500円で並天丼がいただける天丼チェーンでご飯を食べてから、テイクアウトでアクアマンやらバットマンたちの分の天丼を買って帰ったり、バットマンを背中に乗せて、チキンカツを卵で閉じた定食が人気のあの和定食チェーンに連れて行ったりと、とにかく自由。清々(すがすが)しいほどに自由です。
メトロポリスはお昼でも、数秒で日本についちゃうから時差で日本は夜。お酒も出る時間です(でも飲酒飛行はしないそうなのでノンアル。ヒーローの鑑です)。
地理的な制約を一切受けないスーパーマンならば、関東圏近郊のチェーン店のみならず、彼がなんらかの形で情報を仕入れることができれば、日本各地のローカル飲食チェーン店にも足を運んでくれるはず!と期待をしてしまうのです。
静岡県にしかないあの炭焼きハンバーグレストランのチェーンとか、福岡のうどんのあのお店とか、彼が飛んで行くべきお店は日本全国津々浦々に山ほどあります。
そういった観点からすると、本作は日本人が普段胃袋を満たしている慣れ親しんだお店の魅力を、「異邦人の目を通して再発見する」というものすごい変化球の作品とも言えます。だってCOMICSを読んだ後に、黄色地に赤字の焼き鳥チェーン店に足を運んでしまいましたからね。
この本邦の食文化への再発見と同時に、DCEU、DCエクステンデッド・ユニバースの世界観を踏まえたコネタが息をつかせぬほどのテンポで展開されているので、DC好きにも思わずニヤリとしてしまう仕掛けもたくさんあります。DC COMICSの懐の深さにも乾杯です。
これまであまりDCEUに触れていなかった読者の方でも、本作をきっかけにジャスティスリーグのヒーローたちに親しみを持って映画に触れるきっかけになることもあるのではないでしょうか。
私の個人的な楽しみとしては、本作第1話の冒頭に出てきて、COMICSの表紙にもなっている、黄色に黒字の看板で有名なガッツリ系のラーメンとの詳細なバトルです。作中ではスーパーマンの感想自体はまだお預けになっていますが、いずれ正式なvs回として出てくるであろう回がいつなのか。
コミックDAYSをチェックしながらリアルタイムで追っていこうと思います。
レビュアー
静岡育ち、東京在住のプランナー1980年生まれ。電子書籍関連サービスのプロデュースや、