生き物はいい。モフモフして可愛い。モフモフしてなくても可愛い。
でも飼うのは大変。餌やり、部屋の掃除、犬は散歩、病気になれば医療費は人間より高額、そもそも賃貸だから飼いたくても飼えない、などなど……。
賃貸でもオッケーなエキゾチックアニマル(小動物、爬虫類など)に安易に手を出しても、実は犬猫よりずっと大変だったりする。
私もアイコンの通りうさぎが好きで好きで死ぬほど好きで、過去2回飼っていたのだが、死んでしまうのが辛すぎて今は飼ってない。酷いペットロスに陥りましたよ……。
あとはストレスを溜めやすい生き物だから子どもが小さいうちは無理かなと。コードや紙を噛みちぎられるのも、つもり積もるとかなりの損害になるし。
生命と対峙するのは本当に大変なことなのだ。
でももし「ヒドラ」をもらったら……?
っていうかヒドラ? なにそれ。モスラでもゴジラでもない。(そっちの方が困るけど)
切り刻んでもすりつぶしても死なない不滅の生き物! そんな生物が本当にいるのかって? さあ、興味がわいてきたでしょう。
クラゲやサンゴと同じ刺胞動物で、刺胞=毒針でミジンコなどを麻痺させて食べる。絶えず体の細胞が新しいものに置き換えられ、老化では死なないんですって。なんて神秘的な!
主人公の鯉住のぞみは平凡な女子高生。独特な感性の妄想をしがちなところは、不思議ちゃんだけど。
のぞみはある日、生物の教師・対馬先生に呼び出された。
対馬先生は今まで接点もほとんどなく、普段全然笑わないし目つきはやばいし、何で呼ばれたの……って、え、エロ目的!?
と思いきや……、
「これをあげます」
と対馬先生が差し出したのはヒドラだった。
のぞみと珍生物たちとの生活のはじまりはじまり。
登場人物は4人とシンプル。鯉住のぞみ、対馬先生、対馬を警戒し「対馬コロス」が口癖の亜依ちゃん、なんだかんだのぞみと対馬のことが気になって世話を焼いてしまう熊谷先輩。
少人数だからこそ引き立つ生物たちの魅力と、のぞみの天然可愛さと、対馬先生の不気味さ。
1巻ではヒドラの他に、フジツボ、クマムシ、ナマコ、イソギンチャク、ヒトデを飼います。
どれも名前も姿も知っているけれど、詳しい生態やどんな生き物なのか説明しろと言われたら「え……」と固まってしまう、意外と知らないものばかり。
みんな不思議可愛い。
そして、のぞみのそれらの生き物たちに対する暴走的な妄想が、面白すぎ、可愛すぎて、対馬先生じゃないけど萌える。
この感性、ぜひとも友達になりたい!
ヒドラのバク転を見ては「永遠のアイドル!!」だと妄想し……、
クマムシのエサが1リットル6千円と聞けば、「とんだ悪女(フアム・フアタル)……」と妄想し……、
ウミグモは腸の蠕動(=グルーブと解釈)で酸素を全身に運ぶと聞けば「凄腕DJ……!?」と妄想し……、
妄想が止まらない不思議女子、それがのぞみ!
すごくかわいいです、って言うあなたが可愛い(笑)。
そしてそれを一番可愛いと思っているのが、他ならぬ対馬先生なのだ。
生き物のことになると我を失う対馬先生。
彼が見つけた一番飼育し甲斐のある生き物、それはのぞみなんだろうな、きっと……。
つまり、のぞみが生き物を飼う始まりは、対馬先生がのぞみを飼う始まりでもあったのだ……!!
やっぱりエロ目的!?
いや、たぶん違う。単なる面白い生徒? 純愛? それとも食ってみたい……? こわいこわいこわい……。
のぞみは生き物たちを、対馬はのぞみを愛(め)で、観察する。
徐々にのぞみに芽生える、対馬先生への恋心……。
変態的な愛と感性の連鎖。
対馬先生の本当の思惑とは……?
「飼育少女」=「飼育する少女」=「飼育される少女」。
このとんちのように絡まった人間関係はどうなっていくのか?
今後の展開が楽しみで仕方がない不思議な飼育の世界へいらっしゃいませ!
レビュアー
一級建築士でありながらイラストレーター・占い師・芸能・各種バイトなど、職歴がおかしい1978年千葉県生まれ。趣味は音楽・絵画・書道・舞台などの芸術全般。某高IQ団体会員。今一番面白いことは子育て。