デザート × レビュー × 男子高生!
いい香りのバスオイルを選ぶときと「デザート」のマンガを読むときのマインドはだいたい一緒だ。どちらにも「パーッと元気になりたい!」という私のニーズをちゃんと満たしてくれる優しい頼もしさがある。そう、無条件に元気が出る。
もう1つ、元気をくれる存在を知っている。宝塚歌劇団のレビューだ。レビューとは、物語のある芝居とは違い、1つのテーマに沿って、歌とダンスをメインに構成される舞台のことで、宝塚では芝居と2本立てで上演されることが多い。「すべてを忘れて踊りましょう!」と言わんばかりの勢いで歌と踊りとキラキラが洪水のように舞台から溢れ、やがて大きな羽飾りを背負ったトップスターが大階段から降りてきて……圧巻だ。私はまだまだ新参者だけど「ひたむきで美しくてきらびやかで、観るとなぜだか全身ピッカピカになります」という点はお約束できる。
で、『レビュダン!』はデザートで連載されているイケメン男子校マンガだ。
彼らは演劇部員。そして挑戦するのはレビュー。黒燕尾姿でビシッと踊り、男子校だから時には彼らが娘役も演じ……男子高生と中性的な魅力を放つ謎の教師が「ひたむきで美しくてきらびやか」な世界を目指して奮闘する。つまり読むと元気になる。心も肌もピッカピカだ。
活動していない演劇部の部室で……
名門男子校“西山学園”に通う主人公の“夢城まな”は演劇部の部室に入り浸っている。が、演劇部は活動している気配がない。つまり、無人の部室をいい感じに拝借してゴロゴロしているのだ。
もはや暮らそうとすらしている。いろいろと事情があるのだ。
そこへ現れるのが……、
演劇部の顧問・“紫ノ宮先生”。ジャージに白衣なのにめちゃくちゃ王子に見えるし、1人だけ存在感が違う。若い男性かと思いきや女性。
勝手に部室に居座り、なんなら生活拠点にしそうな勢いの“まな”を一瞥して紫ノ宮先生はある命令を下す。
まあ、やんないよね。紫ノ宮先生ってば無茶なことをおっしゃる。
ならば演劇部は廃部。“まな”にとって居心地が良くて家のように大切な部室も無くなってしまう。(というか……紫ノ宮先生、ほんと綺麗だなあ。このマンガを読んでいると紫ノ宮先生の別次元な麗しさにちょいちょいページをめくる手が止まる)
自分の居場所を守りたい"まな"は奉仕活動の演劇をやることに。
が、本番は約1週間後。そしてキャストは紫ノ宮先生を入れて4人。間に合うの?? ということで、演劇部が始動する。
継母役もシンデレラ役も男子高生な「シンデレラ」
紫ノ宮先生が突貫工事で仕上げた作品は「シンデレラ」。
かわいらしい。で、“まな”たちはやっつけ仕事で終わらせるぞと思っていたのに、客席で待つおじいちゃんおばあちゃんを見てスイッチが入るわけです。いい子たち。
紫ノ宮先生もこの通り。その衣装どこから持ってきたのですか、そしてなんでそんなに背景の薔薇や王子姿が似合うのですか。というかお名前に「紫」が入っていますね。ヅカオタ各位は「先生って、まさか……?」と夢が止まらなくなるはずだ。
でも宝塚を知らない人でもこのマンガはとても楽しい。紫ノ宮先生はぶっつけ本番の直前に各演者に的確な指示を出す。シンデレラ役の"まな"に出した指示は?
ハイ、と私が返事をしたいくらいだ。
魔法にかけられて
さあ本番。男の子たちがドレスを着て演じるシンデレラはぎこちないけれど一生懸命でとても素敵だ。そして本演目の"スター"こと紫ノ宮先生が演じる王子と、"まな"が演じるシンデレラが「デュエットダンス」を踊り始めると……。
ああ~~~! 紫ノ宮先生は"まな"にも観客にも私たちにも魔法をかけてしまう。
こんなキラキラの魔法をかけられて、スポットライトを浴びてしまって、観客からの拍手を浴びて、一度っきりのレビューで終われる人がいるだろうか? "まな"たちは演劇部にのめり込む。
でも待って。部員は3人。
演劇部を存続させるために部員募集から始めないといけない。「女装?」なんて笑う子だっている。学校だって「何やってんの君たち?」という感じだ。
でも夢はあきらめたくない。この一生懸命さがアツいのだ。
私たちの紫ノ宮先生も彼らを本格的に指導することに。(まな達が何を踊っているかはお楽しみに)
本作にはいくつかモデルになったものがある。まず「宝塚歌劇団」。元・宝塚歌劇団花組の男役、天真みちるさんが企画協力として参加されている。そして名古屋の東海高校。こちらには男子生徒だけでレビューを演じる「カヅラタカ歌劇団」がある。どちらも夢と青春の結晶で、本作の魅力もそこだ。
つい応援したくなるキラキラがつまっている。そしてトキメキがある。よって、パーッと元気が出る。
魔法をかけ続けてください! 紫ノ宮先生!
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。