最近、様々なシーンで話題に上がるeSports(エレクトロニック・スポーツ)。家電量販店では、いつの間にかeSports専用フロアもできていて驚きました。
この時代の波に乗り遅れてはいけない、そんな姑息な気持ちで読み始めた『バトル・アリーナ』。正直に言いますが、私自身はゲームを一切やりません。
そんな私でも果たしてついていけるのか心配したのですが、全く問題ありませんでした。というよりむしろ十分、いやいや十二分に楽しめます。
まず、登場人物達のキャラが立っていて面白い!
主人公の鳴沢直(なるさわなお)は、実家のナルサワ食堂を手伝う心優しい高校1年生。
帰宅部で毎日暇だろうからと、いきなりオンラインゲームに付き合わされるのですが、直はパソコンすらろくに触ったことのないど素人。
同級生からは、こんなふうに言われています。
わかる! 私も「現実の世界を大事にしてる」と共感した直後に「浅~い台詞を堂々と吐いたなデジタル音痴め」とバッサリ切られ、思わず苦笑いです。
さらにこの同級生からは、「現代に迷い込んだ哀しき原始人」「スマホも電話機能しか使わない珍獣」と言われる始末。
ダブルクリックすら上手にできない主人公の登場で、いきなりハードルが下がりました。これなら私の方がはるかに上だなと。
こんな低次元で競っても仕方ないのですが(笑)、直が主人公のおかげで、ゲームに詳しくない私でも理解できる丁寧な解説が所々出てくるので助かりました。
そんな直が通う桐ヶ谷高校に、eSports部を作ろうと奔走する都塚みなみ。
彼女は学校一の美人なのに、ゲームのことになると猪突猛進、人格が変わります。
とんでもなく激しい表情を見せたかと思うと、脳内言語が英語に切り替わった途端、冷静(クール)で論理的(ロジカル)。
美人なのに勝ち気で、しかもクールというコロコロ変わる表情が、女の私から見てもたまりません。
そして、直やみなみ達と対戦することになる同じ桐ヶ谷高校1年の富美井薫(トミー)が、嫌味で卑屈でひとりよがりの歪んだ熱血野郎なのにマヌケで、どこか憎めないのです。
直のほんわかした可愛い絵と対照的で、もうこれだけで笑えます。
話は、4対4のチームで対戦する架空のMOBA(マルチプレーヤー・オンライン・バトル・アリーナ)ゲーム「バズログ」の大会に、直、みなみ達のチームとトミーチームが対戦することになります。
ゲーム内の戦闘シーンでは、登場人物たちがゲームのキャラクターに扮して暴れまわるの
で、劇中劇を見ている感覚です。
さらに「バズログ」の攻略法やゲーム関連の解説もしっかり教えてくれるので、ど素人の私でも置いてきぼりは一切、ありません。
この漫画、本当によくできてるなぁ、と思いながら読み終えると、最後にごそっとスタッフの名前があり納得しました。これだけの人たちが関わって作っているのですから、そりゃ面白いわ!
いきなり大会デビューを果たした直は、初心者であるにも関わらず、ゲーマーとしての潜在能力を発揮します。
それは、まだ写真でしか出てこない直の兄が関わっているようなのですが、その謎はこれから解き明かされることでしょう。
実は私の友人が、かなり有力なプロゲーミングチームの代表をやっていて、私も10年前からeSportsのことは知っていたのですが、どハマりする性格なのでゲームには手を出さないようにしていました。でも、今度、eSports会場にも行ってみようかな。そんなことを思わせてくれる漫画でした。
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp