5月17日(火)に、『Bの食卓』第1巻がついに発売。この新刊の装丁ができるまでを、担当編集者がご紹介します。作者・天道グミ氏とデザイナー・荘司哲郎氏(SALIDAS)による妥協なき共同作業とは。
デザイナーへの依頼
出来ました! と書いている時点ではまだ完全に刷り上がってはいないんですが、天道グミ氏の最新作・『Bの食卓』第1巻、素晴らしい装丁で現在書店さんに並んでいるはずです。
手前味噌でお恥ずかしいですが、今回の単行本は、作者・天道グミ氏と、デザイナー・荘司哲郎氏(SALIDAS)の綿密かつ妥協なき共同作業によって、とてもカッコいいものに仕上がりました!
今回は、この『Bの食卓』1巻の装丁が出来上がるまでを、傍で見ていただけの私、担当編集者がお伝えいたします。
まず、作品ロゴ制作などで既にお世話になっている敏腕デザイナー・荘司哲郎氏に「単行本1巻が5月に出ますんでお願いします」とザックリ依頼。 「主従の漫画なのでそれっぽく。古びた感じがあるといいっすね。あ、古書みたいなイメージかも」くらいの、無能極まりない丸投げ依頼です。
しかも今回は、デザインをある程度決めてから天道氏に絵を描いてもらう、ということになっており、この時点ではカバーイラストがありません。雑誌の予告やカラーページで使ったイラストをもとに、とりあえずのデザインをしてもらうという、デザイナー泣かせのお願いです。
あがってきたデザイン案をご紹介!
しかし!
さすが敏腕デザイナー。
こんな適当な依頼で、素晴らしいデザイン案をいくつも考えてくれました。
簡単に解説いたしますと……
A案:敢えて色数を絞ってレトロ感を出したもの。
B案:金色部分を箔押しにして、豪華さを出しつつ、齧(かじ)りあとの遊びをつけたもの。
C案:1色刷り部分と多色刷り部分をダイナミックに分けて、2人の関係の濃密さを強調した案。
D案:2人の関係性を強調するため、あえて逆さにイラストを使ったもの。
E案:ロートレックのポスターのような、レトロさを押し出した案。
F案:本編に出てきた「食材」の絵をバックに使い、世界観を示したもの。
G案:「何でもアリ」の地獄の世界観を伝えるため、博物誌風に仕上げる案。
いずれも捨てがたいこれらの案を前に、天道氏、荘司氏と打合せします。パッと見で天道氏が気に入ったのがBとE。横で見ているだけだったはずの担当が口出しして「いい」と言ったのがG。みたいな感じで、当日結論は出ませんが、とりあえずこれを受けて天道氏がカバーイラストを描いてくださいます。
デザインが完成するまで
あがってきたイラストを荘司氏に送り、再びデザインしていただきます。
B’案
E’案
G’案
浮遊感のあるイラストの意図をしっかり理解していただき、以前のB、E、G案をもとにした3案があがってきました。
何かを選ぶということは、何かを捨てるということ……。悩みに悩んで、E’案の方向で行くことに決定しました!
その後も……、
ロゴのフチをとったり、
バックの色を調整したり、
微妙なデザイン調整を繰り返しつつ、天道氏に追加でイラストを描きおろしていただくなどし、どんどんアップグレードを重ねてゆきます。裏表紙や背表紙などにもこだわり抜いた末に、ついにデザインが完成しました!
さらに今回は、印刷所の方にお願いして、このデザインが生きる「特別な仕様」で刷っていただいております。是非書店さんで、実際に手に取ってお確かめください! きっと、本棚にずっと置いておきたくなる1冊に仕上がっていると自負しております。
ちなみに担当の私が気に入った最初のG案は、単行本のどこかで使われていますので、探してみてください!