好きな人の特別になりたい
すでに自分にとって特別でしょうがない人に「あなたのことが好き」と事実を伝えるのは、どうしてあんなに勇気がいるのだろう。ものすごく明らかな事実なのに、言ってしまうと世界が変わるから、言いたくてしょうがないまま「言えない~~」と悩む時間の長いこと長いこと。
だから、思い切って告白した人に全力で拍手を送りたい。がんばったね、って。
『今日、世界一の告白を。』に収められた4つの告白の物語でもみんなそれぞれがんばっている。男の子も女の子も、好きな人の特別になりたくて勇気を振り絞って告白する。みんなピュアでかわいい。ふんわりと花が咲くような告白がそろってます。
バレンタイン、どうしよう?
本作では四季ごとの告白が描かれています。冬の告白といえば、そう、バレンタイン。絶対バレンタインがいい。2月14日って年間告白件数マックスな日だと思う。
「Ep.1 それは、特別じゃない告白」はバレンタインに告白をした女の子の物語です。
ヒロイン“直”の部活は料理部。料理部のみなさんは毎週水曜日にお菓子を作って運動部に差し入れとして配っています。
他の子が作ったカラフルなマカロンは運動部員の男子たちに大人気。直が作ったのはハート型のクッキー。お菓子作りが苦手な私からしてみれば満点のかわいさなんですが、マカロンの華やかさに押され気味。直は、この飾り気のないクッキーたちを手に、好きな人を待ちます。
運動部員じゃないのに必ずお菓子を食べに来る帰宅部の“瀬尾”。瀬尾だけは、直のお菓子を「おいしい」と褒め、直のお菓子を目当てに、差し入れタイムに登場するんです。
インスタ映えするようなキラキラしたお菓子は作れないけれど、直はバレンタインに告白をしたい。
みんなのように凝った可愛いお菓子をがんばって作る? それとも? 瀬尾が一番喜んでくれるバレンタインの贈り物ってなんだろうって彼女なりに一生懸命考えた答えは!
ボトル! 中身は読んで確かめてください。瀬尾への想いがつまっています。
きゅんとするし、自分の想いにリボンをかけて好きな人にそっと手渡すって尊いなあ。ホロっとくる。
秋のベスト告白シチュエーションは?
冬だけじゃなく他の季節も枕草子ばりに「この季節といえばこれ!」と絶妙なイベントを設定して告白物語が展開されます。
夏は花火。昔告白してくれた人との束の間の再会を描く「Ep.3 夏の終わりと消えた告白」。
これから大学受験だって待っているし、やがて再び遠くに行ってしまう彼。あの頃に戻れるわけじゃないと思いつつも、浴衣を着て花火を一緒に見上げる。告白するでしょ、するしかない!
春は卒業旅行。「Ep.2 告わないって決めたから」は、ずっと告白を我慢してきた女の子の物語。
同じ吹奏楽部でずっと一緒だった好きな人と卒業で離れ離れになる前に、部の卒業旅行で桜満開の河口湖のコテージに。みんなといるのも楽しいけれど、夜に2人で桜吹雪を見ながら散歩。ああ、いい。たまらん。
で、秋です。本作のラストを飾るのが秋の物語。秋のベスト告白シチュエーションって何でしょうね? 芋掘り、楽しいけどちょっと違うな。秋って悩ましいな?と考えていたら「Ep.4 告白は、ハッピーエンドの後で」が素敵な答えをくれました。
キャロットランド=テーマパークです。そうそう、秋ってお天気がいいし、日暮れ後は寒いから暖かい格好をする。マフラーとコートでモコモコになった女の子って本当にかわいいもんなあ。テーマパーク最高。
しかし「3回目の告白」って? ヒロインの“美弥”は、“聡真”に何度も告白して「好きな人がいるから」と断られていたんです。告白1回するだけでも「がんばったね」と思うのに、3回もチャンレンジした美弥は強い。夢が叶って本当によかったね。
でも、そのぶん不安がつきまといます。聡真は好きな人を諦めて自分を選んでくれたの? じゃあ、その好きな人と聡真が実はチャンスありだったら、自分はどうすればいい?
大好きな聡真を本気で幸せにしたい。美弥の優しい選択とキラキラ輝くテーマパークの対比が切ない。おねがい、ふたりで幸せになって~~~!
どのエピソードでもそれぞれの恋を応援しながら読むので、告白で世界が変わる瞬間にギュッと目を閉じてしまう。そして「告白してよかったね」とパチパチ拍手したくなる。最初から最後まで切なくてハッピーで優しい気持ちが続きます!
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。