バーチャルリアリティの「リアリティ」って?
“バーチャルアイドル”や“VRアイドル”という言葉を使うとき、「バーチャルってなんなんだろうな」と考え込んでしまう。姿は確かに「仮想」のものだけど、仮ではないリアリティがすごくあるんです。あのリアリティはどこからくるんだろう。
2019年の東京ゲームショウで、とあるアイドルグループの女の子にインタビューをしました。彼女の姿はCGで、でも中身は「生身の女の子」で、だから“バーチャルアイドル”と呼ばれたりします。画面越しに話せば話すほど、歌って踊る姿を見れば見るほど、「ああ本当にいる」と感じました。
あの独特のリアリティや不思議な存在感は一度ハマると癖になると思う。
『Hop Step Sing! ~VRアイドルストーリー~』も、実際に活躍するVRアイドルたちのコミック。
だから、本作を読んだあとは、ぜひ“Hop Step Sing!”の公式サイト を見てほしいです。プロモーションビデオが可愛い。そして、なんともいえない不思議な「リアリティ」がある。
人見知り……でも、歌が大好き!
主人公は3人の女の子たち。まず、“虹川仁衣菜(にじかわにいな)”は歌うことが大好きな高校1年生。
小さい頃にテレビで見たアイドルの歌に感動して、自分でも歌うことが大好きになった女の子。抜群の声量で気持ちよーく歌っているけれど、悩みがあります。
いろんな人に「声が大きすぎ」と言われて、すっかり人見知りなんです。でも、広い場所で、のびのびと歌いたい。なのに人には聞かれたくない……そんな仁衣菜の事情を知ったクラスメイトの“椎柴識理(しいしばしきり)”は、「広くて誰にも聞かれないところ」に仁衣菜を連れて行くことに。「広くて誰にも聞かれないところ」って?
ここです。
異世界もの? ちがいます。
VR(バーチャルリアリティ)の空間でした。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)と呼ばれるVR専用のゴーグルをつけて、360度まるまる仮想空間を体験できるんです。最近だとOculusシリーズを持っている人が周りに何人かいますが、みんなVR空間で楽しそうにお喋りしています。
識理はバイト先のカラオケボックスにあるVRルームに仁衣菜を連れてきて、VRの「広い世界」で目一杯歌わせてあげたのです。「プロテイン好き」というプロフィールもアツいけど、識理ちゃんはホント面倒見が良くて優しい子。
で、そんなVRルームの同じフロアには、通称“お姫様”が暮らしています。
“箕輪みかさ(みのわみかさ)”。カラオケのVIPルームを自室に改造して引きこもり、人気生配信主をやっている中学生。みかさの勢いと企みによって、仁衣菜たちに“VRアイドル”としてステージに立つチャンスが巡ってきます。
人前で歌えない仁衣菜、表に出たくないみかさ。でも歌いたい、アイドルはやりたい! そんな夢がVRだったら実現するかもしれないんです。
夢物語?
「アイドルになりたい女の子が、VRアイドルでデビューする」は、現実でも絶対不可能な話ではありません。
準備さえ整えれば可能です。アバター(VR上での姿)も自作可能。
個人でもセンスと環境があればクオリティの高いCGは作れます。でも「中の人」は、生身の人間です。歌って踊れる体力と、歌とダンスのスキルが求められます。
だからそれ相応の努力が必要になります。この辺りは生身の姿で活躍するアイドルと一緒。アイドルのライブを見ると泣けてくることがあります。ステージで可愛く歌って踊る彼女たちの向こうに「夢と努力」を感じるから。
まさにこれ。おでこにゴーグルくっつけてるのがめちゃ可愛い。ステージ上の姿はバーチャルだけど、女の子の個性や、アイドルになりたい気持ちや努力には「リアリティ」があるんです。だから応援したくなる。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。