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2019.05.07

レビュー

男装女子×溺愛吸血鬼のキケンな同居。「チューしてやろうか?」

過激? 過激じゃない?

「ムスメが読んでる少女まんがをね、こないだちょっと見たんですよ。女の子向けって、結構~過激なんスね」……打ち合わせで会った40代の男性(小学校高学年のお嬢さんの父親)が、照れたような困り顔でそうおっしゃった。「わかるなあ」と「そうかなあ」のあいだで30代女の私は揺れて、こりゃ自分の中で決着つかないなと思い、「にこっ」と笑って次の話題に移った。

この「揺れ」があるから、大人になって読む「なかよし」は良い。読み始めると10歳だったころの私が必ず隣に座ってくれるので、それも楽しい。『ヴァンパイア男子寮』(男子寮はドミトリーと読みます)も、「どう? どう?」と10歳の自分と一緒に読んで、トキメキを堪能した。過激? 過激だと思う。過激で、かわいくて、「ここがいいんだよ!」みたいなのがいっぱいある少女まんが。

「血がまずい」

『ヴァンパイア男子寮』の主人公"美人(みと)"は天涯孤独の15歳。



美少年ですね。幼い頃に両親を亡くし、親戚からも疎まれ今はひとりぼっちで生きています。ある日、雇ってもらうためにカフェに突撃してみると……、



ギャルソン姿の男前! 課金したくなる。シャンデリアやティーポットのフォルムも乙女全開でまぶしい。「なんだ この高そうな店!」という美人の感想に10歳の自分がうなずく。

高そうなお店に動揺した美人は店内でちょっとしたケガをしてしまい、指に血が滲んで……!



男性の舌が、美少年の指に! ダメだ! 読んでて照れる! おわかりかと思いますが、この「ペロッ」としてるのがヴァンパイアの"ルカ"様です。



このリアクションは全く想像していなかった。前のページで火照った顔がスッと戻る。あと、「血のまずさ」を表現するルカ様の語彙から、小学校の教室が目に浮かんでなごむ。

「男だって愛されたぶんだけ甘くなります」

美人の血が「クソマズぅ」な理由は、シンプルで悲しいものです。



ここまでの設定だけでも十分飛ばしまくっている作品ですが、ここからさらに何度もギアを上げてくるんです。まずこちら。



「男だって愛されたぶんだけ甘くなります」は名言だと思う。



ルカ様の「おまえみたいな人間をずっとさがしていた」という言葉に動かされて美人はルカ様のエサになることを承諾。ということで、ルカ様による美人の「溺愛(=育て)」が始まります。



ルカ様は訳あって「女の血が吸えない」ヴァンパイアなので、男の美人はルカ様にとって好都合。(この理由で私の中のルカ様への好感度がさらに上がった)……と思ったら!



美人は男装女子なんです。そんな長い髪の毛をずっとカツラでごまかしてたのね……。それにしても小物がいつもかわいい。少女まんがを読んで楽しいのはこういうところ。

もりもりのパフェのように

話を戻します。ということで、このまんが、とっても忙しいんですよ。ドキッとする要素をパフェのように盛り込んでます。



ルカ様の「オレが毎日溺愛してやるから(エサは身近に置いておきたいし)」という理由で男子校に通いはじめて、男子寮での共同生活が始まっちゃうし、



吸血鬼を憎む男の子(バイク乗り)から壁にヒビが入るくらいのハード壁ドンされるし、



「私は女の子なんだよ」と言い出せないままモヤモヤしたり。きわめつけはこれ。



なにかと「"あなただから"必要なんだ」という表現を差し込んでくるんですよね。ゴージャスなパフェの奥に「少女まんが」あるんです。



「噛み跡」はルカ様が綺麗に消してくれるあたりでホッとする。

そして、「溺愛」や「エサ」なんかの過激な言葉の端々から、ちょっとずつ夢みたいな「運命の人」が見え隠れします。



10歳の私は憧れるし、30代の私はやさしい気持ちになる。たまにはこういう世界を少女の頃と同じように疑いなく憧れて信じるのもいいなあって思う。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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