「それは、未来を取り戻す物語」
2015年にサービスが開始された大人気スマートフォンアプリゲーム、『Fate/Grand Order』(以下FGO)。1300万ダウンロード(2018年6月現在)を誇る本作のメインコピーです。
前述の通り、2015年よりサービスが開始された本タイトル。現実の時間とリンクしながら物語が進み、2016年の年末に第1部の完結を迎えました。
その2015年から2016年末までの物語が公式にコミカライズされたのが、本レビューで取りあげる『Fate /Grand Order — turas réalta—(トゥルス レアルタ)』なのです。
きっと、本稿の記事タイトルにピンと来てクリックした皆さんのほとんどはマスターなんじゃないでしょうか?
もしかしたらすでに人理修復を終えているかも? それともあの章でつまずいていたり?
まあ、そういったマスターな皆さんには委細承知かと思いますが、将来のマスター候補のためにまず、この物語の前提条件を説明しておくとしましょう。
ざっくりとFGOを説明すると、少年と少女が世界を救うために時間を越えて旅をする冒険譚です。
・主人公は、「カルデア」という組織に属する魔術師(マスター)だが、ほとんど一般人
・主人公は、「英霊」と契約して「サーヴァント」として使役することができる
・「サーヴァント」は、人類の歴史に偉大な功績を上げた英雄(実在/非実在を問わない)
・「カルデア」では2017年に人類が絶滅するという予知がされた
・人類史のターニングポイントになった歴史上の出来事に異常を感知する
・主人公が過去に飛び(レイシフト)、サーヴァントとともに異常を修復する
とりあえず、この6つのポイントを抑えておけば、FGO未プレイでも、Fateシリーズにはじめて触れるかたでもスッと作品世界に入っていけるはずです。
さて、そんなマスターは英霊を召喚してサーヴァントとして使役するので、神話の登場人物から沢山の英雄や偉人が登場します。それこそ神話の世界から20世紀初頭と、今までの人類史にわたっています。
「ヘラクレス」や、「クー・フーリン」などのファンタジー作品でもおなじみのキャラクターをはじめ、歴史上の人物である「ジャンヌ・ダルク」や「マリー・アントワネット」だとか、
フィクションの世界では「巌窟王」や「玉藻の前」まで、洋の東西を問わずさまざまな人物やキャラクターが登場します。
史実に基づいたエピソードから現代風に再構成された偉人たちは皆人間臭く、親しみを持てる人物像に描かれているので、きっと推しのサーヴァントが見つかるでしょう。
と、FGOについての解説はここらで止めておくとして、本作『turas réalta』は主人公であるマスター、「藤丸立香」の視点で物語が紡(つむ)がれているコミカライズ作品です。
前置きが長くなってしまいました。原作ゲームも優れたノベルなのは間違いないのですが、その物語を解きほぐし、漫画に再構成してくれたことで「あのときはこういう状態だったのか」というように追体験して、物語の体験をより強いものにしてくれます。
たとえば、壊滅したカルデアでこの状態に立ち向かえるのは自分だけだと伝えられた立香。自分の家族もままならない中、世界の命運を背負わされる立香。レイシフト先の冬木市で死にそうになる立香──。
ゲームではあまり主人公の状況は見えないので、なんとなくテキストを流し読んでしまいがちでしたが、苦悩や絶望を乗り越えて闘う事を選んだ覚悟がコミカライズによってあらためて実感し、追体験できるのはメディアミックスの利点ですね。
Fateは好きだけどFGOは……っていうマスターには1巻のシーンに胸を打たれると思います。
私は打たれました。
本作『turas réalta』は現在2巻まで。1巻はゲームではプロローグ的な役割の「特異点F」が、2巻では第1特異点「オルレアン」が描かれています。
このFGOのコミカライズは、2つの出版社に跨がったプロジェクトで、別マガ連載中の本作『turas réalta』では、7つある特異点のうち、第1特異点、第3特異点、第5特異点、第7特異点、終局特異点が描かれる予定となっています。そのため、ここで描かれなかった2、4、6の特異点は、一迅社のコミックゼロサム版コミカライズにて描かれる予定です。
現在、ゲームの本編は第2部「Cosmos in the Lostbelt」が始まり、ますます作品世界に注目が集まる『Fate/Grand Order』。
人理修復をしたマスターも、そうでない方も、『turas réalta』の藤丸立香といっしょに人理修復に挑みましょう。
©TYPE-MOON/FGO PROJECT
©カワグチタケシ/講談社
レビュアー
静岡育ち、東京在住のプランナー1980年生まれ。電子書籍関連サービスのプロデュースや、オンラインメディアのプランニングとマネタイズで生計を立てる。マンガ好きが昂じ壁一面の本棚を作るものの、日々増え続けるコミックスによる収納限界の訪れは間近に迫っている。