昔、一度だけホストクラブに連れて行かれたことがあります。そのときの印象が最悪だったせいか、ホストに対して必要以上に厳しい目を向けてしまう自分がいます。特にナルシスト発言を聞く度にこう思います。よくまぁ、そんな小っ恥ずかしいこと言えるわ! こっちが赤面するわ!
歌舞伎町のホストクラブ「BLUE・BLOOD(ブルー・ブラッド)」2代目店長、白鳥神威(しらとりかむい)は、世界一美しいイケメンサイボーグと呼ばれるだけでなく、とんでもない自画自賛型ナルシスト。
歌舞伎町を歩くだけで人々の目を奪ってしまうので、「俺に見とれている間、相手の時間を拘束している。夢の世界への監禁罪に問われないだろうか」と悩みます。
それだけでなく、「このオーラ、流石に病気かと思って病院に行ってみたら、女医と看護師が全員、俺に見とれて病院が機能しなくなって出禁にされちゃったよ」って、自分で言う?
しかも、カリスマホストにありがちな格言も、神威は大好きです。
な~に言ってんだか、プププと笑いたいところですが、ついついネガティブなことを考えてしまう私は、この言葉に素直に頷いてしまいました。
あれっ、私もカリスマホストの術中にハマり始めてる?
そんな完璧な神威も、1人になるとちょっと様子が変わります。
例えば、後輩へのコメントを思い出しては、「ちょっと泥臭くてファンタジーが足りない」と自分にダメ出しをするのです。なんとも可愛いいカリスマ。
前半は、こんな感じで神威の魅力が溢れているのですが、さらに面白くなるのは赤ちゃんが登場してから。
カリスマホストの部屋の前に置き去りにされたベビーカー。このいかにも!な設定に、「若気の至りで、遊びが過ぎた独身男子の子育て奮闘記」という、ひと昔前に流行った設定を想像しがちですが、ちょっと違うのです。
神威は、自分の子ではないと知りつつも、何かよほどの事情があるのだろうと暫くの間、赤ちゃんを育てることを決意します。
前半のナルシーな神威とのギャップに、思わず笑いが込み上げました。
しかも神威は赤ちゃんにスーツを着せ、一緒にホストクラブに出勤するのです。
運悪く、この日やって来た瀬理奈は、大金を落としてくれる太客ではあるものの、「痛客四天王」と呼ばれる問題ありのシングルマザー。赤ん坊は、見るのも話すのもNGオブNG。そこで瀬理奈は、あることがきっかけで大暴れします。
普通なら瀬理奈は、つまみ出されるか警察に突き出されても仕方ないのですが、神威とホスト達は高度なコミュニケーション能力と連携プレイで、鮮やかに解決します。それもひとえに、瀬理奈が後悔や寂しさを抱かないようにという思いやりから。
実は前半にも、そんなシーンがありました。酒に酔って暴れる男性客を警察に通報しなかっただけでなく、罪悪感も与えないよう対処したのですから、神威達はとんでもない接客スキルを持った神ホストなのです。
初代店長の男爵を始め、出てくるホスト達がそれぞれ個性的で面白キャラなので、とにかく見ていて飽きません。
原作は元ホストの小説家、猫梅沢めろん氏の同名小説。漫画も元ホストの川口幸範氏というホスト界を知り尽くした2人がタッグを組んでいるので、単なる上辺だけの話ではなく、その奥にある世界感も滲み出てくるのでしょう。
こんなホストクラブだったら行ってみたい!!
次回は、神威をはじめとするホスト達のやり取りと、赤ちゃんホストの活躍を見てみたいと思います。
特設ページはこちら⇒ https://yanmaga.jp/c/kidsfire/
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp