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2019.06.09

レビュー

アラサー教師&男子高校生の禁断ラブ。初恋相手の弟にときめく2度めの初恋

これはゆっくり読まないとヤバいやつ

読みはじめて「おもしろい」と思った次に、「このまま行くか」「あとにするか」を選ぶときがある。冷たいビールを飲み干すようにガッと一気に読みきって「ぷはー」となるか、ボタニカルジンの小瓶のように夜寝る前まで待ってゆっくり読むか、どちらが心に効くのかを考える。『私の町の千葉くんは。』の場合はというと。


この感じ。ここで「どっちにしよう」と本当に迷った。一気に読むのはもったいないし、そうは言っても先が気になってしょうがないし……どうすれば!!

セーラー服とペンシルスカートとジャージを行ったり来たり

主人公の“小野寺マチ”は27歳。母校で高校教師をしています。



大人になってからの自己評価が曖昧な人でも、高校生の頃に自分が「ど真ん中にいたかどうか」の判断は大抵正しくて、マチの場合は「ちょっと端っこ」の人でした。


「入れねー!」と苦笑いする側だったマチ。でも端っこには端っこのハイライトがあって、主な登場人物は自分のみ……みたいなドラマだとしても、それは確実にまぶしくて愛おしい。そして、「恋に落ちた瞬間」を本作では「スコーン」という音で表現しています。



これは忘れない。本人の心の中では何年経っても「とっておき」だ。

そんな「スコーン」から十数年。合コンで良さげなエリートサラリーマンと知り合って、ギラついたネクタイをチラ見して、ふと彼の金銭感覚が心配になっちゃう……といった、アラサーとしてのわかりやすい日々を送っています。



デートのお店のランク気になるよね。やだなあ。ああ、「スコーン」とは程遠い手札の読み合い。そんなマチの目の前に現れるのが、転入生の“千葉くん”です。



背がすらっと高くてかっこいい。というか、初恋の“千葉くん”にそっくり! ここでマチの心はセーラー服姿に戻っちゃいます。だって、「スコーン」の相手に激似……っていうか、"千葉くん"の弟なんです。ヤバい。そんなことって!

で、ここからが本番です。初恋の相手に激似な生徒を前に、高校教師であるマチは、どうなるのでしょうか。



綺麗になります。


このライトな感じ。めちゃいい。


高校時代ど真ん中じゃなかった子でも、アラサーになって本気を出すとガツンと綺麗になるから爽快だ。でも、こんなにウキウキしても、マチは「付き合いたい」と思っているわけじゃないんですよね。


「初恋の千葉くんと、目の前の高校生の千葉くんは別」と頭ではわかっています。


だからこの気だるい日常も続行。「高校生と付き合う可能性なんてゼロ!」と言わんばかりに酒をあおり、


男性が皆ジャガイモになる。さあ、頭で「こっちが私の彼氏候補!」と念じたお芋たちと、本当に付き合いたい?


他の男性との(しかものちにジャガイモ化する人物との)一夜で、目をとじながら考えたのは誰? 初恋の千葉くん? それとも目の前にいる教え子の千葉くん?



千葉くんは何かとちょっかいを出してきます。高校生の頃に憧れていたような「千葉くんとの学校生活」を、まさか先生の立場になってから味わうほろ苦さ……。



そうこうしているうちに、なんだか大人になった千葉くん(兄)まで出てくるし! なに夜景の綺麗なお店でごはん食べてるの!? 私の頭までダブル千葉くんで忙しいんだけど!?

……ジャージ姿で校内を駆け回るマチ、デートでペンシルスカートをはくマチ、そしてセーラー服姿に戻ってしまい「スコーン」の再来に呆然とするマチ。



どの姿のマチにも「わかるよ……」となる。アラサーの諸事情にブンブンうなづきつつ、初恋と、大人になってからの恋とが入り混じって、心が忙しい。結局、私は一気読みしてしまいました。今とてもパンケーキとコーヒーと度数高めのお酒が恋しい。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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