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2020.01.31

レビュー

コワモテ関西弁男子×真面目女子。最凶ギャップ男子にまさかの胸きゅん!?

異分子な男の子

15歳の集団が作っちゃった異分子、それが『山口くんはワルくない』の“山口くん”です。

大人ではないけれど子供でもない15歳たちのコミュニティにおいて言葉遣いや表情や容姿が違っていると、つまり「ノリ」が周囲と違っていると、それだけで異分子扱いされる確率は上がる。

山口くんは、訛(なま)りのない言葉で会話する集団の中で唯一コテコテの関西弁を話し、目つきが悪くて、無口で、教室に友達はいない。そんな彼に「ヤクザ」なんていうレッテルを無思慮に貼っちゃう愚かな感じは、15歳っぽさ満点だ。身に覚えがありすぎる。



自分たちと同じ高校に入学してる時点で自分たちとほぼ同類だと察しろよと思うのだけど、やっぱり「怖い」認定がつくと、怖い。



うん、怖いね。特に自分が聞きなれない「訛り」は、相手がどういうニュアンスで言っているのかわかりづらいから、緊張する。

『山口くんはワルくない』は、不幸なことにワルのレッテルを貼られまくった男の子と、そんな彼と仲良くなりたい女の子のお話です。近づいては離れ、でも近づいて、優しい気持ちになる。ドキドキするし、かわいいし、15歳って無茶苦茶だけどいいなあ。

デタラメな噂とのギャップ

高校1年生の“皐(さつき)”は、通学中にチカンに遭っているところを同じクラスの“山口くん”に助けてもらいます。逃げ出すチカンに「待てコラ」「下りてこいやオッサン」と怒鳴りつける山口くん。そんな山口くんのあだ名は「ヤクザの山口」。皐も「この人とは絶対関わっちゃいけない」と思っていた相手でした。


助けてもらったとはいえビクビクしている皐に、山口くんは「ヤクザと一緒におるんは嫌?」と声をかけて、困ったなあと笑います。ここで皐は彼が教室で噂されるようなワルじゃないことを理解するんです。こうしてギャップ萌えの山がガツンと訪れますが、この後もギャップの波がずっと襲ってきます。



2人は駅で言葉を交わしたけれど、教室での山口くんは皐を気に掛ける様子なし。でも黙々と予習をしてる。思わず「ほんとだ優等生…」と独り言ちた皐に、山口くんは?



なんでそんな目つき悪いんだ! でも、そのボソッと囁く感じ、いい! すごくいい!

だから皐は「明日も同じ電車にならないかなぁ」と願うんです。教室とは違う山口くんに会えるから。恋とかそんなんじゃないかもしれないけれど、この人のことをもっと知りたいから。



通学中の電車の中で「わたしと友達になって…っ」と思い切って告げて、晴れて2人は「友達」になります。

みんなに知ってほしい

「山口くんとわたし」と並行して「山口くんとみんな」の物語も進むところも本作の面白さです。



山口くんはワルじゃないし、バカじゃない。「あなたたちは間違ってるよ(こないだのテストで私は赤点で、山口くんは満点なんだけど)」って真正面から言っても、言葉通りに受け取ってくれる人なんていない。うわー、教室めんどくせ━━! でも、これが皐や山口くんの世界。



だから皐は態度で宣言をするんです。そんな皐の「山口くんはワルくない作戦」は、少し上手くいったかと思えば盛大に失敗したり、決して順調には進みません。生々しい。



山口くんの「かばってくれなくていいから」と皐を突き放すような言葉に、皐は? 

そして皐と山口くんの関係性も少しずつ変わってきます。



遊園地の花火のドオンって効果音がいい仕事してる……。皐の無防備かつ失敗も多い学校生活と、その傍らで怖そうな顔をしている無口な山口くん。2人がもっと仲良くなってほしいです。山口くんがワルくないことは我々みんなが知ってます。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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