最初から最後まで「足」!
このミステリ、本当に最初から最後まで「足」の話だった。
『ゲソコン探偵』の「ゲソコン」は「足跡」を意味する。本作は足跡を手掛かりに難事件を推理するミステリなのだが、そんな、足跡だけってマジか? と思ったら全話マジで足の話だった。まずメンバー構成がいい。
1人目、新米刑事の"東さん"。
メガネでポニーテールでリクスー姿、24歳にしてすでに腰と胃が痛い激務系女子。まじめ。ある日、東さんが偶然出会ったのが"美少年・西原秀"。本作のもう1人の主人公だ。
「美少年」という単語と本人の名前を一体化できそうな容姿だが、本人はそれを自分の人生で活かすこともなく、足が好きすぎて靴屋で働く足フェチボーイ。しかし秀くんはただの足フェチではなく常人離れした才能の持ち主だ。
東さんの体調不良を足跡だけで見抜いちゃう。そう、秀くんは足跡だけで「足跡をつけた人物」の特徴を言い当てることができるのだ。
超能力などではなく、ちゃんとした理由をもとに秀くんは「足跡をつけた人物」を推測する。さらに、秀くんの足フェチはそれだけに留まらない。
東さんと同じく私も全然足跡が見えないよ。でも足が好きすぎる秀くんには足跡が見えるらしい。ここまで極まると異能者みたいだ。
本作はこの2人がタッグを組んで事件を解決するミステリなのだが、同時に「足を好きすぎる人」のお話でもある。
足フェチは、とにかく足が好き
冒頭でも紹介したとおり、美少年・西原秀くんは足フェチ。そして、事件を推理し、解決してゆくのは刑事の東さんの仕事だ。この役割分担が楽しい。
東さんが取り組む事件で何かとちらつく「足の謎」。この「足の謎」を解くために、東さんは足が好きすぎる秀くんにヒントを求めるわけだが……、
秀くんは終始この調子。足だ! わんわん! みたいな。かわいい。
秀くんにとって、たぶん事件とか推理とかは正直どうでもよくて、ひたすら足に向き合い続けるのみ。
しかも秀くんが東さんと読者である我々にもたらす「足情報」はどれも為になる。もっと教えてほしい。そんな秀くんのディープなヒントにより、東さんの推理も冴えてくる。
あ、足マンガじゃなくて、ちゃんとミステリだ。そのとき、西原くんはというと……、
やっぱり足しか見てない。ミステリの定番である「犯人を諭すラストシーン」すら本作だとこういう表現になるのだ。なんてこった。
事件を解決したい(そして美少年の可愛さにクラっとくる)刑事さんと、足が好きすぎる美少年な靴屋さん。とことんニッチで楽しい、いい組み合わせのミステリだ。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。