シーク様そしてハーレム@なかよし
『シーク様とハーレムで。』は「かわいい!」で手にとった作品だ。
だって“シーク様”に“ハーレム”ですよ。しかし掲載誌は「なかよし」。あらすじを友達に説明すると「待ってそれホントになかよしで大丈夫?」と言われたけど、大丈夫だった。とはいえ、少女まんがの主人公が、シーク様とハーレムで、何するの?
立派な立派なお屋敷で……。
女の子の妄想
小学生のころ学校の帰り道のお楽しみは妄想で、水晶の御殿とかをガンガン建ててました。
この手の「妄想」では「ツッコミ」も大切。とくに登場人物に「王子様」や「自分」を据え置く場合は、妄想と現実との不整合をいかにやりくりするかもプレイの一環に含まれていました。
学校は? 親は? 友達は? こんな田舎でどうやって出会うの?(ランドマークは牛小屋)。キスとか無理じゃない? ましてやその先なんて絶対ナシ! でも! 王子様は私のところに来る! ……毎日こんなんですよ頭の中。
知識もお金も具体的な欲望も経験もないが考える時間はいっぱいある。だから自分の妄想をコツコツコツコツ煮詰めるんです。
『シーク様とハーレムで。』を読んで、私はかつての「不整合どうすんだプレイ」を完璧に思い出した。懐かしい。おとなの皆さんはそこも楽しんでほしい。めちゃ面白いよ。
わたしの考えた最強の王子様
グーグル画像検索が教えてくれる「シーク」や「シャイフ(アラビア語での読み方)」のお顔は濃い。ヒゲ完備。でも小中学生の頃のヒゲってシンプルに「おじさん」の象徴で、妄想のお庭では浮く。
妄想の王子様は、サラサラの髪の毛で、エキゾチックで、もちろんリッチ。「あのアラビアっぽい布」がとても似合うの。
……これらの要件を満たすと本作の“シーク様”はこのようなお姿になります。
アラビアンな衣装って本当に綺麗だ。超出会いたい。パーフェクトな王子様が完成したので次は「シーク様とJKの出会い」を詰めましょう。
必殺“おしのび来日”
主人公の“紗凪(さなぎ)”は普通の女子高校生。諸事情によりシビアな金銭感覚で生きています。
そんな紗凪ちゃんのバイト先(ホテル)に現れるのがお忍び来日中の彼。
これこれこれ! こういう出会い待ってた! この彼こそが世界一リッチな資源国アルマディア王国の第2王子“ルイ・ブライム・イル・アルマディア”様。この謎に長いお名前もロイヤルみがあって良い。
ルイ様の正体を知らない紗凪ちゃんは謝礼の札束につられて彼を助けるのですが、ある出来事により事態は急変。
大好きなお金すら放棄してルイ様にど説教をかまします。ルイ様のこの顔。よし。出会いから印象付けまで出揃いました。
いつだってJKは制服! でもウェディングドレスは着る!
ここからは駆け足です。ど説教の翌日にはプロポーズ。
マラソンの授業中に颯爽(さっそう)と現れた王子様が体操服姿の私にひざまずく。あー、言うことなしの山場。妄想のツボをぐいぐい押してくる。異国でもJK紗凪ちゃんは制服姿を貫いてて楽しいのですが、挙式では綺麗な綺麗なドレスを着ちゃう。
それにしても紗凪ちゃんは全然恋してない。この「仕方ないけど結婚するわ!」という設定もなかなか美味しい。
言語の壁もひとっ飛び
ルイ様は日本語がペラペラですが(だって王子様だし)、普通のJKな紗凪ちゃんはアルマディア王国の言葉がわかりません。でも異国感は味わいたいから現地の人は現地語を話してほしい。これらのワガママを解決するのがこちらです。
自動翻訳機能つきの可愛いペット。無事に異国での新婚ライフ最大の難関もクリアしました。(本作のおまけコーナーにアルマディア王国の観光情報があります。妄想が強まる)
父の頼りなさも必須事項
この夢いっぱいのお話を少しシリアスに考えると“結婚した理由”にぶつかるわけですが。ここで登場するのが“お父さん”です。……あの、運のない男もリスク管理がゆるい男も仕事ができない男も基本きらいなので彼の行動すべてに色々言いたくなるけど、ダメです。
「働け!」とか言っちゃダメ。このお父さんも妄想のために必須。なぜなら、こういうパパじゃなきゃ娘は「よっしゃ私が」と異国の王家の嫁になんてならないし、パパ(とママ)は絶対に許さない。(特にママは強烈な壁となるはずです。ここも優しく切なく無力化されています)
中学生の心で「親による阻止をいかに回避するか」を妄想すると、この両親の設定はとても納得がいく。
設定完了。新婚ライフを楽しみましょう
以上のようにコツコツと妄想を磨き上げたあとは「甘々な新婚生活」というメインディッシュに突入します。もう、のびのび手加減なし。
いつも一緒。「だめ」って言われながら薬指にリング。
たまにはシーク様も洋服姿♪
王家みなさんもみんな「わかってる」イケメン揃い。
そして極め付け、ハーレムだけど紗凪ちゃんしかいない! 夢!
……あー、毎ページのけぞりながら読んだ。満足。そして女の子の夢と妄想をコツコツ詰めていく感じがとっても懐かしくて楽しい。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。