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2019.07.13

レビュー

リストラありきの左遷!! 新天地で衝撃のサラリーマンとヤクザの二重生活

あのとき、違う選択をしていたら、もっといい人生だったかもしれない。誰しも一度は、そう思ったことがあるのではないでしょうか?
しかし、その逆の転落人生をわざわざ想像する人は少ないと思います。だからこそ、人の不幸は見たくなる!

たった1つの判断ミス、選択ミスが負のスパイラルを引き起こし、身動きできなくなったとき、あなたならどうしますか?

狛江光雄は、東京の中堅広告会社に16年勤めるごくごく普通のサラリーマン。ある日突然、九州のQ支店へ転勤を言い渡されます。肩書きは支店長。

しかし、支店閉鎖とリストラありきの左遷だったのです。
この転勤を決めた上司の高峰は狛江の同期で、副社長の行き遅れの娘と結婚したことにより部長になれたという世渡り上手な男。
私としては最も嫌いなタイプなのですが、狛江は心を押し殺し、無様な姿を見せてまでも会社に残りたいと懇願します。これもすべて、妻と来年、受験を控えている娘と30年もローンが残っている家のため。それなのに家族は、狛江に対して無関心なのです。

もうこれだけで、胸が締め付けられる思いでした。世の中のお父さんって、こんな感じなのかしらと。
それでも狛江は、東京に返り咲くという希望を抱きつつQ支店に赴任します。


支店の戦力は、ぼんやりした女子事務員(22)と、見た目も仕事もいい加減な男子社員(27)の2人だけ。前途多難な門出ですが、「俺のチームだ!」と覚悟を決めた狛江は、お手本を見せようと自ら率先して営業活動をします。

ところがクライアントは、消費者金融や風俗店。早い話が堅気ではないのです。
こうした実態は、地方の広告代理店で働いたことがある知人に聞いていたので、リアルだなぁと感じました。

そして運の悪いことに大きなミスが起こります。それは取引打ち切りを告げられた下請けによる意趣返しなのですが、負の連鎖は、次から次へと負を引き寄せ、狛江は人生のどん底へと突き落とされます。
なんたって相手にすることになるのは ヤクザなので、エグいのです。

 

さすがにここまで来ると、バカだなぁ狛江、こんな会社さっさと辞めちゃえばいいのにとイライラします。長年、フリーで仕事をしてきた私は、ギリギリまで我慢はするけれど「いつだって辞めてやる!」という覚悟を持っているので。

ところが、これは女性特有の考え方で、男性は「会社を辞めないということが最優先」なのだという記事を思い出しました。特に家庭を持つ男性は、家族のために必死に我慢しているというのです。お父さんって、本当に大変なのですね。

なかなかダークでヘビーなシーンが続いたので、この先どうなるのかと心配しましたが、気づけば狛江は「伯父貴(おじき)」と呼ばれる立場に……。
いやぁ、これには驚くと共に笑いました。

もともとこの漫画は、『Iターン』という小説が原作なので、話の展開はスピーディーだし、裏社会のこともしっかりと描かれていてリアリティがありました。

7月からテレビ東京系で、ドラマ24「Iターン」も始まるそうです。
しかも、ムロツヨシさんと古田新太さんのW主演というだけでも期待が高まるのに、クズ男をやらせたら天下一品の田中圭さんも出るじゃありませんか。
こんな芸達者な3人が揃うドラマが、面白くないわけがない!!

狛江のように、ここまで一気に転落する人生は滅多にないでしょう。
とはいえ、このままで終わるはずもなく、狛江がここからどうやって人生を覆すのか、この先が見ものです。

アイターン(1)

原作 : 福澤 徹三 (文春文庫刊)
著 : 大槻 閑人

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レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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