待って!
魅力がグイっと目の前に迫ると、人は「待って!」と言ってしまう。『カワイイなんて聞いてない!!』も「待って!」な場面がいっぱいだ。私は年下好きの自覚がない。でもこれはいい。年下男子の良さが解像度高く描かれている。
まず、盛大なギャップ萌えが展開される。
この感じの悪さ! こっちはですます口調で話しかけてるのに「あんた」呼ばわりで、しかも被害者意識をバンバン出してくる。何様? 本当に心の底から「なんだこいつ?」と思うのだけど……?
だめだ、すんごいカワイイ! あんなに印象最悪な子だったのに?? 待って、双方ともにどうしちゃったの??
年下好きにもいろいろある
ヒロインの“まどか”は年下男子が好き。
少女マンガを読みながら「っかぁ~~~~」と叫ぶ気持ち、わかるよ。
ここで「あ、そうか」と思うのが、年下男子のバリエーションだ。年下男子の多様性に気づく。
ほら、お饅頭だって、こしあんと粒あんじゃ味も食感も異なりますよね、あれと同じです。粒あんのつもりでパクッと食べたらこしあんだったときの「話がちがう!」感じを思い出してください、まどかのショックに共感できるはず。
まどかが好む年下男子は以下のような感じ。
チワワ系、ポメラニアン系、柴犬系。品種はいろいろだけども、とにかくカワイイ仔犬のような男子がまどかにとって至高の存在。
だから、いくらイケメンの年下男子だからといって、こんなのは全然好きじゃないのだ。
まどかの実家の食堂で働く新人バイト“志倉くん”。ご覧の通り顔は良いのだけれどもひたすら態度が悪く、しかもなんか自意識過剰。顔はホント良いんだけどな……。志倉くんの感じの悪さにうんざりしたまどかも「お前など好みではない」ときっぱり宣告する。いいぞ!
でも志倉くんの態度の悪さには理由がある。
かっこよすぎるがゆえに女子から盗撮されたり、非人道的な目に遭っているのだ。
見過ごせなかったまどかは盗撮女子高生に直接注意して追っ払う。お姉さん、強くて優しい。
ここでやっと志倉くんは「この人は違うのだな」と気づき、自分の態度の悪さをまどかに謝る。
ちゃんとごめんなさいができる男だった! よかった!
ごめんなさいを言った後の志倉くんの顔、めちゃくちゃかわいい。そしてそのあとの抜けっぷりもかわいい。あれ? ひょっとして超絶かわいい年下男子なの……?
実は悶絶するほどかわいい年下男子だった
その後も志倉くんを狙う外道女子高生が次々と現れるが、まどかは志倉くんが本気でいやがっていることを知っているから、お姉さんモード全開で彼を守る。で、自分に下心を見せないまどかに志倉くんはどんどん心を開き、同時に抜けっぷりもまどかに晒すことになる。このボケボケ感がとてもかわいい。
スマホをなくせば鍋の中を探すし、道で出会った野良猫を追っかけてどこかに行ってしまう。
忘れられないよ、かわいすぎるだろ! 自分のドジな姿を散々まどかにみられた志倉くんのこの顔。あと、ホクロ、いい位置についてるね! ああどんどん可愛く見えてくる。つまり最初は全然可愛くないと思っていた志倉くんの真の姿は、まどか好みの「かわいい年下男子」なのだ。
とはいえ、女性関係で怖い思いをした志倉くんをまどかが気遣うあまり、2人の距離は近くなりそうで近くならない。
このバッとまどかが引く感じがおもしろいんだよなあ……。
でも志倉くんのド天然な可愛さは止まらないし、まどかとの心の距離は縮まるばかり。そして好きになっちゃいけないと思えば思うほど気になるもの。
待って、いつのまにか下の名前をさん付けで呼ばれてる! 最初は「あんた」だったのに。「年下男子のここに胸が震えるの!」が詰まったマンガだ。こんなかわいいシチュエーションがあったら最高なのにな~と夢見る展開がフルセットで揃っている。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。