講談社ラノベ文庫11月刊のラインナップを一挙ご紹介! 校了を担当する2人の秘密コメント付きを発売前にチェックしよう!!
イノヤス
講談社ラノベ文庫編集長(であるらしい)。月刊少年マガジンに約20年在籍後ラノベ文庫へ異動し現在に到る。頭の中身は自称永遠の17歳だが頭の外側は……!?という、ドラえもんのいないのび太、みたいな感じのおっさん。編集者としてのモットーは「相手の技は必ず受けろ!」、身につけたい能力は「速読」、異世界に行ったら「蕎麦屋」をやりたい。一度言ってみたい台詞は「どうしたんだ、顔が赤いぞ。熱でもあるのか!?」
大ちゃん
講談社ラノベ文庫編集部校了担当者。またの名を金剛寺大三郎。軍手とガムテと段ボールが似合うナイス・ガイ。講談社ラノベ文庫の新刊を責任持って校了してますが、やたらフセンをいっぱい貼って返してくるのでうっとおしいみたい。「笑ったとこにいちいち『(笑)』っていうフセン貼ってくんの、どうなんすか」(編集部員・談)
当レーベルの生き証人(?)、全国民待望の新作で燃料投下! 燃料って……。
一夜にしてゴブリン、オーク、魔人らが跋扈するファンタジー世界に変貌した日本。軍事国家・新宿市国の御神楽零少尉は、謎の少女・火倶夜によりある力を手にする。それは「誉めて伸ばす能力」。万物に対し有効なこの力で、零は姫鞠、千歳ら麾下の騎士や魔導師達(ほぼ女子)と共に、“元の日本を取り戻す”ための苛烈かつ孤独(ときどきダダ甘)な戦いを開始する。竹井10日が挑む本格にして独創的ファンタジー戦記登場!
9月下旬、講談社高層棟のちょうど真ん中、不吉な13階会議室でニュー・フェイスのシゲちん(仮名)が脱力しながら熱弁をふるっていた。
「もう世界がどうとか、そういう時代じゃないんですよ。これからはもっとピン・ポイントのローカル・ラノベというか、インドっすよ、インド・ラノベっすよ。カレー・ラノベでもいいくらい」にわかに巻き起こる激論。「カレーより中華だね。中国ラノベ!」「だから京都八つ橋ラノベがいいとあれほど」「ご当地えびせんラノベだな」「ハラへった」「くそ、眠ぃー」「わたし、来週休みますんで」。
会議は踊る。どこからか、不気味な笑い声が……。「くくくく……」(以下81回続く。くく81ってね)オリジナルを知らないのにすんげえ似てる声帯模写の江戸屋熊猫(仮名)であった。「こんなこともあろうかと、竹井さんの新作は、新宿と池袋が激突する山手線徒歩圏内ラノベという方向でっ!!!」静まりかえる会議室。どうなる、どうする竹井10日新シリーズ!? 以下次号!
長ぇ。嬉しくてやたら文字数をつかってしまいました(上のエピソードは半分実話)が、この新シリーズ序章の1ページ目、(ドラゴンの棲む魔の森へと姿を変えた群馬県、魔人の本拠地として陣取られたサンシャイン60)もうすでにここだけで大爆笑。どうなってるんだ群馬県。ところがですよ、読み進めると、意外にシリアスな都市国家ファンタジーみたくなっていって、「ここ、これはっ!?」と思うんですが、大丈夫。すみっこに「気づく人、いるかなあ」「気づかれなくてもいいかな」なんていう小ネタが散りばめてあるんやよ。ちなうんですちなうんです。『タイガーマスク』『ヨコハマ買い出し紀行』『奥さまは魔女』。ぽきゅっ? ぽむぽむ! あっ、高田馬場のロシアン・メイド喫茶の出現を予言したようなキャラ設定もあって、さすがといえよう。
歪んだヒーローは苦悩する。戦乱にあっては、まっすぐな心根だったはずなのに。
かつてグラン・エスト大陸では、人間と魔族との激しい戦いが続いていた。しかし四英雄と呼ばれる英雄たちの活躍により、100年以上の長きにわたる戦乱に終止符が打たれ、世界に平和が訪れた。世界が復興の兆しを見せていた頃、少年・クロウは職を転々としながら生活していた。その職数、なんと50。しかしある日、英雄マニアの少女・リゼリアと旧友・フィオナとの出会いをきっかけに、王家直属の英雄取締部隊で働くことになるが──。
ちょっとこれは記憶に残されるべき作品かもしれない。なんたって英雄を取り締まる軍隊が舞台なの。なんディスかそれは。「英雄」がいわば資格であり、称号であり、身分証明でもある世界。100年の戦乱に終止符を打った空前の英雄は、実際に会ったらアホだった。おまけに“民に寄り添う王女”はやたらめったらプロポーズしてくるアホの子だった。でも2人ともバカではないの。こういった強烈なキャラの中にあって、心ゆさぶる友好魔族のシンディちゃん。初めてのお給金をもらって、アホのご主人のために「お菓子(を作ってあげるため)の材料を買いに行きます」。健気にもほどがある彼女が、理不尽な暴力にさらされる。戦乱時にこそ輝けた、かつての英雄の苦悩は世界に何をもたらすのか。暴力を封じるための暴力に行き場がない。
──「ああ。止めなきゃいけないんだ──友達だから」
さあ、英雄になろう。
傷ついた英雄を救う英雄になろう。──
泣いた。この作品のこのフレーズを読むために、いまこの席に座っているのか、とすら思った。
一気に読むのだ! そして街の電話ボックス(読めばわかるよ)に走るのだ!!
普通の高校生・笹倉純は、ある春の嵐の日、フードを被った謎の少年に銃撃される。なんとか逃れた純が家に帰ると、そこには純のボディガード兼お目付け役と称する見知らぬ少女の姿があった。青海幽子と名乗ったその少女によれば、笹倉家は暗殺者の家系であり、純はその後継者らしい。そして翌日、昨日の少年が彼の前に再び現れる。さらに、フードを取ったその少年は、純とまったく同じ顔をしていて……!?
この女は誰なんだ!? 俺はもう1人いるのか? 消したい過去を消滅させるために死ぬ覚悟はあるのか!! ──こにゃにゃちわ、消したい過去が服を着て歩いている男、大ちゃんです。校了者の特権は、作者と担当者が作り上げた完成稿を最初に読めるっつうことですが、漫然と読むんじゃなくて、重箱の隅をつつきながら読むので、必ずしも作品世界に没入するわけにもいかんのです。でもね、本作の強いリーダビリティ、激しく喚起される解決欲求には、完全没入の一気読みを余儀なくされました。「えっ!? どゆこと、どゆこと?」「そーゆーことなのかぁ?」とまあ、アレよ。教えませんよ。『一ナノ秒のリリス』で鮮烈デビューの俊英、瀬尾順の第2ステージ! よーいドンッで読み始めて朝まで行くもよし、二度読みで「あ゛──っ」と叫ぶもよし。
炎の狼、氷の獅子、カメレオンやら孔雀やら、勝者の安寧の地はいずこ!
ハルトを昼寝から目覚めさせたのは、炎のように怒る貴族の少女による平手打ちだった。その少女の名はエレオノラ・サラマンドラ・イグニシオン。王国を護る「御三家」の一員にして、焔狼を使役する幻獣使役士となるはずだったが、契約に失敗し逃げられてしまったらしい。行方不明となっていたその焔狼が、なんとハルトと一緒にのんきに昼寝をしている姿に怒りが爆発したようだ。そしてエレオノラはとんでもないことを言い出して──。
合気道の達人・塩田剛三は、「得意技は何か」と問われて「自分を殺しにきた人間と仲良くなることだ」と答えた。格オタには有名なエピソードである。そういった前提を踏まえまして、いま改めて問う! あなたは猫派ですか犬派ですか? なんだそれ!? ちなみに講談社ラノベ文庫第2代編集長は自分のサインを書くかわりにときどきジバニャンの絵を描いたりします。よくオリジナルのわからないモノマネをしたりもするので、江戸屋熊猫と呼ばれていることを本人は知らぬであろう。なぜにこんな話をしているかというと、ずばり、ネタばれして~~っ。オチをしゃべりて──。何を書いてもネタが漏れ漏れになるので、あれなのですが、本作は幻獣バトル・ノベルもっといえば、幻獣&幻獣使いのタッグ・バトルね。犬と猫はどっちがつおいか。闘うことは強さの証明になるのか。獣と心を通わせる力は強さの尺度で測れるのか。泰然自若とした主人公、バルトくんの生き様が清涼感を持って読み手の胸を打つ。──なに? ネタばれしてんじゃねえか? 話が見えてきたぞ? ブーッ、てって的にブブーッ。そこには着地い・た・し・ま・せ・ん。必読。