今日のおすすめ

PICK UP

2016.04.13

インタビュー

産婦人科の衝撃! 妙なペンネーム!──沖田×華、大ヒットの本音

見習い看護師として働いていた自身の体験をベースに、知られざる産婦人科の真実を描いて大反響を呼んでいる『透明なゆりかご』。鋭く、豊かな感受性で描かれている本作から、沖田×華さん自身に興味を持つ人も多いのではないだろうか。なので、沖田さんに自身について語ってもらった。沖田さんて、どんな人?

子ども時代の沖田さんについて

『透明なゆりかご』

実家が中華料理屋だったので、小学生から毎週日曜日は店の手伝いと玄関のタイル掃除係でした。成績が悪いくせに口が達者だったため、学習塾は「やる気がない」と4回クビ。家庭教師も何人かいましたが、教えてくれていた女子大学生を泣かせてしまい、その母親とスーパーであった時に挨拶したら「オニギリみたいな顔して!」とビンタを食らったことも(笑)。
そのくせ字が書けないのに文通にハマり、同級生に1回50円で代筆させていました。
人間の話し相手がいなかったので、なにか相談ごとのあるときはコックリさんかキューピットさんで解決していましたが、ひとりでやるのは怖かったので気の弱い同級生の家で強引に遊んでいました。自分を嫌な目に遭わせた相手を合法的にやっつけるため、黒魔術と白魔術を勉強するのが日課でしたね〜。
くわしくは『ガキのためいき』を読んでね★

好きだった漫画はありますか?

『透明なゆりかご』

実家の中華料理店に置いてあった雑誌を読んでいたので、物心がついた時から劇画、男性誌、女性週刊誌の連載漫画を読んでいました。エロ系の漫画は子どもの手が届かないように本棚の一番上に置いてあったのですが、親の目を盗んでは全部読み漁りました。
好きだったのは本宮ひろしさん全般と『ダミーオスカー』『ブラックエンジェルズ』『マーダーライセンス牙』『うしろの百太郎』『魁!男塾』『青春の尻尾』『奇子』『漂流教室』『羅刹の家』『ルパン三世』などなど。
逆に少女漫画を見るのが非常に遅く、勝手にパーツやセリフを書き加えたりしていました。
母の好きな某有名女性漫画家の単行本の欄外に勝手に外伝を加えたら、タウンページで叩かれてしまいました(笑)。
あと、友人の単行本に「名前の由来。それは……」というオマケ漫画を書き加えたら、実は友人の兄の私物でむちゃくちゃ怒られたこともありました。

変わったペンネームですが、由来を教えてください

『透明なゆりかご』

最初は「エレファン異治郎」というペンネームを使っていました。自分でつけておいてなんですが、余りにもダサくて悩んでいた時、ひょんなことから大ファンだったライターのゲッツ板谷さんの親友キャームさんとイベントで会う機会があり、ペンネームのことを話すと「だったら、こーちゃん(ゲッツ板谷さん)に付けてもらうよう話しとくわ」と言ってもらったんです。私は喜んでいたのですが、しかし実際はゲッツさんはそのことを知らされておらず、毎日のように「エレファンの名前出来た?」とキャームさんからの電話攻撃をくらってノイローゼ状態になっていたそうです。それから1週間ほどして、早朝に催促の電話がかかってきた際、ブチ切れたゲッツさんが「うるせーなぁ! 俺、今起きたばっかなんだよぉぉぉぉっ!!」と叫んだ所、「……それ良いじゃん」とキャームさんが気に入ってしまったために沖田×華になったのです。ちなみに何故「×」なのかと言うと、「作家が自分の名前に×があるなんてあり得ないないし目立つから」という理由です。

女子校の看護科時代の授業でも、やっぱりやらかしていたのでしょうか。

『透明なゆりかご』

看護・医療実習は基本的に、教師の監視下で同級生同士で行っていましたが、色々ありまして……。
皮下注射実習は二の腕にこんにゃくを巻き付けて練習するのですが、こんにゃくが使い回しなので毎回異臭騒ぎになっていました(※消毒済)。
採血の練習も壮絶でした。血管の細い同級生はなかなかうまく行かなくて泣き出してしまったり、血に弱い同級生は貧血で倒れたり、授業はカオス状態。
剃毛実習も大変でしたよ。最初は風船に泡をつけて練習、割れずに出来たら同級生のへそ毛を剃り合うなんてことも……。こんなことあまり経験しませんよね(笑)。
あと思い出深いのは戴帽式です。はじめての病院実習前に教室で白衣に着替え、ひとりずつ先生の前にひざまづいて、ナースキャップを与えてもらうという聖なる行事です。最後にろうそくを持ってナイチンゲール誓子を暗唱するのですが、ろうそくの火で前髪を半分焦がしてしまい異臭騒ぎに発展、担任に怒られてしまいました。

看護師時代の思い出を教えてください。

『透明なゆりかご』

准看護師免許取得後は、小児内科3年を経てディサービス、老健のパートを1年間。正看護師免許取得後は、美容整外科1年と、精神科閉鎖病棟夜勤をパートで半年間勤めていました。
これらは全て個人病院での勤務。小児内科は勤務1年の間に手足口病、りんご病、とびひ、おたふく等、あらゆる小児疾病に羅漢し、そのせいか今でも異常に菌やウイルスに強い体になりましたが、インフルエンザは未経験です。
私が勤務していたディサービスではご高齢でもまだまだ現役な方がいらっしゃいました。闇雲にナンパする方がいたり、利用者の男性を巡って女性同士が喧嘩をしたり。いちばんすさまじかったのは失楽園ごっこをするといって職員の許可のない温泉旅行が発覚。未然に防げたのですが、当人たちが逆切れし、入浴介助中にわざと大浴場に突き落とされたことがありました(笑)。
美容整形に就職した時の悩みは周りの女子力がたいへん高かいので、嫌でも美意識が上がってしまったことでしょうか。そのせいで今でも年に数回プチ整形やレーザー治療に勤しんでいます。

漫画業の師匠からいただいた言葉があるとお聞きしたのですが。

『透明なゆりかご』

師匠から贈られた「漫画家の10か条の心得」です。
[1]編集と喧嘩をしてはいけない。
[2]編集及び同業者と「良い仲」になってはいけない。
[3]編集の言っていることは7割正しい。
[4]売れる売れない関わらず、絶対に天狗になったりイバってはいけない。
[5]原稿を落とす時は漫画家を辞める時。
[6]どんなに忙しくても絵の手抜きをしてはいけない。
[7]上記のことを言われたら反論せずに素直に受け入れ、反省するべし。
[8]苦しい時こそ粘れ。必ず何かネタが出てくるはず。
[9]絶対にSNSで同業者の悪口を言ってはいけない。
[10]話が決まらないネームは確実につまらないので頭を切り替えるべし。

沖田さんには強運伝説があるとお聞きしましたが。

『透明なゆりかご』

なぜかこれまでの人生で5回も交通事故に遭ったのですが、すべて無傷で済んでいます。子どもの時にカップルが乗るスポーツカーにひき逃げされたときは、自転車が壊れただけでしたし、10代の時はバイクではねられるも服に穴が開いただけで、体には傷ひとつなく。この他に3回あわや、と思うことがあったのですが全て無傷でした。
泥酔中の危ない出来事も無事で済んでいます。たとえば飲み過ぎて新宿の溝に落ちても無傷で、しかも何も盗られていませんでした。新宿なのにですよ! これが年に1回あるので強運というか不注意なのですが……。
あとは、真夜中に泥棒に入りかけられたことがあります。ダンベル持って叫んだら相手が逃げたので難を逃れました!

『透明なゆりかご』について

『透明なゆりかご』
『透明なゆりかご』・P28

母に「初めて人に勧められる漫画描いたねぇ」とビックリされました。いつもはお笑い系のエッセイばかり描いているので、うっかりそのノリで『透明なゆりかご』を人に勧めてしまったら、泣かれてしまったことがあります。最近は新宿2丁目でサラリーマンに「今まで彼女いたことないのに泣ける! 何じゃこれはぁぁっ!!」と号泣されて困ったので、特にお酒の席では勧めないようにしています。

沖田×華さん、ありがとうございました。

おすすめの記事

2016.05.13

インタビュー

【ガチ証言集】少女漫画家Sさんって、本当にクズなの?

2016.03.11

インタビュー

【実話対談】車椅子の恋『パーフェクトワールド』のリアルな日常

2016.01.20

インタビュー

夫婦の「最期の喜び」は何か? 闘病1094日を看取った妻に聞く

最新情報を受け取る