私には「デザート」が必要
ピエール・エルメのお菓子のようなバラ色の表紙。ミルクがかったやわらかい色で、手触りもマットな質感で、すりガラスやマカロンを思い出す。
読む前から「おいしいよ」と言ってる気がする。(手触りがすごく良いので、紙で読むことをおすすめします)
ああ、やっぱり女の子向けコミック誌「デザート」の作品だ。「デザート」ほんといいんですよ、もはや美容を越えて健康にいい。
『一度は彼女になってみたい!』の良さをアレコレ考えたんですが、手元にずっと置いて時々読み返したくなるところだなと。ほら、自分の部屋に外見も中身もバラ色のものがあるって、すごく幸せな気持ちになりませんか。
「一度はXXしてみたい!」
主人公の“セリ”は19歳の大学生。もうすぐ20歳。まだ彼氏ナシ。
この、ちょっと惚(ぼ)けたような顔にはいろんな気持ちがつまっています。仲のいい女友達にどんどん彼氏ができて、取り残されてゆく自分。
そして、彼氏の作り方なんてわからないけれど、自分だって「彼女になってみたい!」という気持ち。
そんな「彼女になってみたい」「彼氏とあんなことしてみたい」を、彼氏ができる前から、お試しできるマンガなんです。しかも、このお試しの相手がめちゃすごい。
セリの幼馴染の年下男子“ちーちゃん”です。17歳。ちーちゃんは病気療養で数年前に引っ越してしまっていましたが、治療が終わり、セリと再会します。背も伸びて、学ラン姿で、パッと見可愛い男子だけど、ちーちゃんには「ある夢」が。
「入院中にできなかったことをやり直したい」と言って、セリちゃんにあれこれお願いをします。この「やり直し」が初回からヤバい。「修学旅行みたいな旅行に行きたい」ってことで、2人で温泉に行くんです。読んでるこちらは「それはカップルがやることでは」とつい考える。
でも、なんかいい感じにホッコリだね……ってなごんでたら!
周りの女子旅チームに「弟さん」と間違われたあとの、この対応! ほら! ここ100回くらい読んだ。ちーちゃんのグイグイはさらに続きます。
「今だけ彼女になって」と言って抱き寄せてしまうので、もはや修学旅行を大きくはみ出てた状態に。そして、セリはセリで「彼女ってこんな気持ちいいんだ」と感動します。
感動しつつ、客観的に「なるほど」なんて思ってる。かわいい。この段階では、お互いが「お試し」をそれなりに楽しんでいるように見えるのですが……!
ちーちゃんからのガチ告白! ここを読んだあとお風呂に入った。ふと温泉旅行での2人のやりとりを思い出した。たまらず「ブクブク……」と沈んでしまった。
でも付き合ってない(まだ)
ちーちゃんの突然の告白にセリだって動揺しまくりです。
疑問符が山盛り浮かぶけど、口には出せない感じ。わかる。
遊園地デートでの一コマ。相手はリアルに王子様の格好をしているし、甘々だし、なのにまだ彼女じゃない! もはや「お試し」ってなんなのかわからなくなるのですが、ニヤニヤが止まらない。
2人とも仲良し。昔からの信頼感や安心感は完璧で、ほんと楽しそう。
そして定期的にグイグイくる。溺愛にもまれ、照れて、困って、「年下」がなんなのかすら私にはわからなくなちゃったよ……。判断力がめちゃ下がる。
ね、おいしいところだらけでしょ? 「これって付き合ってる?」「好きって言った?」なドキドキと「一緒にいて楽しい」を楽しめる、あまくておいしいマンガなんです。やっぱりデザートって良い。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。