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2019.01.26

レビュー

女子高生と高校教師の禁断のラブストーリー!「私には、先生しかいなかった」

「好きになっちゃダメ」

「好きになっちゃダメ」と自分で自分に言い聞かせたり誰かに忠告されて素直に「わかりました」となった試しがあっただろうか。現実でも、少女漫画でも。




ないよな。こういう無茶は言わないでほしい。(あと、この保健室の先生は要注意だと思う)

『それはまるで雨傘のように』は女子高生と高校教師のラブストーリーだ。ごくごく普通の高校2年生の女の子の身に何が起こって、どうやって高校教師に恋をしてしまうのかを丁寧に描いている。




禁断ってこうやって静かに始まるのか。


一点集中型の交友関係と、なよなよ担任

主人公の“紗南(さな)”は高校2年生。大人びた容姿の綺麗な子だけど、恋愛経験はまだない。入学してすぐに仲良くなった“恵子”といつも一緒にいます。


たぶん紗南は幅広く色んな子と仲良くできるタイプの子ではなく、1人の友達を大事に大事にする女の子です。このことが後になって厄介ごとをさらに大きくする一因になってしまいます。

そして担任の“都築先生”はちょっと弱っちい雰囲気の国語教師。


「弥生」という名字、ちょっと下の名前みたいで良いな。この時点では都築先生は紗南にとって魅力以前の存在です。




「どうにかならないの?」ですよ。でも、女子あるあるで、ずっとターゲット外極まりない人だったのに急に意中のど真ん中に現れてしまうわけです。


あっという間に修羅場そして不登校

問題のない穏やかな高校生活を送っていたはずなのに、紗南は全く身に覚えのないことで親友の恵子から絶縁されてしまいます。




トントン拍子で修羅場になるのがすごい。恵子の余裕のなさと視野の狭さが半端ないが、この手の揉(も)め事ってあっという間に燃え上がるんですよ。この出来事がきっかけで紗南は学校に行けなくなります。


好きになっちゃうでしょこれは

ここから「なよなよ」なんて言われていた都築先生が始動します。




自宅への電話ののち……


メッセンジャーからのお手紙送信。




授業のこと、天気のこと、毎日のこと。ささくれ立った紗南の心にちょっとずつ届くような当たり障(さわ)りのない話題を選び、丁寧な言葉で語りかける都築先生の真面目さや人柄が少しずつ見えてきます。私だったらこの時点でだいぶ好き。

教室での辛い状況は変わらずで、紗南は携帯電話越しにさいなまれますが(これ本当にキツいだろうな)、都築先生はちゃんと駒を進めます。




電撃家庭訪問。


あーダメダメダメ! ダメ! こんなこと言わないでよー! 好きになっちゃうでしょー!


「知らない顔」が見えてくる

都築先生の言葉に救われた紗南は少しずつ外の世界に戻ります。もう紗南の口から「なよなよ」なんて感想は出てこないし、都築先生とちゃんと言葉をかわすんです。私の言葉を聞いてもらえるし、この人が私にくれる言葉は本当だ、と。




このシーンが大好きだ。年上の男が垣間見せる「私の知らない顔」!

紗南にとって都築先生は教室での辛(つら)い出来事から守ってくれた雨傘的存在ですが、もはや「好きになっちゃダメ」という別の雨がポツポツと降り始めているので読んでるこちらは切ない。先を読むのが怖い。

この名セリフ「好きになっちゃダメ」は、男性向けの作品では不思議とあまり見かけないし、現実でも聞かない。そのことを身近な男性に話したところ「男はそういうとき、そんな客観性ないもん」という答えをもらった。なるほど。でも、いくら客観性があっても好きになっちゃうし、好きになっちゃダメと思えば思うほど止まらない。

レビュアー

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花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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